生きてるものはいないのか

　前田司郎の戯曲を、あの石井聰互が「映像化」している。「映画化」と言い難いのは、
舞台劇を映画的に解体、再構築するという手法ではなく、舞台をそのまま壊さぬように
劇場から実際の場所に持ち出すという手法だからだ。　ラース・フォン・トリアーの
『ドッグヴィル』の様な、映画的実験をしているわけではない。
　
　会話が始まると、均質化されたセリフが淀みなく流される。最初は面白い試みだと思う
のだが、舞台特有の癖のある（いや、癖の無い、か）セリフが、現実の風景の中で交わさ
れることの違和感が、やがてつのってくる。
　何しろ、この映画化にあたって一切の脚色はされていない。原作戯曲をそのまま、
一字一句変えずに使っているのだ。

　これが、あの石井聰互の演出とは驚くが、『爆裂都市』から３０年、ここ１０年はほとんど
商業映画も撮っていないようだし、作風がリセットされていても不思議では無い。
（いい意味でも、わるい意味でも）まるで２０代の若者監督のような画面。石井聰互の
演出だなぁと思う瞬間は、ほぼ、無い。


　岸田國士賞受賞の原作戯曲『生きてるものはいないのか』は、ありふれた日常の風景
の中に、唐突に、無意味に、死がおとずれる不条理劇だ。人が死ぬことに、原因も意味
も求めず、現象として描いていく。ただ、個人的な感想を言うと、登場人物は当然ながら
なぜ死が蔓延するのかを考えるし、反応もする。（つまらないことに、都市伝説とかウィルス
が漏れたんじゃないか…なんて設定を入れてくるので、どうも鼻白む）　こうやって映像化
した時には、シャマランの『ハプニング』の劣化版のように見えてしまった。
　できる事ならば、本当に日常的な現象、歩く、座る、そして死ぬ、という様なものとして
徹底して不条理に描けば、どうだったろうかと思う。

　死というものを、戯画的に軽く扱ってみせることで、観るものの死生観に揺さぶりを
かけてくる。生とは死とは、こんなに軽々しいものではないと思うか、ああ、本当の所は
この程度のものに成り下がっているじゃないかと思うか。そおゆう物差しには成りうるかも
しれない。

　「生きてるものはいないのか」という問いかけは、「じゃあ、誰が本当に生きているって
ゆうんだい？」という、冷たい疑問なのかな。

現代の若者の会話劇 上手くいかないコミュニケーションが不穏な
鉄道事故や病院地下の都市伝説を背景に進行する 石井岳龍の
思い切って洗練された舞台演出 画面 断続する電子ノイズ いや
ロックなのかなノイズ処理

現代版「家族ゲーム」の気配 染谷君が松田優作なのか しかし
21世紀になって蔓延るのは愚民化した怠惰な大衆ではなく
見えない暴力性なのだ 妊娠 結婚式が対置される

洗練されているようで「逆噴射家族」や「サンダーロード」よりも
暴力的な世界を生きている つうのが石井のテーマなのだろう

35分で死者が出るが それはどうなのだろうか 冒頭からここまでは
基本三人の対話が面白く見れていたのが 死者を出すと 急速に
映画は言わんとするところの説明解明に 意味をひたすら到達点に
する按配になってしまう

主人公がストレンジャーとして世界を再活性化出来ずに 誰でもが
ストレンジャーで またはストレンジャーを内に抱えるように
なってしまった世界は自滅するしかないのであろうか みたいな
お話なのかしらね

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不思議な映画でした・・・と思ったら、これ舞台劇の映画化なんですね。
役者さんたちの演技はごくごく普通というか
作りものっぽさが無い感じで、すごく自然なんですよね。
ごくごく普通の日常をだらだらと描いていると思ったら、
突然ばったばったと人が死んでいきます。
その死に様は、なんだかこっけいで愉快。
死んでいく様を愉快なんて、不謹慎なんだけど、これが笑えちゃうんです。
作者の意図としては、生きている限り、誰にでもいつか死は訪れるもので、恐るるには足りないということでしょうか？
でもやっぱり、こんな風に何の前触れもなしに、原因もわからず死にたくはないです(~o~)
けっこうぐいぐいと引き込まれた割には、結論は何も出ないラストにもやっと感ありでした。

で、脚本の辻褄合わないところ発見。
何回か巻き戻して確認したけど、婚約者である男が死んでいる横で、私も死ぬといった女に対して
元カノが、「あなたこの人のことよく知らないでしょ？知らない人とそんな風に死ぬの？」といいます。
それに大して、婚約者が「知らないからこそ愛してる」みたいなこと言うのですが、
知らないのに婚約していて、結婚式の日取りも決まっていて、招待客も決まっているってどういうこと？
知らないのに、勢いで婚約しちゃったってことか？
ま、こんな細かい演出、どうでもいいんですけど、気になったものですから(^_^.)

監督は石井聰互。知らなければ20代前半の監督だと言われても疑問に思わない程若々しい演出（良い意味でも悪い意味でも）です。絶妙に空疎さを保つ台詞の応酬。
真剣なのかギャグなのか判別付かぬ素晴らしい異化効果の数々。ギャグに関してなら「逆噴射家族」より優れていると思います。特に村上淳の歌には大笑いしましたね。
さわやかに描かれる世界の終末。こんな風に誰も状況を把握できないまま破局は訪れるのではないでしょうか。そんな気にさせられる映画です。

いい若手俳優をこれだけ発掘し得たことも賞賛に値しますね。

シュールなのかつまらないのか微妙だ。
解説文だけ読んで感染系のホラーだと思ったら大間違いなのでご注意を。

確かに個性的な監督で逆噴射家族なんて大好きだけど、もう時代じゃないっていうのかなぁ。
芸大の卒業制作の長尺版の雰囲気が漂う。

こういう語りで魅せる群像不条理劇はある程度ギャグ要素がないとちょっと苦しい。
この手のジャンルも嫌いじゃないけど、とにかく淡々とセリフを聞いて、淡々と鑑賞して終わりって感じでしたね自分は。