ゴールデンボーイ

以前から観たいと思っていたのですが、時は流れて、ブラッド・レンフロは窃盗かなんかで警察沙汰になるという、子役スターお決まりのコースをとった後、太ってしまい今は昔の面影もない。（「ゴーストワールド」参照）イアン・マッケランはガンダルフになってしまった。
映画自体も期待はずれというか、気分がわるくなるような代物でした。ホロコーストというセンシティブなテーマをこういうふうに扱ったのは、勇気があるというか、常識がないというか・・・もっと別のアプローチがあったのではないかと思います。

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　殺人事件がメディアを賑わせる世の中だ。特に猟奇殺人や快楽殺人など、人が本来持っているハズの“良心”に疑念を抱かざるを得ない、陰惨な事件に私たちは興味をかきたてられてしまう。こうしたトピックに惹きつけられるのはなぜだろう・・・。

（あらすじ書いてしまっています。未見の方はお読みにならない方が良いと思います）

　本作の主人公である優秀な高校生トッドは、授業で習ったホロコーストに異様な興味を覚える。そして偶然見つけたナチの生き残りの老人に当時の事を語らせ、好奇心を満足たそうとする。「人を殺す時、どんな気分か」と尋ねるトッドの顔には卑しい笑みが浮かび、ワイドショーを楽しむ人々の姿と重なって見える。しかし、彼は踏みこみすぎた。過去を公表されたくなかったらと老人を脅し、何度となく体験を語らせた挙句、ナチスの制服を着せ行進までさせる。初めは少年の仕打ちに怒っていた老人が、制服に身を包むことで次第に狂気を呼び覚まされていく過程は恐ろしい。が、このあと老人が猫をオーブンで焼こうとするシーンで私は考え込んでしまった。果たしてこの残虐性は、軍の職務に忠実に従った結果、良心が麻痺してしまった老人の、言ってみれば戦争の「後遺症」なのか。それとも元々有していた暗い欲望がホロコーストをきっかけに目覚め膨張し、その残滓が今また蘇ってしまったのか、と。

　トッドもまた老人の狂気が伝染したかのように小動物を殺す。その時の彼は自分の中から沸き起こる衝動に恍惚として身を委ねている。彼が老人の体験談＝虐殺の話に興奮するのは、自分の中にある潜在的な欲求が共鳴するためではないか。そうなると殺人事件に興味を覚える私たちにも同じ欲求があるのか、と疑ってしまうのだ。確かに殺人という具体的行為には強い抵抗感を覚えるが、人の運命を握るという意味において支配欲が刺激される、ということはあるかもしれない。本作においても主題的に描かれているのは「パワー（権力）」の問題だ。

　トッドの行動の原動力は、好奇心であると同時に老人を意のままに操ろうとする支配欲だと思う。途中までは彼がパワーを握っていたが、成績がガタ落ちしたとき家庭と学校の両方に体面を保てるよう画策したのが老人で、これをきっかけに形成逆転する。こうしたパワーの移動のスリル、弱者や公正な人物に見えた者にパワーが委譲されるという展開はＢ・シンガー作品ではお馴染みだ。老人の手中に落ちたトッドはあるきっかけで自らが殺人者となってしまい、老人に問われる。「人を殺す時、どんな気分だ？」

　老人の持つパワーの強大さは、入院先で出会うホロコーストの生き残りのユダヤ人が過去を思い出して驚愕するシーンでも示される。言葉も発せず看護婦に縋って戦慄く姿に、長い年月を経てなお疼く深い傷を思わされた。そしてクロースアップで捉えられた老人の死顔はかっと目を見開いており、一人の老人の肉体は滅びても彼が持っていた邪悪なパワーはなおも生き続けていることを暗示する。殺人の事実を隠蔽して主席で高校を卒業したトッドは、彼に疑念を抱いた教師を脅迫し沈黙させる。もはやこの少年は恐ろしいモンスターと化してしまった。彼は老人の強大なパワーを学び継承した「優秀な生徒」（APT PUPIL：原題）なのだ。

　戦時下でも荒れた家庭環境下でもない中で殺人者となった少年のドラスティックな変化は、誰もがパワーへの欲求を潜在的に有しており、いつどこで暴走してしまうか分からないというリアルな恐怖を見せつけていた。

ホロコーストに興味を持ったトッド少年は、近所の老人が元ナチ高官だったことを突き止める。
周到に指紋まで採取して凄い執念です。どこからこんなエネルギーが湧いてくるんでしょう。
そしてトッドは老人宅に押しかけて証拠を突き出し、隠していた過去を認めさせるのです。
次にトッドが老人に要求したことは・・・警察に密告されたくなければ全てを話すこと・・・
ガス室での様子や囚人の死に様を根掘り葉掘り聞くトッド。
ついには、老人にドイツ軍服を着せて命令を下す始末。トッドの要求がエスカレートしてきます。
トッド自身も精神が不安定になって、勉強が手に付かなくなってきました。
一方、老人は目が輝いてきました。昔を思い出してしまったのでしょうか。

老人とはいえ、この男は元ナチ高官です。世界大戦、数々の虐殺、偽造行為、敗戦の混乱、密入国など修羅場をくぐり抜けてきたツワモノです。お子様・トッドなんかより遥かに上手（うわて）です。相手が悪すぎました・・・次第に、立場が逆転し始める。老人を支配していたはずのトッドが逆に追い詰められる展開に・・・

前半は面白かったんですが後半はちょっと退屈になってきました。もう少しホラーテイストが欲しかった（笑
終盤は呆気ない展開で都合が良すぎる感じも受けます。
ラストは非常に後味の悪い終わり方。これで良いのでしょうか？　キングらしいとも言えますが・・・
トッドの好奇心の代償は大きかった。生涯、彼を苦しめることになるでしょう。

主役のトッド君は、故人なんですね。なかなかの演技でした。惜しいですね。

有名な小説の映像化という事で沢山のマニアな方の意見がネット上にも載っていますが、一部ほもっぽいという意見があり、私が大変そう言う物に鈍感だったので一度見直してみました。監督がほも、老人役の俳優がほも、だ、そうです。
言われてみるとうーん　出てくる少年はとても綺麗で　シャワーシーンもあるし半裸で寝そべって考え事をしている所とか　あと老人とお互いを束縛し合う所とか　少年の耳元まで近寄ってグラスを取る老人とか　少年が嫌がる老人に無理矢理軍服を着せて命令する所とか　えっちなシーンは無い物の、ははあ…これってほもが見たら嬉しいのかもしれないと思う部分が沢山ありました。この老人役の老人はとても有名な上手な俳優で、内面演技がうまくて上手すぎて見ていて気分が悪くなる人もいるようです。浮浪者を殺す所の目の動きとか凄かった。シェイクスピア俳優だそうですが、スネイプ先生と言いこの人と言い、本当にもの凄い役者は細かい映画に良く出てくる訳で、そういう物を知らないメジャー好きのミーハーな一般大衆は、ハリポのスネイプが上手かったけどあれ誰？とかX-MANの悪役のじーさんが良かったけどあいつ誰よ？とかやっと気がつくのです。考えてみればそうだなあ、日本でもアイドル映画は脇役ベテランで固めますよね。アイドルだけでは間が持たん。真の俳優を見たい人やほもの方（笑）におすすめ。
それとエンディングですが、原作と違うので全然迫力が無いそうです。そりゃ俳優のせいではないね。監督のせいだね。うっかりじゃあ原作読もうと思われた方は気をつけて下さい。かなり救いようのない暗くて重い、描写にかなりページ使ってる内容らしい。みんな読んで後味悪いって言ってるみたいですね。私は読もうかどうしようか

主人公の少年が凄くリアルで、観ていてハラハラする。成績優秀なのにヘンなことに興味を持ち、親に言えない秘密を持ってしまい、将来を棒に振ることになるかもしれない状況に陥り、必死に自分を守ろうとするところが映画全体の緊迫感となっている。ただし、元ナチス将校がホントにこの映画で描かれているような人物なのかはよくわからない。実際にナチの収容所で働いていた人って、軍人として上司の命令に忠実に従っただけで、内面には何もないようなつまらない人物が多かったのではないかと私は思っている。内面に深みのあるような人物には、あんな仕事はできないだろう。サディステックな性格の人であったとしても、あんなに大量の人間を殺すとなると面白くもなんともなかったはずであり、その仕事を楽しんだとは思えない。まあ、いろんな人がいるから、楽しんだ人もいたのかもしれないが・・。
この映画は、あくまでも、少年の進退に軸足を置いた作品であり、身を隠して暮らしていた元ナチス将校は、少年の暗い内面に通じるおぞましさを引き出す道具にすぎない。