クロッシング

原題はずばり、「ブルックリンの警官」。
その原題の通り、全く接点のない３人の警官の日常が描かれています。

定年退職を１週間後に控えたエディ（リチャード・ギア）。
とにかく無難に残された時間を過ごし、引退生活にはいることを望んでいたエディだが、新人研修をまかされることに。老いても素敵なリチャード・ギアですが、往年のファンとしてはあまり見たくないようなシーンもあり。

長年潜入捜査官としてギャングの一味に加わっているタンゴ（ドン・チードル）。抜けたいという願いはなかなか聞き届けられず、さらに過酷な任務が与えられて、彼の焦燥は頂点に達する。「ディパーデッド」でレオナルド・ディカプリオがやっていたような役です。

麻薬捜査官のサル（イーサン・ホーク）。一体何人子どもがいるのか、確認できないくらい子沢山なのに、妻は双子を妊娠中。その上、妻のぜんそくが悪化し引っ越したいと思っているが、お金の工面ができず、ついに悪事に手を染める。

終盤、３人の警官は同じ事件の現場でクロスします。このクロスがあまり有効ではないのが、ちょっと残念でした。さて、生き残るのは誰か？

それにしても、これほど大変な仕事なのに、年俸が２万ドルそこそこというのは驚きです。
それじゃ、腐敗があっても仕方ないなと思ってしまいました。

３人の各ドラマの帰結が最後に交差するというだけで、３人の人生が交差するということもなく、原題の「ブルックリンの警官たち」で良い気がします。
行き場のない苦悩を抱える３人の警官のクライム・サスペンスです。
退職を目前にしたリチャード・ギア演じるベテラン警官エディは、長い警官生活の果て、腐敗しきった世の中に絶望して無事に定年を迎えて年金生活に入ることだけが望み。家族想いの麻薬捜査官の刑事サル役のイーサン・ホークは、優秀な刑事だけれど、もうすぐ双子が生まれる上に、妻は家のカビが原因で喘息持ち。新居に引っ越そうにも先立つものがない。そして潜入捜査官として、自らの人生を犠牲に捜査を続ける刑事・タンゴ役のドン・チードルは、自分を偽る毎日に、心身ともに限界に達しています。
絶対的な正義と悪の定義を見失ったＮＹを舞台に薄汚れた３人の刑事は、いわば「クラッシュ」のハードボイルド版。善と悪の境界で綱渡りする役者たちの演技がとにかく上手く、その一挙手一投足が緊張感たっぷりで引き込まれました。

任務に忠実な者が己を制御できなくなり、やる気のなかった者が退職した途端に警官としての使命感に目覚める皮肉。
３つの錯綜したドラマが正義の裏に潜む影を深く訴えかけています。特に、事なかれ主義で娼婦に入れあげるギアの女絡みの勇断が泣けました。

妻の喘息が心配だから、環境のいい場所へ引っ越したい
引越しには金が要る。
そのためには手段を選べない状況へ
追い込まれることもある。

意に染まぬ潜入捜査でも、仕事は仕事。
割り切って遂行しているつもりでも、
心通じる人間と出会うこともある。
心があるから。

可もなく不可もなく勤めてきた数十年。
定年退職までたった１週間。
ここへきて、今更手柄など望みはしない。
入職時にあったのかもしれない熱意は冷め果てて、
ただ平和にやり過ごしたいだけ。

そんな３人の数日間。
まったく別々に流れて見える時間だが、微かにクロスしている。
同じ組織に身を置けばこそ、
本人たちが気づかないところで、
服の裾と裾が触れ合ったか触れ合わなかったか、
それくらいの僅かな接点。
確かなのは、職業人である以前に人間であるということ。

人間…だから、
辛い。
人間だから、悩み、苦しみ、迷う。

良心がある。
それを強く求められる職務だから、潜在意識に刻みつけられている。
理性もある。
当然、本能もあるけれど、それを制することが前提の職務だから、
真摯であろうとするほど、呑みこまれるか、壊してしまいたくなる。
そうでなければ、自分が壊れてしまうから。

転がり始めてしまったときから、
用意されていたように思えるラストでした。

イーサン・ホーク、リチャード・ギア、ドン・チードル、ウェズリー・スナイプス
主役級の俳優が四人もでてきてしまっていてそれぞれのキャラクターをしっかり描けていなくて半端になってしまっているような気がします

内容はイーサン、ギア、チードルの三人の警官のそれぞれの苦悩を描いていてダークな雰囲気とハードボイルドタッチでおもしろかったです

イーサンはアイリッシュ系の仲間を振り切り暴走
ギアは枯れ切った感じだがやはり正義感が強くて最後に活躍
チードルは潜入捜査官で仲間のギャング、スナイプスに肩入れしてしまって・・・

特に誰とも言わず四人ともカッコよかったです

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　三人の警官の話。定年間際でやる気なしのリチャード・ギア、お金がなくて困ってるイーサン・ホーク、潜入生活に飽いたドン・チードル。で、この三人の「正義と人生が交錯する」というので、平行したお話が最後にまとまるモジュラー型なんだなあと思って観ていると、その通りなので拍子抜けしてしまった。それも必然、と感じるよりも「無理やり感」が漂っているのに、作り手は運命的・悲劇的な展開だと盛り上げるようなカット（警官同士がそれと知らずにすれ違ったり）や、音楽で荘重に盛り上げようとするんですが……シラケました。
「定年」の話では、ダメ警官の絶望（銃を口にくわえるとか黒人娼婦に商売よって言われちゃうとか）→最後にちょっと見せた意地（誘拐された女性を偶然発見）って、ベタすぎてびっくり。ギアはダメ警官ですからショボくてオーラがないのはいいんですが……。
「悪徳」は「子だくさんなのに家がカビだらけで困ってる」という設定に何だか苦笑しちゃいましてね。そりゃ大変なんでしょうけど、犯罪者を殺して金を奪うこともいとわないイーサン・ホークの悩みが「カビ」って……ホーク自身のやつれた感じは悪くないと思いますけど。
「潜入」はドン・チードルよりも、ウェズリー・スナイプスのギャングがかっこういいです。あんな簡単に殺されちゃうのがおかしいと思うくらい。この映画で一番かっこういいですね、スナイプスは。チードルの怒りはごもっともで、彼を使うことになるＦＢＩの女だったががひどい奴で、あんまりステロタイプにひどい奴なのでここも苦笑ものです。
　同じ監督の『トレーニング・デイ』が好きな方はがっかりするかもしれませんね。アントワン・フークワは、ちょっと視点を取り間違えているんじゃないかと思います。
　これ「運命の物語」になってません。三人のタイプ違いの警官を無理に一現場に集めたって映画になってしまってます。30点。