２５時

スパイク・リー監督にしてはちょっと毛色が違う作品なのでは？　とまず観ながら思いました。
モンティのすごく個人的な葛藤や想いをベースに、彼を取り巻く父親、恋人、友人を描いた作品。

モンティが誰かの密告からヤクの売人として告発され、7年間服役することになる。
その服役が明日に迫ったとき、モンティはどうするのか…
というような予告だったので、結構ハラハラするのかな？　と思ってたら、淡々と語られる作品だったのでびっくりしました。
でも、その淡々としているところが反対によかった。

特にモンティの幼なじみの2人の友人。
バリー・ペッパーとフィリップ・シーモア・ホフマンの2人が演じているというところにもセンスを感じずにやまないのですが、
彼らのやりとりがすごくリアルでした。
特に、バリー・ペッパー演じる彼は、モンティの服役に関して「自業自得だ！」とフィリップ演じるもう一人の友人に強気で話しているのだが、
実際にはそんな冷たい気持ちではなく、モンティの出所を必ず7年間待っているから…という友人としての想いをはき出さずにはいられない…。
そんなところに切なさを感じました。私もきっと同じようなリアクションをしてしまうだろうと思ったから。

そして、この映画のテーマにはほとんど関係ないのだけれど、
グラウンド・ゼロから夜空にはなたれた2本のサーチライトの光の帯や、バリー・ペッパーとフィリップー・シーモア・ホフマンが語る窓の外に広がるグラウンド・ゼロの風景などに、スパイク・リー監督のニューヨークに対する想いが凝縮されているような気がしました。
すごく愛してるんだな…と。

とにかく、淡々とだけれど、すごく強く、人間の想いや切なさ、愛を感じることができた映画でした。

ただ、アンナ・パキンの変貌ぶりには？？？？？って感じでした。
ちょっとイヤだったな…。彼女じゃなくてもよかったのでは？　って感じ。

それは置いといて…。エドワード・ノートンはもちろん、主演3人の演技だけでも必見。
特にエドワード・ノートンが鏡ごしにあらゆる怒りを吐露するところは凄まじさを感じました！　ため息モノです。

さすがのスパイク・リー監督作です。人間の本質、深遠に迫ってました。映像と音楽が、すばらしい効果。胸の奥に染み渡ってきます。服役までの２５時間。ある意味、残された自由な時間。彼は何を思い、何を悔やんでこの時を過ごすのだろう。人生の分かれ道に立ち、胸の奥の怒り、NYに住む様々な人々にまで怒りを馳せる。人類の坩堝でもあるNYの街に。深い傷を負わせた者に。E・ノートンが鏡に向かって怒りをぶつけるシーンは、鬼気迫る演技でした。残る２時間に、共に過ごした親友とのクライマックスシーンから、涙があふれて止まらなかった。ラスト、車で走りながらの父親の語りと、もしや？と思わせる感覚は、見事！泣きながらしびれました。出演者全てに賛辞を送りたい。超必見です。

犯罪を犯した後の罪の重さ。
それぞれの思いが重なり合い、なんとも言えない切ない映画でした。
後で後悔しても、もう時既に遅しって感じですね。

ヤクの売人で保釈中の主人公が収監されるまでの２５時間が描かれています。特に変わったイベントとか派手な演出は全くありません。ただ収監前の犯罪者の一日が描かれているだけです。ただただ淡々と・・・。

２５時間後に収監されることが決まっているエドワード・ノートン演じる主人公に残された選択肢は「服役」「逃亡」「自殺」の３つだけ。残されたわずかな自由な時間を利用して全てのことにケリをつけていきます。それは瀕死の重傷の状態から助けた犬を預かってもらうことであったり、古くからの親友との送別会であったり、父親との最後の食事であったり、自分を裏切ったヤツが誰なのかを探し出すことであったり、愛する彼女とのことであったりと色々です。その中の描写が凄いとかおもしろいとかそういうのはあまり感じませんでした（＾＾ゞ。ただただ淡々と描かれていくだけなのです。静かに静かに・・。

そしていよいよその時が来てしまいます。するとどうでしょう？何故だか涙が止まらなくなりました。自分でも何に対しての涙なのかよくわかりませんでした。とにかく切ないのです。主人公はヤクの売人であり犯罪者なのですがラストがとても切ないのです。切なくてたまらなくなったのです。これをどう説明してよいやらわかりません。全ての人がそう感じるのかどうか保証できませんが少なくともおいらはそうでした。途中眠くなるぐらいなんでもないストーリーだったのですが・・最後には涙でした。そして本当の最後には思わず微笑んだかと思えばその微笑みが幻であることに気づかされまたまた切なくさせられるというちょっと「えっ？」というラストになっていました。おいらはスパイク・リー監督の術中にはまったのかもしれませんね（＾＾ゞ。暗い作品ですが予想外におもしろかったです（＾＾ゞ。

この作品を見終わってふと行定勲監督の「きょうのできごと」という作品を思い出しました。何気ない一日を描いた作品です。どこか似ているような気がしました。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

お似合いのふたりです。
互いにまたよく似た容姿で、
ドイルがノートンに、ノートンがドイルに。

ドイルの悲しい鳴き声で始まります。
後から聞くとモンティの悲鳴にも聞こえます。
迫真の演技…姿で語れる美しい闘犬です。

ロシア訛りでファニーな英語のコースチャの間違いを、
モンティが訂正します。
「Whatever can go wrong will go wrong.
『悪くなるものは悪くなる』
ドイルでなくてマーフィーの法則だ」
だから、
マーフィーでなくてドイル…
彼にぴったりの名前です。

「あいつを助けたのは、おれの人生で最もすばらしいことだ」
ジェイコブにドイルを頼む時、
モンティは言います。
助けるために撃ち殺さなかった、のでなく
『生きたがっていたから殺さなかった＝助けた』
生き続ける、ドイルの法則。

名シーンは多々ありますが、
終盤、モンティの頼みを結局きくことになってしまい、
殴り続けるフランクの背景から音が消えていきます。
ただ、ドイルの吠え声は耳に残り、
音が消えても響いてきます。
好きなシーンです。
感情が過度に絡みあった時、
頭の中が真っ白になって音が遠のいていくことありますが、
それを映像で見事にみせてくれました。

ラスト、ひどい形相のモンティを
”Fuck you!”な人々が笑顔で見送ります。
切ない連なり。
生物学的には同じ種でも、
それ以外は、異文化、異民族…
同じ星に住む異星人達。
共存は、互いに分かり合うことなど無理なことだと笑いかけてくるようです。

ツインタワー崩壊以前から、憎しみの連鎖は続き、
さらに鎖は太くなり、『リダクテッド』へ。
この連鎖は年単位では終らないでしょう。
悲観的でなく、ＤＮＡを繋ぐ無邪気な我が子ですら、
現実的にそれを感じます。

"僕のものは僕のもの”
素直に単純に、
"欲しいものが欲しい”彼らです。
同じ過ちをあっけなく繰り返すだろうと、
思ってしまいます。

ジェイコブを連れたドイルにほっとします。
「クールなふたり」です。

ツインタワーがまだあるあちらの世界。
モンティのその後の家族のいるところ？
架空なのはこちら側かもしれません。
『フレンジ』シーズン２でそれは、
どうなるのでしょう。
楽しみです。