黙秘

主人公の女性を「悪態ばっかり言ってるから嫌われるんだ」と思って見てる人多いと思います。
経験者でないとわからないです。「悪態ついてるからではなく、悪態つかれ続けてきたからだ」ということに。
「ブスな妻だ」「お前が悪いに決まってる」なんて否定ばかり言われ続けたら、悪女にならないと自分を守れる訳がない。自殺して終わりが関の山。
悪態つき返して闘い続けるという地獄を生きてきたことの方が、自殺よりマシと思います。
多分あの事件、美人だったら、大した調べなしに「事故か正当防衛」で誰も文句言わないで済んだでしょう。悲しいけど人間ってそういうものです。
さすがキャシー、芝居上手いです。

名作というほどでは無いが良作。
90年代前半には有ったけど、なんとなく今は絶滅してしまった雰囲気の映画。

事件が起きるし、ジャンルはミステリーとかサスペンスにされているけれど、メインはドラマ。
ちょっとしたどんでん返しとか伏線とかもあるけれど、あくまで味付け。
かと言ってドラマ部もベタベタとやり過ぎない程度に納めてあってそれが成功。

雰囲気勝負の映画で、その雰囲気が良いので「ああ90年代だな」と浸れる人にはいい映画。

ハリウッドが誇るメンヘラ女優の二大巨頭が夢の共演！

母役はキャシー・ベイツ！
『ミザリー』のメンヘラ豚女役でオスカーを受賞した大女優です。
※今でもアニーの顔を思い出すだけでゾッとします…

娘役はジェニファー・ジェイソン・コンバット・リー！
『リッジモントハイ』では可愛いJK、
『グレートウォリアーズ』ではお姫様の役だったのに、
『地獄のシスター』以降、わけあり女、サイコ、ヤク中、アル中と
やたらメンヘラ系の役が多いです。
美人で声が子供っぽいからよけいに怖い…

役の設定は母と娘ですが、
実際2人は14歳しか違わないことにビックリしました。
見た目は完全に“おばあちゃん”と“オネエちゃん”です。
2人とも役の創りこみがすごいです！

さて本作、お話としては
お母さん(ベイツ)が奉公先のお屋敷で女主人を殺した容疑で逮捕され、
NYで仕事している娘(リーさん)が久方ぶりに帰省します。

オカンはほんとにババアを殺したの？
そして、20年前のあの日…
実家で一体、何が起きたの…？

それが徐々に明らかになります。

本作で特徴的なのが、登場する男が揃いも揃ってクソ野郎ばかりなことでしょう。

旦那はDVアル中のケダモノ男…
警部は粘着質のストーカー頑固ジジイ…
女主人の夫は他所に女がいる…
会社の上司はイケすかねぇ、ヤッピー野郎…

とにかく野郎がクソばっか！
「いるいる、いるよね貝社員」じゃないけど、
「いるよね、クソ男」で、こういう男が女を苦しめていると思いました。

映画でキーとなる皆既日食が意味深です！
女が月で男が太陽ってメタファーだとしたら…

あの日に起きたあの事件、そしてあの場所の意味は非常に多層的ですね。

この映画、男という牢獄から脱走しようと、
闘う女たちが描かれていたと思います。

なんか、『女囚さそり』とりわけ「41雑居房」に通じるものがあると思ったのは…
私だけでしょうか？

黙秘（１９９５年アメリカ、カラー１３１分）

なんといってもキャシー・ベイツの圧倒的な存在感に目をみはらされます。
個人的には、彼女の代表作９０年「ミザリー」と双璧をなすくらいの迫真の演技と思います。
公開後、ＶＨＳで１度観て以来ですから、ストーリーの大半は‘忘却の彼方’だったのですが、今回再見し、なぜこんなことになったのか．．．あらためて１人の人間の身勝手な振る舞いに怒りを覚えました。

その男ジョー（デヴィッド・ストラザーン）は、酒飲みで横暴、ことあるごとに妻ドロレス（キャシー・ベイツ）を罵り、暴力を働いていた。ドロレスは娘のセリーヌ（ジェニファー・ジェイソン・リー）を幸せにすることを生き甲斐とし、富豪未亡人ヴェラ（ジュディ・パーフィット）のメイドとして働いていた。ところがジョーは、ドロレスが娘のために貯めていた学資預金を使い込み、挙句の果てに、セリーヌにも性的悪戯を続けていたのだ。（サイテーの男、父親の資格ゼロ、人間として許せない／怒！）
悲嘆にくれるドロレス。みかねたヴェラはドロレスに対し、‘所詮この世は男の社会．．．でも女も時には悪女になる必要がある’と、意味深な言葉をかける。ある日、ドロレスは手筈どおりに、ジョーを古井戸に落とす．．．。

キャシー・ベイツは、いわゆる‘どこにでもいる中流家庭の主婦’．．．こういった役を演じさせたら抜群に上手いですね。まったく違和感なく、演技とは到底思えないほどの自然体です。
彼女の心の底は見えませんが、娘を父親の行為から救ってやれなかったことへの悔恨、懺悔、そういったものがほとばしり出ているように感じました。

セリーヌを演じたジェニファー・ジェイソン・リー。
彼女にはずっと注目しています。何といっても「コンバット」のサンダース軍曹（ヴィック・モロー）の実娘なのですから。目もとが父親そっくりで、かつてはロバート・アルトマン監督のお気に入りでした。
９２年「ルームメイト」でのヒロインを脅かす同居人役、９５年「カンサス・シティ」の悪女役は強烈な印象でした。

母と娘の心理的葛藤を織り交ぜながら、２０年前の事件と現在の状況を行き来させながらの展開も見応えがありました。少しづつ真実が明るみになり、その都度、観客にある種の納得感を与えていくテイラー・ハックフォーフドの演出、さすがです。８２年「愛と青春の旅立ち」とはまったく異質な内容だけに、これが同じ監督であることにも少々ビックリでした。

９０年代を代表するサスペンス・ミステリーだと思います。

うっすらストーリーは見えてたんだけど、いい話だった。いい女優さんで　人間の深みが伝わってきて説得力があった。見てよかったなぁ〜