デッドライン

　タイの映画事情はよく分からないオレが、ちょっと興味が湧いて観てみた本作。いや、なかなか観応えのある骨太アクションじゃありませんか。これは掘り出し物です。
　１９９７年にタイで実際に起こった通貨危機。それによる経済の混乱などで、政権が交代。新政府がＩＭＦ（国際通貨基金）からの多額な借入金を２年以内に全額返済するという方針を発表したことから、これに反対する勢力が元特殊部隊の兵士を使って実力行使にでる・・・。
　テログループのリーダー、ナウィンを演じるアムボーン・ラプムーンと、それを阻止せんと奔走するテロ取締り部隊のリーダー、パコン警部を演じるチャッチャイ・ブレンパーニットはタイの誇る２大スターだそうで、確かにさすがと思わせる存在感を見せつけてくれます。この二人が屋上で対峙する場面は思わず『インファナル・アフェア』を思い浮かべずにはいられません。このへんがタイ版『インファナル・アフェア』なんて呼ばれる所以でしょうか。
　全編を覆う銃撃戦もなかなかの迫力、途切れない緊迫感に最後まで目が離せません。

　ちょっと目先を変えてみたいときには、うってつけの一作ではないでしょうか。

　ひとことつけ加えると、ナウィン役アムボーン・ラプムーンはサングラスをかけると、ケビン・ベーコンになります。ホンマそっくり。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　タイが国を挙げて映画製作に力を入れていることが良くわかるアクション大作。火薬使用量や投入した撮影（破壊）資材を見れば、香港やアメリカのアクション映画に匹敵するくらいだが、逆に香港、アメリカアクション映画の真似とも言え、タイ映画としての独自性はほとんど見られない。確かに、アクション性は高いのだが、脚本、編集ともにかなり稚拙な感は否めない。
　本作のストーリーは甚だ理解困難だった。タイ国民ならば理解できたのかも知れないが、冒頭の戦闘シーンからして国軍なのか合成麻薬組織か警察かさっぱりわからない。皆同じような服装というというのもあるが、登場人物の説明とその所属がほとんど解説されないのだ。さらに、話が進んで旧国軍兵士ナウィンがテロのリーダーに仕立て上げられる過程も、首相派と反首相派の対立も、国軍と警察の対立も、あんた誰？てな感じで極めて説明不足。結局、ラストシーンまで不可解なモヤモヤのまま行ってしまい、挙げ句の果てに（多分）どんでん返し的シーンが全くの意味不明。国軍の大尉に銃を突きつけていたのは誰？、強盗の逃走用車輌に落下してきた死体は何？など、とにかく晴れない疑問点は多い。これほど、ストーリーが理解できず、かつ製作者の意図が理解できない映画も珍しい。
　２，３回視聴すれば理解できることも多いかも知れないが、それにしてもそこまでして見るほどの映画ではないかな。どうも、独自のタイ色を出せずに、外国映画の影響を変な意味で引きずっている。もう少し頑張って欲しいなタイ映画。おまけだが、パコン警部（少佐）役のチャッチャイ・ブレンパーニットはなんだか藤竜也にしか見えなかった（笑）。

テーマはいいけど、全編にわたる重々しい音楽が興ざめで途中から見続けるのが辛く、最後にはもううんざりでした。映画にとっていかに音楽が重要なのかわかる反面教師的な作品です。