私のレビューのコンセプトは以前のレビューを参照して下さい。
映画好きのＤＩＳＣＡＳ会員の方に、映画で使用されたクラシック音楽のガイドになれば幸いです。

今回は,ショパンの最高傑作である２４の前奏曲（プレリュード）の正しく狂気の名演。

　この作品は、一見感興のおもむくまま溢れる詩情を素描のように綴られているように聞こえるが、物凄い感情のうねりを確かな構成力で纏められた名作です。

　だからこの曲集は、他のショパンの曲のように、この中の１曲を単独で演奏されることはまずない。

　勿論有名な曲はあります。
　第７番は太田胃散のＣＭに使用された愛すべき小曲。
　第２番はイングマル・ベルイマンの「秋のソナタ」でイングリ　ッド・バークマンとリブ・ウルマンがピアノに向かうシーンに　おいて使用された。
　第４番は「きみに読む物語」でアリーが弾く曲。
　第１５番は「雨だれ」という名で知られた名曲。
　第２４番は曲集の最後を飾るに相応しい悲壮的な堂々たる終　　曲。

　このＣＤでのマルタ・アルゲリッチは、まるで豹が獲物を捕まえるように、激しく一気呵成に演奏している。
　一曲一曲を、丁寧に説明的に弾こうなんてこれっぽっちも思っちゃいない。
　まるで生死を賭けて弾いているみたい！
　でも彼女のような天才には、これ以外の表現なんて考えられないのでしょう。
　私はこの演奏で初めて、この曲集はただ一つの曲だったのだと知りました。
　演奏も、殆ど切れ目なく急き込むように続いて行く。

　ＤＩＳＣＡＳにある彼女の他のＣＤも全て名演。
　何故かこのＣＤには同じものがＤＩＳＣＡＳにある。
　同じレビューを二つともに載せておきます。

　なお、是非このＣＤの後に他の演奏も聴き比べてください。
　私の推薦は、イーヴォ・ポゴレリッチのグラモフォン盤。暗い情念に酔いしれます。
　それとクラウディオ・アラウのフィリップス盤。重厚な表現ながら、むせる様な感情の一杯つまった演奏です。殆どアルゲリッチとは対極にあるような演奏。