危険な情事

グレン・クローズがモンスター化するのがこわい

借りて、20年ぶりくらいに観ました。
本作、昔はテレビでちょいちょいやっていましたね。

グレン・クローズが演じたプッツン女、アレックスさん、強烈ですねwww
映画雑誌で“悪女特集”みたいなもんがあればこの女、必ずエントリーされていたような気がします。

本作を初めて観たのはガキの頃で印象は
「アレックス・フォレスト！この女は極悪人の犯罪者！マイケル・ダグラスの家庭を壊し、車を壊した。基地の中に入れてはいけない人種！」
でした。

しかし、大人になって観ると感想が大きく変わり、
何だか彼女がとても可哀想に感じました。
いや、アレックスだけでなく、奥さんも、娘さんも、ウサちゃんも、そしてウサちゃんが象徴するアレックスのアレも…みんな可哀そう。
マイケル・ダグラスの、いや男のエゴの犠牲者だと思えました。

アレックスに対してなぜ悪い印象を抱いたのか…？
演じたのが年増で華の薄いグレン・クローズだったからでしょう。
同じマイケル・ダグラス受難の映画でも『氷の微笑』と『ディスクロージャー』ではシャロン・ストーンおよびデミ・ムーアに対して、私は悪い印象は抱きませんでした。
美人の肩を持つ男の性(サガ)でしょうかね？

印象の変化以外でいうと、映画的な演出が非常に洗練された作品であることに気付きました。
ダグラスとアレックスが対面する机のペン立てにキンキンに研いだ鉛筆が刺さっていますが、2人のその後を暗示しているようです。
部屋の照明がオペラの舞台照明っぽいのは、本作の背景に「蝶々夫人」があるからでしょう。

「蝶々夫人」…この作品、純愛だなんだ歌いながら根底には男尊女卑、女性軽視があると思います。作られた時代が時代だからしょうがないでしょうが。
アレックスは蝶々さんが自分の喉に突き立てた包丁を、女の敵に対して突き立てます。
『危険な情事』はある意味「蝶々夫人」に対するアンチテーゼであると感じました。

p.s.
グレン・クローズ女史は本作で振り回した包丁を、今も大事に持っているそうです。
自分の女優のキャリアを切り開いた家宝としてでしょうかね…

1987年の作品。
ヘアスタイルとか大きな肩パッドの入った女性の洋服など、確かに見た目は30年前です。
しかし、こういう不倫の顛末に関しては、古今東西、未来永劫、永久不滅、そうそう変わらないのかも知れません。
怖い据え膳を食ってしまったマイケル・ダグラス演じる弁護士には、ホント、馬鹿だよねーとしか言いようがありません。
一方のアレックス（グレン・クローズ）に対しては、まったくの驚きというか、え〜、何で？という思いになりました。
あの獲物を射るような鋭い目つき・眼光からは、その後の男性依存に陥る展開は、私の想像外でした。
だって、誘ったのはアレックスの方からでしたよ。
「秘密は守れる？」とか何とか言って・・・
オイシイお誘いにも初めは躊躇していた弁護士のダンでしたが、途中、奇妙な表情をしていて、監督の音声解説を聞くまで私にはその意味が分かりませんでした。
どうもあの時、テーブルの下でアレックスがダンに足を絡めて誘惑していたようです。（鈍いな、私）
エレベーターの中でも先に誘惑したのは、アレックスでした。
随分激しい女性だとは思いましたが、その時はまだ異常とまでは感じませんでした。
怖いのは、ダンが自宅に帰ろうとするのを引き留め、ついには手首を切った辺りからです。
私には、「火遊び」を楽しもうとしているように見えた先程までの彼女と、情事が終わった後の彼女が、どうしても同じ人格とは思えませんでした。
それに「自分だけ楽しんで・・・」というアレックスの言葉も何だか変。
アレックスも楽しんでたじゃない？だからこそ、ダンを放したくなくなったのでは？
アレックスの異常さは、精神病的なものなのか、あるいは誰にでも起こり得る“度を越した”痴情なのか、ちょっと理解できません。
でも、普通にあり得ない話ではないところが、この作品がリアルな恐怖を呼ぶ理由だと思います。
まあ、教訓とするなら、男性はホイホイと甘い誘いに乗らないこと。
女性は、世の中に男性は一人じゃないことを認識すること。
こんな簡単なことなのに、昔も今も痴情のもつれが取り沙汰されるのは、欲望と理性をコントロールするのは至難の業ということなのかな。
本作での鬼気迫る演技が話題になったというグレン・クローズですが、『アルバート氏の人生』（2011年）で、アルバート・ノップスを演じた人と同じとは驚きです。
彼女の演技力は称賛に値すると思います。

かつて、光GENJIの大沢樹生さんが”目で殺す”と自らの眼力を語っていましたが、
本作品におけるグレン・クロースさんの眼力には到底敵わないでしょう。

作品中でも”男を殺す視線”を持つ女性として語られていましたが、
狙った獲物は逃がさないという今でいうストーカー気質は恐怖そのもの。w(ﾟoﾟ)w

普段、ゾンビやらピラニアやら殺人鬼やらのホラー映画を好んで観る私ですが、
これらの作品を遥かに上回る恐怖を感じました。(・・；)
そういった方も多いのではないでしょうか？

ちょっとした出来心が起きないとも限らない？
大人の関係を持ち出して誘ってきたのは女性の方なのに、やはり男が悪いのか？
否！男が悪いのは分かっているが、女の方も同罪ではないのか？
ベッキー騒動と同じく”喧嘩両成敗”であるべきなのでは？

色々思うことは多々ありますが、不倫報道が盛り上がるのは
多くの方々が夫、妻、愛人それぞれの立場に感情移入できるからなのかも？

本作品の注意点として、ウサギをこよなく愛している方は鑑賞を控えた方が良いかも？
ちょっとしたトラウマになるかも？( p_q)