しあわせの雨傘

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なんとも複雑な思いでこのレビューを書き始めました。カトリーヌ・ドヌーヴが私の贔屓女優リストから外れる日が来るとは思ってもみなかったんですが、こりゃ完全にイカンですわ。静かにお引取り願うしか無い。いくらトシ取った（この映画製作時67歳）からってこんな映画に出てこんな役演る事だけは絶対にあり得ない（と信じられた）ほどのイイ女だからこそ、私好みの「知的で健気で可愛い女」とは対極のタイプにも拘らず私は彼女を贔屓にしてたんですがね。ジャケ写のジャージー姿見て嫌な予感してたんですが（ジャージー姿「も」お似合いの[キレイなお婆ちゃん]なんて世間には掃いて捨てるほどいる。もっとずっと知的で品があって性格良さそうなお婆ちゃんですら「いくらでも」いる）、冒頭彼女がマジに「老人ジョギング」してるのを長回しで撮ってるんで、これは何か悪い「冗談」だろ？って思いましたねぇ（笑）。中盤に彼女が、やはり無残にもジジイになり果てたジェラール・ドパルデューとナイトクラブでダンスするシーンがあるんですが、これがもう老人ホームの「お遊戯交際」そのものの「微笑ましさ」なんで、私なんか堪らず目を背けてしまいました。
オハナシのほうもコメディにしては全然笑えないしフランス映画らしい洒落た小粋さも無く、寧ろヘンに泥臭い。シリアスにしては「家庭」も「会社」も「政治」も「経済」も描き方が全て薄っぺらで安っぽい。出てくる男も女も地味臭くてキャラの立たないヤツばかり。何だ！この映画は！と思ったところでハッと気が付きました。そうか！この映画、フランソワ・オゾンでしたね。
このヒトの作品、何作か観ましたが共通してるのは「女嫌い」だと思うんですね。私の「ホモ嫌い」に匹敵するくらいの徹底した「女嫌い」（笑）。彼の場合単に「男が好き」なだけじゃなくて「男にモテる女」に嫉妬し憎悪してる。無論「女が好きな（女に誑かされる）男」も大嫌いなんですね。つまり「モテナイ女」キャラの「オカマ型」ホモ男の典型。だから彼の映画に出てくる「女」って一人残らず魅力的（男から見て）じゃ無いし、「女好きな」男もアホで下品なヤツばっかりです。カトリーヌ・ドヌーヴのように世の男にモテまくった女優は彼の最も嫌悪するタイプの女「だった」に違いありません。だからもうこの映画では悪意丸出しで彼女に「ダサい勘違いオバサン（お婆さん）」演らせて楽しんでる。ジャージ着せてジョギングさせてセンスの悪いお嬢様ファッション着せて（ご丁寧に「若い頃着てたね」とか男に言わせてる。サイズもデザインも似合うワケ無いでしょ）、もうやりたい放題。ただそれだけの映画なんですね。まぁそれでもドヌーヴ自身が結構楽しそうに演ってるんだから私あたりがブツブツ言うこと無いんですけどね（笑）。彼女も遂に「イイ女」であり続けることに「飽きた」んでしょうかね。

60代半ばで、こんなに美しいなんて！！
太った・・・若い頃より少しだけ。ぜんぜんスタイルイイです。
アップで見るとシワはそこそこありますね。

1978年。
雨傘会社の社長夫人のドヌーブは、
家事に刺繍に詩作で、満足した日常を送っています。
夫は浮気性で妻を飾り壺としか考えていない、イヤな奴。
嫌味男と言ったらファブリス・ルキーニ。
夫の心臓発作の入院と会社の組合員のストライキ。
妻(ドヌーブ)が、代わりに会社の経営に乗り出します。
ここから、彼女の潜在能力がメキメキ発揮されることに・・・。

そこに左翼系市長のジェラール・ドパルデューが、絡んできます。
なんと結婚直後の若きドヌーブとドパルデューの市長は、草むらで、
情事をした相手・・・なんです。
夫が浮気性と思ったら、なんと妻もその時期同時に4人の男性と、
関係が有りました。(夫を含めてね)
さすがフランス人(？)

カトリーヌドヌーブのお洋服が、素晴らしくて(ジャージ姿も披露・・・これもお似合い！)
ホント、カトリーヌドヌーブonステージ。
ラストは以外な終わり方です。
まさかそう丸めるとは？
やや穏健なフランソワ・オゾン監督作でした。

（DVDにて鑑賞）
詩を作ることとお料理が趣味の専業主婦のスザンヌ。
夫は雨傘工場の社長で、娘からは「お母さんは飾り壺」と揶揄される。
一見、ぼんやりしてお仕事とは無縁なマダムなのに、
夫が入院し、社長代行として会社に出入りするうちに思わぬ手腕を発揮し始める。
スザンヌが社長として社員たちに受け入れられるのは、まず彼女の人柄があってこそ。
人を動かすのは、人なんだよね、という温かいストーリー展開が表面上では繰り広げられるわけですが。

私はやっぱりオゾン作品だけに、スザンヌの過去が明らかになるに従い
「オンナってカワイコちゃんぶってても、裏で何してるかわかんないし！」という声が聞こえてくるようです。
特にそのあっけらかんとした描写。オンナはしれっと、こういうことしてるのよ。やーね、コワイコワイ。なんて。
もちろん、そこんところ、ワタシは大変好意的に受け止めていて、それこそがオゾンらしさではないかと思っています。

まだまだ女性が差別されている時代にあれよあれよと成功してしまうスザンヌ。
「私はお母さんのようにはならないワ」と言っていた娘が何よりの理解者になるのかと思いきや、意外な態度に。
本作はもともと人気の舞台をベースにしているそうなんだけど、
この娘の存在はオゾンが作ったオリジナルの役柄と聞いて、これまた「らしい」と膝を打ちました。
成功する母親とは反して次第に「オンナ的立ち位置」にすがってしまう、そんなキャラクターを配することで、
ちょっとひねくれた仕上がりになっています。

意外な裏の顔を持つスザンヌ。それが「昼顔」を演じたドヌーブというあたりが、憎い。
ドヌーブのファッションも見ていて楽しいし、演技がとても軽やか。ドヌーブの風格漂う1本ですね。

人生、晴れ時々ゲリラ豪雨！

しあわせの雨傘（２０１０年・フランス、カラー、１０３分）

まったく予備知識なしで観たのですが、邦題からしてフランスの純情恋愛映画．．．
そういうイメージで観たらトンデモナイ！
冒頭から、なんと赤いジャージー姿のカトリーヌ・ドヌーヴがジョギングしているではありませんか。
でも往年の、‘背筋が寒くなるほどクールな美貌’ からは、やや遠ざかった印象です。

時は１９７７年のフランス。ジョギングが日課の専業主婦スザンヌ（カトリーヌ・ドヌーヴ）は、結婚して３０年になる夫ロベール（ファブリス・ルキーニ）が雨傘工場を経営していることもあり、優雅なブルジョワ主婦。ロベールは亭主関白なうえ、秘書のナデージュ（カリン・ヴィアール）と浮気までしている始末。息子のロラン（ジェレミー・レニエ）は工場経営を継ぐ気はなく、娘のジョエル（ジュディット・ゴドレーシュ）は父の言いなりになっているスザンヌを見下している。ある日、ロベールの工場でストライキが起き、ロベール社長と従業員たちとの対立が激化する。スザンヌは昔付き合いのあったババン市長（ジェラール・ドパルデュー）に相談するが、ババンは、夫に代わって工場を経営するようスザンヌに進言する．．．。

完全なコメディ映画ですね。
時折出てくるブラックなセリフの一言一句が面白く、そのセリフに反応するドヌーヴの表情を見ているだけでも楽しいです。さらに、瞬時にミュージカル仕立ての雰囲気になる場面もあり、飽きさせません。
カトリーヌ・ドヌーヴのコメディ映画は観た記憶があまりないので、逆に新鮮でした。

ドヌーヴが本作同様ジェラール・ドパルデューと共演した、８０年「終電車」（フランソワ・トリュフォー監督）での彼女は、成熟した美貌の頂点であったと思います。
しかし、６４年「シェルブールの雨傘」における１９歳のリアルな演技、６５年「反撥」での怯えの表情、６７年「昼顔」の究極の退廃美と、彼女の女優としての成長の足跡は確実に印されていたことが分かります。プライベートな問題は多々あれど、トリュフォーをはじめ、ポランスキー、ブニュエルといった鬼才、巨匠といわれた監督に磨かれたことは、彼女の女優人生において大きな財産になったと思います。

明るいコメディのお話なのに、レビューは堅苦しくなってきました。
いつもの癖が治りません。

女王ドヌーヴの座を再確認しましたが、ナデージュ（社長秘書）を演じたカリン・ヴィアールが実に滑稽で、いい味を出していました。