エンジェル　ウォーズ

　なんと陰鬱な映画だ。確かにアクション・シークエンスは凄い。ザック・シュナイダーは
個人的にやってみたかった要素を存分にぶち込んで、趣味的映像を実現させている。
（四度に渡る、アニメ的な「エンジェル・ウォーズ」という形で）
　だが現実の物語の方は、あまりに救いが無い。無実の罪で、娼館でもある精神病院に放り
込まれた少女エミリー。その不条理と、そこで待ち受ける忌まわしい運命。

　入れ子構造になった一番内側の精神世界のみで、彼女は躍動出来る。それは一つ外側の
世界ともリンクし、影響し合うことで創りだされている。さらに一番外側（すなわち現実世界）で
起こった事件が、歪んだ形で内側に伝わっているのも分かる。それは精神病院を仕切っている
ブルーの存在や、彼女の事情を意識しているベラの動揺に表れている。

　ベイビードールが最奥の世界で殺戮しまくる相手は、「自分の自由を奪っている全ての者」
なによりその大元「憎き継父」なのだろう。しかしその瞬間の彼女は実際には拘束され、自由
の効かない状態にある。あまりに哀れな設定。

　音楽が鳴り響くことで、最奥の世界が発動する。音楽が「きっかけ」であり、必要条件だ。
（『ダンサー・イン・ザ・ダーク』を連想する）　それは唯一、全てのくびきから離れて、自由に
行動出来る世界。だが、そこで超人的な活躍を見せれば見せるほど「その外側の世界での
絶望」が引き立って見える。それが観客の意識にも作用して、彼女が目覚める度に、不快な
現実に暗澹とさせられる。『パンズ・ラビリンス』のレビューでも語ったが、空想の世界と現実
がリンクし、ある意味「等価」になることで、逃げ場が失われている。それは、子供にとって、
最も辛いことの一つだと思うのだが。

　私達が観る夢にも、思いがけない人物が登場して驚くことがある。脈絡は無くとも、何かの
形で関わったからこそ登場出来るのだ。例えば「ワイズマン」はベイビーと、現実にどこかで
関わっていたはず。この物語では描かれないが、常に寄り添い、指針を示すことから、それが
分かる。もしかすると幼い頃、家族で旅行した時に、親切にしてくれた運転手だったのかも
しれない。（そんな繋がりを見せてくれれば、彼女の哀れな人生に、少しでも幸福な瞬間が
あったと、知ることができるのだが）

　アレが打ち込まれる「刹那」に、彼女の脳内では、長い長いドラマが駆け巡っていた。
そして「これで、よかった」という思いを、彼女は抱けた。だが、あの忌まわしいブルーは、
破滅しながらも生きているし、何より元凶たる継父への鉄槌は下されないままだ。
　そんな放りっぱなしの状態にされて「鎖を切って飛び立とう」なんて言われても…そこに
カタルシスは生まれようがない。

　この不快感の正体を考えた時…これは「釈迦の掌」では無いが、現実と思しき世界が一周
して、最奥の夢の世界と繋がっているせいじゃないかと思い至る。現実との境を失い、どこ
までも拡がり続ける悪夢の国のアリス…。　

　
　

ベイビードールという名にふさわしいベイビーフェイスの彼女が仲間を従えて対戦型サバイバルゲームでブッ放しまくる。
だいたいはそんな感じのストーリー。
ひとつひとつ駒を進めるたびに得るアイテムやヒントが欠かせないキーポイントとなっていくところが、あんまりやったことないけどドラクエとかＦＦとかみたい。

ヘアバンドやふたつに縛ったヘアスタイル、白い肌に紅潮したりんごちゃんの頬、セーラー服もどきの衣装に身を包み、
ニーハイソックスとミニスカートからちらりとのぞかせた太ももはこの業界では ”絶対領域” と言うそうです。

空想世界の映像がすんごい空想世界だったので、これは映画館で観てみたかった気がする。
あと、音楽と作品の相性が抜群によかった。重くのしかかってくる感じがいい。
サントラ聴いてみたいとおもったんだけど、すぐ飽きちゃうかなぁ？

さいごのさいごの手前までは楽しめたのですが、さいごのさいごですべてがおもいっきし謎になってしまった・・・・・。
これは他の方のレビューを読んでみよう。
解決するかしら？

２０１１年上半期には、映画館で映画を７本見たんですが
これが一番好きでした。

冒頭、ベイビードールの悲惨な体験を、音楽をバックに流れるような映像で見せる…
それは圧倒的なインパクトを持ち、思わず吸い込まれました。

精神病院に入れられたベイビードールの想像する映像が大部分を占めています。
アクション、コスチューム、背景…とにかく美しくて魅力的。

ベイビードール役のエミリー・ブラウニングの悲しく、はかなげな顔がいい。
「レモニースニケットの世にも不幸せな物語」にも出ていたけど、彼女ってアンラッキーな映画向きかも。

実際に精神病院内で暴れるのを見るより、空想の世界の方が百倍楽しいですね。

あのダンスのイメージ映像、ブルーレイでもう一度見たいです。

映像は面白い。スコット・グレンなんかが出ていて、深みのある雰囲気で、アクションもけっこう楽しい。出だしのつかみもイイ感じで、けっこう引き込まれる。美人がいっぱい出てるので厭きない。ただ、なんだかよくわからんストーリーで、エンディングについては結末と呼ぶにはあまりにも外れすぎ。自己犠牲の精神を持てって言いたかったのかもしれないけど、ちょっとなぁ・・っていう感じ。とにかく俺はヤだね。

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毎度の事ですが「豆魚雷」と言う海外トイなどを扱うショップの商品で公開前に「その」存在を知りました。
ベイビードールのフィギュアなどの商品は既に市場に出回っていますね。
ウサギのイラストの可愛いモビルスーツとか明らかにアイテム化狙いの様相をなしてます。
ネタがアニメ風ゲーム味なので原作付きかと思ったら「一応」ザックスナイダーが10年間暖めたストーリなんですね。
するとブラッドと同時進行なので「インスパイア」はないのかな？。
まあ、熟成されたストーリの割には薄味ですが…＾＾。
劇場公開時、殆どの映画館が「吹替版」での上演でした。
字幕版で観て始めて「親父」と「神父」の言葉遊びに気付いたりする私は語学に乏しいですね。
キチンと英語らしい韻の踏み方も脚本には散りばめて有ります。
BDに関しては「セル版」の感想なのでレンタル版とは若干内容が異なるかも知れません。
最近は「全く」オマケのないＢＤも多く、損した気分になる事も多いですね。
ちなみに「通常版」ＢＤにはベイビードールの「踊り」を上手く扱ったミニアニメが付いています。
ザック監督とスタッフのポップアップ解説を観たい方は特典版ＢＤの付いたパッケージを購入する必要が有るのでご注意を！。
物語の基本は精神病院の中で起こる事件をベービードール（本名不明）がロボトミー手術で前頭葉を砕かれる瞬間に観た「夢」の世界の様です。
演じるエミリーブラウニングが「しかめっ面」で悲しそうな顔をしているのは運命の重さを感じる演技をしているのかと思ったら実はアクションが嫌いで嫌いで仕方が無かったと言う話も有ります。
健康的なお色気爆発でミニスカヘソダシのセーラー服風コスチュームにブルマ着用で日本刀と可愛いストラップ付きの自動拳銃で大立ち回りと言う日本男児向けの萌え系キャラです。
その他の女の子も「生え抜き」と言って良いくらいのキュートさで、これまたキュートな存在を紡ぐキャリアを持つ女優を集めています。
この点の「人事」の拘りも徹底していますね。
誰一人狙いを外していないキャスティングです。
オチがゴロツキー女医がサインをしてませんでしたで完結してしまうのは驚きです。
まぁ、確かに主治医のサインは偽造すると言ってましたが、ここまで劇的な変化を呼ぶ要因にはならんでしょう？。
風の様に現れる「普通の」警官の姿には失笑を禁じえませんが、このイイカゲンさが良いんですよね。
この人を食った幼稚さはベッソンに勝るとも劣らないエンタメ才人の妙と言うトコロでしょう。
音声に関しては非常に綺麗ですが本編の映像は意図的（？）にザラっとした前時代的な味付けがして有ります。
ザック監督は実写とＣＧの輪郭の差が気になるのかも知れませんね。
ＢＤだから映像も美麗だろうと思っている人は少しだけ「諦めて」下さい。
時代設定が1960年代と言う事で全体的な質感はアナログＴＶの様です。
夢の中の話なので奔放な映像展開がなされます。
中でも途中の楽屋話で鏡の中の映像と実際の映像が逆転するシーンは美しいです。
単純に「やりたかった」のでは無く、全ては虚像で有るが実像と言う意図も有るんでしょうね。
彼女の周囲で起こる事は虚像で有りながら実像でベイビードールの脳内では真実として展開して行くと言う訳です。
ガーディーエンジェルの話も結局は映画を見ている人の脳内にも起こる事で自分の人生とは常に「戦う」用意をすべきだと言う強い信念さえ感じます。
スタートレックでエイブラムスが使ったカメラのハレーションを意図的に再現して観るモノもカメラのファインダーを覗いてベイビードールを身近に感じる工夫が冴えます。
アレを汚れと感じる人がいるならメガネを新しくした方が良いでしょう。
物語は最愛の母を無くして陰険で嫌らしい義父の嫌らしい視線に耐えかねた少女が自分の手で更に最愛の妹まで殺めてしまった悲しみから自分の殻に閉じ篭り、精神病院で魂を開放して同じ境遇の少女を救うと言う切なくも救い様もない話です。
なのにベイビードール（ザックスナイダー）が紡ぐ「夢」のデフォルメされた力強くも美しい世界が悲壮感を払拭して鑑賞後に爽快感さえ感じさせてくれます。
ともかく映像と音楽のチョイスが秀逸！。
スカスカのミュージックビデオにも見えなくは有りませんが、一人の少女のギリギリ状況での己の解放が心地良い快作です。
ザックスナイダーって女の子物も製作出来たんですね。
筋肉隆々でむさ苦しいオッサンの話しか作れないんだと思ってました。
猛禽類大戦争のガフールは単純にこの作品の「布石」に過ぎなかったんですね。
途中に挟まれる「日本的」な映像も嬉しくなって来ます。
最近はカラテキッドでさえ中国でクンフーをしてしまう時代です。
ザック監督には死ぬまで日本びいきでいて欲しいです。