マイケル・ジャクソン　ＴＨＩＳ　ＩＳ　ＩＴ

2009年　アメリカ映画

私がマイケル・ジャクソンの訃報を知ったのはテレビ画面のテロップが流れた時だった。
『マイケル・ジャクソン、ロサンゼルスの自宅で心臓発作で死亡』そんなフレーズだったと思う。
わずか50歳という若さだった。そのテロップを読んだ時、かなりの衝撃が走った。
言葉では表す事ができない程で、自分でもどうしたらいいのかわからない感覚を覚えた。
でも、それまで私は大ファンという自覚はなかったのに、なぜだろう。どう言ったらいいだろうか。
この世にマイケルが存在する事が当たり前だったのだと思う。
その当たり前の存在であるマイケルがもうこの世に居ない・・・。
私の心にぽっかりと大きな穴が空いた。
その後、マイケルの大ファンである知人から勧められて観た映画がこのTHIS　IS　ITである。
上映中は何度も映画館に足を運びました。

彼のパフォーマンスは言うまでもなく素晴らしいいのですが、一ミリも努力を惜しまず、2009年7月から行われるはずだったロンドン公演に向けて、ひたすらそのコンサートの成功だけを願い、これ程までに自分の音楽に拘りを持ち、妥協を許さないという姿が残されている。しかも周りには常に気を遣うという心の細やかさと腰の低さ。その姿を目の当たりにした私は、ハンマーで殴られた様なショックを受けた。本当に素晴らしかった！
このTHIS　IS　ITはあくまでもリハーサル映像です。リハーサルでこんなにも人々を魅了するのだからコンサートが成功していたらどんなに素晴らしいものになっていただろうと思う。
そして、それと同時に私は何て愚かだったのかと、それまでの自分を酷く恥じた。
その気持ちは今でもあります。
晩年の彼はゴシップ記事や繰り返しの整形手術によってすっかり若かりし日の生気あふれるマイケルの姿ではなくなっていた。でも後々に知ったのですが、表舞台から姿を消していた時間も決して無駄にはしていなかったのです。
私はマイケルのゴシップも、あの児童虐待の裁判もハメられた事とは知らず、無責任な言葉を発していた気がする。気がするではなく確かに発していました。
肌の色が白くなったのも、尋常性白斑という皮膚の病だったし、黒人としての誇りをいつも持っていたと思う。本当にごめんなさい、マイケル。
貴方から学んだ事は沢山ありますが、特に胸に刻んだのは「決して物事を自分の思い込みで決めつけない」という事。そしてどんな時もいつも音楽を愛し、人を愛し、動物を愛し、偏見を無くそうと働きかけ、地球の環境問題のまでも考えてくれる愛に満ち溢れた人でした。
肉体は滅びようとも魂はいつまでも私達の中で生き続けます。

今年の6月25日でマイケルが亡くなって没後10年。その節目を迎え、そして8月29日はマイケルの生誕日でもあるので、これを機会にレビューを書く事にした次第です。
あらためて追悼と懺悔の気持ちを込めて。

さすがマイケル、歌も踊りも楽しめます。ところで、ポップスファンの皆さん、マイケルの前の王様は誰か知っていますか？　そうです、小泉さんも真似したエルビスプレスリーです。私の知る限り、一人のエンターテナーでこういった映画が作られたのはエルビスとマイケルだけだと思います。「エルビス・オン・ステージ」、おすすめです。とにかくかっこいい。音楽も色あせていない。

本来ならば特典映像です。
もしくは陽の目を見ない映像のハズでした。
この映像が作品として世に出なければならなかった事実に
未だに喪失感をぬぐえず
残念な気持ちが少しも消えません。
最後のワールドツアーになったであろう
THIS IS IT ツアー
その全貌が明らかになることなく
その興奮を誰一人味わうことなく
全てはまぼろしとなりました。
全ては叶わぬ願いとなりました。

この作品を観ないわけにはいきませんでした。
最後のマイケルを観ないわけにはいきませんでした。
そこに作品のクオリティーは期待していませんでした。
ただ、知りたかった。
マイケルがどんな気持ちでこのツアーを成功させようとしていたか
マイケルがどんな曲を歌おうとしていたか
マイケルがどんなダンスを踊ろうとしていたか
マイケルがどんなメッセージをこのライヴに込めようとしていたか
その思いを少しでも感じたかったです。

ムーンウォークが出てきません。
満足なダンスも披露されません。
それでも、マイケルはそこにいました。
それだけが唯一の望みであり
それだけが唯一の望みであることが
どうしようもなく悲しいです。

ある場面でマイケルがメンバーにＮGを出します。
そのときマイケルは言います。
「怒ってるんじゃないよ　愛だよ」
この一言は消えない記憶となりそうです。
この一言にマイケル・ジャクソンが表れているような気がしました。

マイケルの死という現実より過去も
その当時も
そして今も未来も
言える事はただひとつ
「このライヴが観たかった」

評価は低くしてしまったけれど
マイケル・ジャクソンはこういう風に音楽を作っているんだという所を
ほんの、ほんの少しだけ垣間見る事ができて
それだけでも嬉しい。

マイケルが周りの人たちに何かを伝えようとしている時の会話のやりとりがとても印象に残った。

見応えは充分ありました。
ネットで「泣けた」とあったので、ジーンとぐらいはするかなと思っていたら３回泣けました。

「earth song」と「Ｉ’ll be there」は分かるにしても
どっちかというとミーハーな「smooth criminal」にまで泣けたのは不思議でした。

それほどファンではなかったですが、あそこまでリハをやっといて死んでしまったのはやはり悲しいです。