最近も、新たなガイド本が刊行されたことで
再び注目を集めている旧ソ連・東欧のジャズ。
80年代のワールド・ミュージック・ブームから
ソ連邦崩壊・東欧民主化に至った時代には、
日本にもガネリン・トリオなどが紹介され、以降
少なからぬ音楽ファンに親しまれてきました。
コメダ、ノヴィ・シンガーズといった
ポーランド勢をはじめとする東欧のジャズやポップスが
90年代からフリー・ソウル的に再発見されたのも
記憶に新しいところ。
もちろん、プログレ・ロック分野では、
旧共産圏ものは70年代の昔から定番。
僕もかつて上京した折には、
目白から移転したGSMさんをはじめ、
現在も営業されているEさん、Gさんなど
西新宿界隈の名店で
その辺の作品を渉猟し学ばせてもらったものです

で、そうしたガチな旧共産圏ものとは違い
あくまで西側の制作ではあるものの、
リーダーや奏者の出身が東側で、
ジャズ・ファンの関心を西側諸国以外に向ける
先駆けとなったのが、
ガボール・ザボ(ハンガリー)の諸作と並び、
旧ユーゴ出身のダスコによる本作ではないでしょうか。

当然ながら、のちの地中海、バルカン半島から
トルコに至る地域のジャズ・ロックのように
バッキバキに民族色が強い訳ではなく、
基本はあくまでハード・バップ。
それでも、奇数拍子やエキゾチックな音階の曲には、
確かにバルカン風情が溢れています。

そして、ダスコはもちろん、
ネイサン・デイヴィスらフロント三管の
楽器の鳴り、歌いっぷりが目覚ましい。
もう一人のサックス奏者は、
あのアレアのデビュー作で吹いてた人なんですね。
道理で鋭い音色。
テンポの速いリズミックな曲では、
重厚なマル・ウォルドロンのピアノが
若干もたついて聴こえるのもご愛敬です
(ドルフィーの「ファイブ・スポット」での
弾むような名演は奇跡？)。

一枚のアルバムとしての統一感には
やや欠ける気もしますが、
多様な曲想と演奏スタイルが楽しめ、
ヨーロッパのモダン・ジャズへの入り口としても
打って付けの作品だと思います。