イースタン・プロミス

久々にこの監督の作品を見たけど、最初からすごいグロテスクなシーンの連続。面目躍如ですね。気の弱い方には無理な映画です。ストーリー的にはロシアマフィアの話は「嘘だろう」というエピソードが多いけど、サスペンスとしてはありきたりな流れで筋も先回りして予想できました。結末もあっけない。
そこそこ楽しめました。ナオミワッツもこの頃はまだまだ美しかった。

イースタン・プロミス（２００７年、イギリス・カナダ・アメリカ、カラー、１００分）

「グリーンブック」（２０１８年）のヴィゴ・モーテンセン主演、異色バイオレンス・サスペンス。
ロシアン・マフィアが暗躍する世界を背景に、一味の謎の運転手と、若き助産師の女性との交流を描く。

病院の助産師として働くアンナ（ナオミ・ワッツ）は、ロシア人の伯父ステパン夫妻と共にロンドンで暮らしている。クリスマスの夜、アンナのもとへ１４歳の少女が救急搬送されてくる。彼女は妊娠しており、女の子を出産して息を引き取った。アンナは少女が持っていた日記を手にするが、ロシア語で判読できない。アンナはロシア人とのハーフだが、ロシア語が分からないのだ。そこでステパンに依頼するが引き受けてもらえず、やむなく日記帳に挟んであった名刺に書かれたロシア料理店 ‘トランス・シベリアン’ を訪れた。セミオン（アーミン・ミューラー・スタール）という温和な年配のロシア人男性がアンナを出迎えたが、少女のことは知らないと言う。だが、日記の翻訳を引き受けてくれた。彼の息子キリル（ヴァンサン・カッセル）は我儘な放蕩息子で、運転手のニコライ（ヴィゴ・モーテンセン）にも横暴な態度をとっていた。数日後、アンナはセミアンに日記のコピーを届けたが、帰路、バイクが故障して動かなくなる。そこへニコライが現れ、アンナを車で家まで送ったが、ニコライは ‘俺達の世界にはかかわらないほうがいい’ と言う。

冒頭から、かなりエグいシーンも多く、バイオレンスの極みだ。
まさかと思えるようなシーンがいきなり登場するから、観ている側は度肝を抜かれる。

主演のヴィゴ・モーテンセンは、上半身が刺青だらけ。無口で無粋な運転手だが、時おり優しさも垣間見せる。一切の感情を捨てたような男、いったい何者なのか。
そしてロシア料理店のオーナーであるセミアンは、いつも温和な表情で物腰の柔らかい接し方をする。
だが、話す内容はかなりシビアで、前半で彼がロシアン・マフィアのボスと分かる。
性格俳優アーミン・ミューラー・スタールはまさに適役ではなかろうか。
そしてセミアンの我儘息子キリルのキレっぷりが強烈で、アル中に溺れた男はかなりインパクトがある。
扮しているのはヴァンサン・カッセル。父親（ジャン・ピエール・カッセル）の血を引いているだけあって、今や引く手あまたのフランス人俳優。
その３人の個性派俳優に、堂々と渡り合っているのがナオミ・ワッツ。冒頭、若き助産師と記したが、彼女の出演時の年齢は３９歳だった。「マルホランド・ドライブ」（２００１年）から２１年が経っているが、名実ともにハリウッドの顔となっている。

デヴィッド・クローネンバーグ監督作品は５本目の鑑賞だが、「ヒストリー・オブ・バイオレンス」（２００７年）に勝るとも劣らない面白さだった。

レビューなど読んで面白いかと思ってしまったんですね。
しょっぱなから無理なジャンルの残酷さ。
頭から映像消したいくらい。わたしには無理無理な作品。

サスペンス好き＋フィルムノワール好きなら必ず満足。
主人公の男女（ヴィゴ・モーテンセン×ナオミ・ワッツ）の距離感がいい。
主人公の周囲の人物が個性的であり、配役の妙がある。
ストーリーに少し無理があっても、映画全体としての納得感は十分。
Ｒ１８ではあるが、目を背けるシーンは僅かで、大人であれば問題ない。

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ロシアン・マフィア物だった。
「ゴッド・ファーザーパート１、２」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」にはやや及ばないもののかなりの秀作だった。

KGBに追われロンドンに逃れたロシアン・マフィアのボスが表向きレストランを経営している。
陰では１４才の少女をレイプし人身売買する悪党だ。

物語は酒浸りでゲイの息子が自分の悪口を言った仲間を勝手に殺すシーンから始まる。
それを手伝った冷酷で沈着な運転手がやがて父親に認められ組織に迎えられる。

別の進行で薬局に助けを求めた妊婦の少女がその場で倒れ病院に運ばれるシーンがある。
彼女は死ぬが赤ん坊だけ助かる。

彼女の遺品から日記が見付かる。
それはロシア語で書かれていた。
ロシア人の伯父さんを持っていた助産師のナオミ・ワッツが翻訳を頼む。

深入りするのを嫌う伯父さんに、一旦、翻訳を断られたナオミ・ワッツは遺品の中にあった名刺を頼りにロシアン・レストランを訪ねる。
そして、そこの感じの良い主人に翻訳を頼む。
だが、その主人こそ少女をレイプしたマフィアのボスだった。
そこから一気にナオミ・ワッツの周辺は危険を帯びる。

組織に入れられた運転手が冒頭殺された仲間の復讐を避けるため、息子の身代わりされるシーンまではよく出来ていた。
だが、男が実はKGB後ロシアで権限を持つFSBの潜入捜査官だと分かった辺りでリアリティが薄れた。
お陰で男が所々善人に見えた事の辻褄は合うが、あまりに能力が超人的過ぎた。

ともあれ、捜査官を演じたヴィゴ・モーテンセンやロシアン・マフィアのボス、アーミン・ミューラー＝スタールは光っていたしナオミ・ワッツの魅力は強烈だった。
現在、彼女は正義感とセクシーさを兼ね備えた女優ではトップではあるまいか。