戦場に咲く花

半年もいても分かり合えない日本人と中国人。
横暴な日本人に、日本ではやさしいイメージの緒形直人でした。
つい、『いい人』になるんじゃないかという期待で見てしまって、結局、臆病者で、傲慢なまま死んでしまった。。

でも言葉が通じないところに一人でいて、列車に『だれか降りてきてくれ!』としがみつく場面、浩太郎の人間性が如実に現れている気がします。

なんかサスペンスの要素もあって、そこそこ楽しめました。

1944年太平洋戦争の末期、日本は中国大陸で敗色濃厚となっていた。満州鉄道のとある駅で、療養に訪れていた菊地浩太郎中尉（緒方直人）が死亡した。駅の住民は駅長夫婦と下男、子供だけだった。
菊地中尉は乗馬の名手で日本の英雄でもあった。日本軍はこの事件を中国人による殺害として必死に犯人を捜そうとするのだが…。

「鬼が来た！」と似た設定になっています。日本軍の横暴さは、この作品では比較的ソフトに描かれています。それほど残虐なシーンはありません。菊地中尉がなぜひまわりの種を育てようとしたのか、などわかりづらい点もあります。どうも脚本が中国側にあるような感じがしました。「皇軍の英雄が自殺ではカッコ悪いので中国人の仕業にしよう」という点がテーマです。主人公が誰なのかもいまひとつ不明でした。

日本では「いい人キャラ」のイメージが強い、平田満、緒形直人の二人だが、本編では、中国人を足蹴にする冷徹な日本軍人を演じている。
菊地（緒形直人）の死に対し、どの中国人にも殺す動機があったという、それぞれの展開は「羅生門」をイメージさせる。が、だれが犯人という謎解きのミステリーものではない。一人の、臆病で、絶望感から挫折した日本人の死に対し、自分たちが起こしたわけではない戦争のために関わるをえなくなった中国人家族の不条理な運命。そして、おそらくは墓場まで持っていくであろう真実に、良心の呵責を背負いながらの余生を送る日本軍人。歴史に「たら・れば」を不要だが、あえて、もし戦争がなかったなら、と思わずにはいられない。

戦時中の中国を舞台にした、日本人兵士と現地の中国人という設定だけでもハッピーエンドはあり得ないだろうなぁと観る前から感じてしまう。実際にもし、ハッピーエンドで終わったなら、中国人が日本を見る目が今以上に厳しくなり、それでなくても最近は日中関係がギクシャクしてるので、日本も中国もそういった展開のドラマは作りたくはなかったんだろうと推測する。つまりは奇麗事の映画を作っても誰も信用しないし、中国人からすれば、そんな事はあり得ないと言って憤慨するからだ。だから、この時代の物語の展開は日本人主導で中国人は理不尽な扱いをされ死を迎える。こういう暗い終わり方をする方が信憑性という面からも両国間の親密感が損なわれずに済むんだ、と納得しなければならないという日中合作戦争映画の宿命とも言える物を背負った傑作の一つである。

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この題名からまず私がイメージしたのは「凄惨な状況にあるたった一つの救い」でした。なので日本鬼子や反日映画といったジャンルの先入観は持たないようにして見ました。

緒形直人が演じる日本人の将校は、ひまわり畑を育てたり連れてきた愛馬を可愛がったりする一面がありますが、中国人に対しては冷酷な仕打ちをします。
一方でこの人間の暴力は、人格の持つ弱さや脆さの表れといったような描かれ方をされています。

印象的だったのは、自分で育てたひまわり畑のひまわりを突然刀を振り回して次から次に切ってしまうシーンです。自身の弱さを癒すために花を育てたのに、目の前に満開に咲いている花を見て、彼の孤独感やみじめさが一層増してしまったかのように思えて哀れでした。育てた美しい花でさえ遠く感じられて、自分の敵のように思えてしまったのでしょうか。

彼の人格的な弱さからくる暴力に、翻弄される中国人達が不憫でなりませんでした。特に力がない子供にする行動がひどくて、こればっかりは見てる私も怒りがわいてきました。
暴力とは、戦争とは何なのか、今の時代にも続くテーマに深く考えさせられました。