湯を沸かすほどの熱い愛

　もう人が亡くなる話はいいかなあと思って、しばらく鑑賞をためらっていましたが、評価の高さについ決意が揺らいで観てしまいました。湿っぽくならないように、エネルギッシュに、カラッと描こうとはしているけれど、やはり人の死はずっしり重く心に堪えます。

　死を宣告されたら、母親なら何よりも真っ先に考えるのは我が子の行く末。子どものために今できることは何でもしようと、自分の病状を隠して、必死に奮闘する双葉（宮沢りえ）がすごく切ないです。

　自分のことよりひたすら子どものために、という母親の深い愛情をストレートに描くのかと思えば、ストーリーはどんどん複雑になっていきます。最後ひとつに収斂するとはいえ、訳ありの親子だらけで、エピソードも盛りすぎ。テーマが拡散して、悲劇なのか、コメディなのか、ファンタジーなのかも曖昧。

　宮沢りえは、熱演を熱演とみせず、さらりと演じていて、さすがです。また、優しいけれど頼りない、いい加減な夫役のオダギリ・ジョーは、重く暗い話に温かみや軽さを醸し出して、飄々とした味わいがとてもいいなあと思います。

あのラストは許される事なんですか？
（法律違反）犯罪じゃないのですか？
映画だから良い、という訳にはいきません。
出会い頭に夫にケガさせたり、人の家のガラスを割ったり、
人をいきなり殴ったりする、この母（宮沢）の言動には非常識な
ところがありすぎでは？
いきなり、あの人が生みの母だよ、とか言われる子供（杉咲）いろんな意味で
かわいそう。
それぞれ事情のある人生だけども、「ありすぎ」で逆に感情移入できない。
幼い子どもに「この家にいてもいいですか・・」と長セリフ言わせるなど
まともに普通のセリフも言えないのに棒読み感たっぷり。（シラケました）。
あまり絶賛するレヴューが多いので、私は辛口にしました。

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だけど杉咲花があそこで服脱いで解決って違和感。脱ぐ必要あった？
小さい子供もお漏らしするのもなんだかなー。必要あった？
人間ピラミッドの時大声でみんな叫んで感動！みたいな設定だけど、
同じ病院の人の事全然考えてないし普通だったらすぐ通報されるだろうなとか。
最後も、タイトルはそういうことだったんだ！っていうより、犯罪だしそれを愛情として描いたつもりなら気持ち悪いと思ってしまった。
その他も実際にいたら色々と頭のおかしい家族の物語。
そのあたりが全く感情移入できなくて全く泣けなかった。

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いわゆる余命もの。
母の一生懸命な姿だけだと息が詰まるけど、そんなに湿っぽくなかったのは、夫役オダギリジョーのとぼけた雰囲気のおかげだと思う。
ダメな人だけど、憎めないというか。

娘役の杉咲花は、かなりの熱演だった。
母が癌であるというだけでも辛いのに、学校でいじめにあったり、実はこの母の子ではなかったとか、父が家出していたなど、いろんな試練にぶち当たる難しい役を見事に演じていた。

私立探偵役の駿河太郎はメガネかけて笑ったら、お父さん（笑福亭鶴瓶）にそっくりだった♪

内容的には、母が娘に勝負下着を渡したり、母と娘の旅行中にヒッチハイクの男が乗ってくる展開など、とってつけたようで、不自然な部分が多かった気がする。

「湯気のごとく、店主が蒸発しました。当分の間、お湯は沸きません。　　幸の湯」という貼り紙がしてある銭湯の玄関硝子戸。入りに来た人は「がっくり」して帰っていくでしょう。でも、その前を毎日、遠回りしてでも確かめに来るでしょう。銭湯とは、そういう場所。
「湯を沸かすほどの熱い愛」（2016、「湯を沸かすほどの熱い愛」製作委員会／クロックワークス、カラー、125分）。
「双葉」（宮沢りえ）は、夫「一浩」（オダギリジョー）とともに銭湯を営んでいたが、「一浩」が失踪した。銭湯は休業せざるをえなくなり、「双葉」は、アルバイトでパン屋に勤める。一人娘「安澄」（杉咲花）がいた。「双葉」はパン屋で倒れ、病院でガンの「ステージ４」、余命二〜三か月と診断された。けれども、彼女には多くの「仕事」があった。
【１】 銭湯を再開させ、家計を立て直す算段をすること。
【２】 娘「安澄」の高校でのいじめ問題を解決すること。
【３】 夫「一浩」を捜して連れ戻し、銭湯を再開させること。
この三つは三位一体で、どれが欠けても成立しないことだった。
事態は変化し、さらに困難な状況が詳しくわかってくる。
【Ａ】「一浩」は帰ってくるが、彼は愛人との子「鮎子」（伊藤蒼）を伴っていた。
（ともかく「一浩」は「サイテー」の男だった。）
「双葉」はこの問題を解決する。留守番をさせて、働かせる。
【Ｂ】「安澄」は「双葉」の実子ではない。
「双葉」は「安澄」を実母に会わせるために旅に出る。途中でヒッチハイカーの青年「拓海」（松坂桃李）に、行き当たりばかりの人生を改めるように諭す。
【Ｃ】「双葉」の帰路
「末期」が近づいている。倒れる。けれども、「安澄」の実母「君江」（篠原ゆき子）や「拓海」、探偵「滝本」（駿河太郎）の助けで、彼女の心に短い平安が訪れた。
【Ｄ】銭湯の再開
煙突から煙が出て、銭湯に人生の「職場」を見つけた人々が、生き生きと働き始めた。
「燃える恋」には出会えなかった「双葉」の「熱い湯」が沸く場所に、人は一日の汚れを落とし、疲れを癒し、今夜の安眠と明朝の心地よい眼覚めを求めにくるのだ。

「困難は分割せよ」というのが、「中間管理職」の危機回避、あるいは「自殺防御」の手段という。宮沢りえ演じる「双葉」はどちらも選択せず、余命の短期間で一括解決を強行する。それは奇跡的な道であるから圧倒される。