ゲティ家の身代金

リドリー・スコットは本来は好みである。この映画もテンポよく快適に観ることができる。
しかし、いかんせん内容がつまらな過ぎる。元々の下地となっている誘拐事件が実はつまらんものだったのかもしれないが、恐らくは脚本が悪い。あまりにも起伏がない。キャラが平凡で意志が伝わらない。事実に基づいたストーリーなので、あらすじはバレている。それでもサスペンス性を殺さないようにプロットを作るのが腕の見せ所なのだと思うが、逆にステレオタイプ以下の平凡さに堕してしまっている。基本的に何の見せ場もない。盛り上がりに欠ける。それでよく130分も流して観ることができたものだと逆に感心する。

実際に起きた事件を描いております。石油王ゲティのキャラが際立っていてよく出来ていました。また、誘拐事件そのものも適当なイタリア的な感じの事件で、ドラマのような展開でもなく現実的で分かりやすくてよかったです。ただし、事件をなぞりつつも、石油王ゲティのキワモノぶりを出そうとし過ぎたため、それ以外が「？」って感じに。

強い母親はまぁわかるとしても、交渉役のウォールバーグは頼もしく安定した存在ではありましたが、いる必要はあったのかな、という感じ。二人とも、何を考えているのかよくわからん感じなんですね。だから感情移入ができない。誘拐されたボンは、まぁ、アホな感じやな、なんですけどね。

結局、最終的には石油王が全てもっていって終わるという感じでした。悪くはないし、映像や展開も美しいんだけど、うーーーん、もひとつ・・・

実際の事件を基に描いた作品だけに緊迫感は尋常ではなく、思わず目を背けたくなるシーンも。登場人物それぞれの思惑を緻密に描いている。Ｃ・プラマー演じるゲティの金への執着は半端ではない。

1973年に起こった実話の誘拐事件に基づく作品と知ってちよっと驚いてしまった。
「孫のポールが誘拐されました」
「義父さんお金を払ってください」
「一銭も払わん」
「あなたは狂っている」
石油王で世界一の大富豪ゲティの対応、普通オジィちゃんなら孫は目に入れても痛くない存在、孫の命を救うためなら全財産を投げ出してもおかしくないのだが、彼は筋金入りの守銭奴なのである。
自宅に公衆電話を設置して客に電話代を負担させるという徹底ぶり。
「金を儲ける奴はいくらでもいるが金持ちにはなれん」
つまり自分の富にたかってくるものを全て排除しないと大金持ちにはなれないのだ。
「一度身代金を払えば何度でも同じ事がおこる」
この理屈は確かに一理ある。「テロリストとは一切交渉しない」というアメリカ大統領の言葉とも通じる。
離婚してゲティ家と離れているとはいえ、自分の息子を救うために母親は犯人グループと対峙すると同時にこの義父とも戦わなければならない。
マスコミに追いかけ回され、狂言誘拐とも言われながらも敢然と立ち向かう強い母親、はたして彼女に息子を救う手立てはあるのか、如何に義父を説得するかという展開が面白くなかなか優れたサスペンス作品に仕上がっている。
身代金まで節税の対策にしようとするゲティの発想、大金持ちになるにはここまでしないといけないのだろう。
「命の重みと金の重み」人間の欲望がある限り永遠のテーマなのだろう。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

大富豪のゲティさん、こんな過去があったんですね。。。
それにしても、お金持ちはドケチが多いとよく聞きますが、本当だったんだと実感しました。
実の孫がとんでもないことになっていても、しらーんぷり！
どんなに泣きつかれても、わしの金は誰にもやらーんとばかりにすっとぼけ続ける、まさにクソジジイを絵に描いたような人物。
まぁだからこそ大富豪になったんですけどね。
それにしても、最後にあの世に行かれる瞬間まで自分の集めたコレクションを見つめながらお亡くなりになるところが笑えます。
人生お金は大事ですが、お金より大事なものもあるのでは？