ｂｌｕｅ

長回しによる、ゆったりとした時間の表現がとてもいい感じ。
ただちょっとこの監督さん、技巧が鼻に付くかな。
本来ならせりふのない部分では、登場人物のことや映っている情景のことなんぞをあれこれ考えるものだと思うんだけど、この映画の場合撮影の技術的なことばかり考えてしまいます。私だけでしょうか？
おかげで常にスクリーン（ていうかテレビだけどさ）を意識してしまって、登場人物を遠くに見ている感じがする。
ちょっとさびしい。

まぁ、それはともかく、私が一番すごいと思ったのは、主人公ふたりの人物造形の深さですね。
桐島にしろ遠藤にしろ、おそらく周りのひとからは自分というものをしっかり持っている人間だと思われていると思うんだけど、実際はとっても不安定なハートを抱えている。ふたりが惹かれあうのも、お互いの心の揺れ方に共感しあえるからなんじゃないかな。
でもふたりは違う人間なんだよね。
桐島はあくまで普通の高校生。とってもまとも。
でも遠藤はもう高校生という枠からはかなりはみだしてしまっている。
その辺のすれ違いの描き方が絶妙だと思う。

原作とはだいぶ違うらしいけど、コミックのほうも読んでみようかな。

星は……単純に映画としての出来の良さという点では３つでいいような気もするけど、見てよかったと思うので４つにします。

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新潟の海辺の街を舞台に2人の女子高生を描いた本作は、桐島カヤ子を市川実日子が、遠藤雅美を小西真奈美が演じたわけですが、なんと両者とも公開時23歳・・・んー全く違和感なく観ていた自分にちょっとびっくり。

独特のテンポについていけない方もいらっしゃるかもしれませんが、個人的にはこういうまったりしたものは好きでした。
しかし男性には分かりづらい女の子の感情がクローズアップされているので、“レズの話か?”と安直に解釈されてしまうと厳しいものがありますが。
なんでもない(事もないんですが)日々を淡々と綴った田舎町のストーリーは、ジブリの『海がきこえる』を思い出させましたが、こちらの方がリアルで切ないです。

お姉さんで優等生イメージが強かった小西真奈美の、その気だるい表情がなんとも印象的で、意外な発見が出来ました。
世間的には市川実日子の評価がやや高いように感じましたが、煙草をふかせる小西譲も一見の価値ありです。

市川実日子、すげぇ。思い切り、T'Pol だ。
わかっていたのだけれど、この人は本当にすばらしい。カヤ子の心持ち、葛藤、言葉にならない何かを、これほどにフィルムに残せる人は、きっと他にはいない、いるはずがないっ。バルカンの少女役で ENTERPRISE にも出てくれ。
小西真奈美、すげぇ。小西節、炸裂！
これまた、これほど、遠藤雅美になれる女優はこの人しかいないんじゃないか、演じた人それぞれの雅美なんていらない、小西の雅美しかありえない。
画がすげぇ。撮影の鈴木カメラマンがすげぇ。映画の風景、とはまさにこういうことか！基本は、常に四角い画、H軸とV軸を常に意識させる画で、その中に二人がしっくりはまり込んでいて、画が変わるたびに「おぉー」と声を上げてしまいそうになる。
音楽がすげぇ。ただでさえ、切ない笛のメロディがシーン、シーンにかぶさると観る者の心の芯を「オラ、オラ、オラァ〜」と揺さぶってくれる。
これは、原作のコミックも読まねばなるまい。『櫻の園』とか好きな人なら、きっとこの作品も大好物のはず。
ところで、原作者の魚喃キリコがすごくチャーミングで、これまた存外。

魚喃キリコの同名コミックを原作に思春期の少女たちのせつない想いを描く青春映画。

市川実日子は本作でモスクワ国際映画祭最優秀女優賞を受賞しているが、これには共演の小西真奈美の功績も大きく、両者の等身大のリアルな演技と二人をクールに映し出す画がタイトル“blue”にふさわしい。

思春期独特の空気感をお楽しみください。

　なかなか人間むつかしいですよね