野火 / 塚本晋也
全体の平均評価点: (5点満点)
(27)
解説・ストーリー
大岡昇平による戦争文学の傑作を「鉄男」「六月の蛇」の塚本晋也監督が執念で映画化した衝撃の問題作。凄惨を極めた太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、一人の敗残兵が極度の飢えに襲われた中で体験する戦場の狂気とその地獄絵図を通して、人間の尊厳をめぐる問いと戦争の本質に迫っていく。主人公は塚本監督自らが演じ、その他のキャストにはリリー・フランキー、中村達也、森優作。日本軍の敗北が決定的なレイテ島。結核を患った田村一等兵は野戦病院行きを命じられ、部隊から追い出される。しかし病院でも追い返され、舞い戻った部隊でも入隊を拒否される。行き場を失い、激しい空腹に苦しみながら果てしない原野を彷徨い始めた田村だったが…。 JAN:4988105971479
大岡昇平による戦争文学の傑作を「鉄男」「六月の蛇」の塚本晋也監督が執念で映画化した衝撃の問題作。凄惨を極めた太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、一人の敗残兵が極度の飢えに襲われた中で体験する戦場の狂気とその地獄絵図を通して、人間の尊厳をめぐる問いと戦争の本質に迫っていく。主人公は塚本監督自らが演じ、その他のキャストにはリリー・フランキー、中村達也、森優作。日本軍の敗北が決定的なレイテ島。結核を患った田村一等兵は野戦病院行きを命じられ、部隊から追い出される。しかし病院でも追い返され、舞い戻った部隊でも入隊を拒否される。行き場を失い、激しい空腹に苦しみながら果てしない原野を彷徨い始めた田村だったが…。 JAN:4988105971479
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「野火」 の解説・あらすじ・ストーリー
解説・ストーリー
大岡昇平による戦争文学の傑作を「鉄男」「六月の蛇」の塚本晋也監督が執念で映画化した衝撃の問題作。凄惨を極めた太平洋戦争末期のフィリピン・レイテ島を舞台に、一人の敗残兵が極度の飢えに襲われた中で体験する戦場の狂気とその地獄絵図を通して、人間の尊厳をめぐる問いと戦争の本質に迫っていく。主人公は塚本監督自らが演じ、その他のキャストにはリリー・フランキー、中村達也、森優作。日本軍の敗北が決定的なレイテ島。結核を患った田村一等兵は野戦病院行きを命じられ、部隊から追い出される。しかし病院でも追い返され、舞い戻った部隊でも入隊を拒否される。行き場を失い、激しい空腹に苦しみながら果てしない原野を彷徨い始めた田村だったが…。 JAN:4988105971479
「野火」 の作品情報
「野火」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ
野火の詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
87分 |
|
日:ドルビーデジタル5.1ch |
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
PG-12 |
DB9878 |
2016年05月12日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
30枚
|
0人
|
0人
|
野火の詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
87分 |
|
日:ドルビーデジタル5.1ch |
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
PG-12 |
DB9878 |
2016年05月12日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
30枚
|
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ユーザーレビュー:27件
「野火」【1】 大岡昇平の原作について(前)
塚本晋也監督の「野火」(2015)を見て、衝撃を受けた。
けれども、その映画だけの感想を書くのは、不可能だ。
大岡昇平(1909〜1988)の原作(1951)があり、市川崑監督(1915〜2008)の映画(1959、大映、白黒、105分)があり、
塚本監督もそれを読み、観て、映画を作ったのだから、自分も同様にしなければ、評価できない。
大岡昇平の原作は、特異な作品だ。戦記ではない。
戦争文学でさえ、ないのかもしれない。
こんな作品は、世界中に「野火」一作しか書かれなかった。
大岡昇平は、1944年3月、35歳の年、召集され、同年6月フィリピンのミンドロ島へ守備要員として配置される。
同年12月、米軍が上陸。部隊は、攻撃を逃れ、山中へ籠る。
補給路を断たれた日本軍は、飢餓に苦しむことになる。
そして、散り散りになり、ジャングルを彷徨する。すでに、軍としての組織は崩壊している。
翌1945年1月に、米軍の捕虜となり、フィリピンのレイテ島(ミンドロ島より南東)の俘虜収容所に入る。
同年8月15日に終戦の詔勅があり、敗戦。同年12月、帰国。
1948年、まず「俘虜記」を発表。
俘虜生活の中で、そこに収容される同胞の軍属の人間模様、変容を描く。管理する米軍の将校たちの性格分析までも行っている。
俘虜側で、思想洗脳(オルグ)に踊らされた連中の豹変ぶりは、戦前も戦後も変わらない軽薄さだが、大岡昇平は、冷静な視線で、
生きるためにやむを得ないことだった、と見ている。
オルグを指揮した男が、戦後、地方議員選挙で落選したことまで追いかけている。
煙草などの嗜好品と時計の交換による経済格差。
敗戦前に俘虜になったグループと、終戦後に俘虜になったグループとの軋轢。
戦前と戦後で、何も変わらないではないか、ということを先見している。
レイテの俘虜収容所は、戦後の日本社会の縮図なのだ。
「野火」の、もっとも恐ろしい場面。
そもそも、なぜ日本軍が、南方の島々で、敵と戦う前に、飢餓に追い込まれなければならなかったのか。
この問いを、大岡昇平は、「レイテ戦記」(1967〜1968)で検証する。
大本営参謀本部の無策。
戦争は補給であるという古典的な常識を無視して、「いけいけ」で戦場が拡大する。
死んでいったのは、将校以下、現場の兵隊で、参謀は戦後も、のうのうとして生きて、また戦争を画策しようとする。
関東軍(満州)の服部卓四郎、辻政信。この二人はノモンハン事変で、ソ連の戦車に、手榴弾で戦わせる。
大岡昇平は、1967年3月に、フィリピン戦跡訪問団に同行し、ミンドロ島へ行く。
翌1969年、「ミンドロ島ふたたび」を発表。
「野火」の本質的なテーマは、「生きるか死ぬか」ではなく、「生きるためにどこまで人間の領域を越えるかどうか」である。
この問いは、悲劇のなかに生きる人間の問いかけだ。
「ハムレット」が迷ったように、自分が生き残るために、人間としての信義・信条を捨てるか、死んでそれを守るかということであろう。
「捨てていい」というのが、新約聖書の世界観である。
「信義・信条」は、イエスが死んで守ったのだから、あなたがたは、原罪を背負って、生きるがいい、ということと僕は解釈する。
「野火」の主人公にとって、二段の試練がある。
第一段階は、自分が生きるために人を殺す、ということである。
戦争という状況において、戦闘員どうしの場合、それは罪の意識を背負うことはないだろう。
「野火」の主人公は、非戦闘員である島の女を射殺する。
飢餓のためではなく、「マッチ(燐寸)を貸してくれ」という彼の言葉が理解されなかった。
日本の兵隊は恐いと思っていたであろう、女は、悲鳴を上げ、パニック状態になったとき、主人公は銃の引き金を引いてしまう。
この罪を、彼は、まず背負う。
第二段階は、飢餓を脱するために、人間が人間を狩り、殺し、その肉を食うということである。
主人公は、朦朧として「猿の肉」を食べさせられ、目覚めたあと、「猿」は、人間の肉であることを知る。
彼は、それによって生き延びた。
それが、死んだ、敵兵の肉であっても、味方の肉であっても、死んだ人の肉であることは、許されると思う。
罰を受け、獣(けもの)に落ちるのは、「狩り」の行為だろう。生きた人間を殺して、その肉を食らう。
おそらく、狩る、という最後の段階が、この原作の電極がもっともショートする場面であろう。
彼は、そこで、白い光を見て、卒倒する。「狩られた」肉は食べたが、「狩り」に加わる直前に卒倒したのだ。
原作の主人公は、帰国後、この小説を、精神病院で書いている。
このレビューは気に入りましたか?
3人の会員が気に入ったと投稿しています
戦争が生み出す人間の狂気
なんていう映像だろう。
低予算のためなのか、映像は粗いし、音声もクリアではない。
その粗さと聞き取りづらさがより鬼気迫る映像として
見るものの心を捕らえてしまう秀作だと思う。
どなたかのレビューにも書かれていたように、戦争とは敵との戦いだけでなく
同胞との戦い、自分との戦い、理性と本能の戦いでもあるのだということを
改めて痛感させられた。
人は極限状態になるとこうも壊れてしまうものなのだろうか。
原作者である大岡昇平の実体験に基づいた話なのだろうから、なお更恐ろしい。
戦争とは、人間らしい生活を奪うだけでなく、人間の理性を壊して、
人としての尊厳はなくなり、人では無くなってしまうのだということを、
ラストシーンでまた痛感させられるのだ。
戦争は絶対ダメ!絶対してはいけない!
塚本監督の戦争に対する熱い思いがひしひしと伝わってくる作品。
俳優人の狂気の演技も凄かった。
リリーさんはリリーさんとは気づかないほど別人だった。
このレビューは気に入りましたか?
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NUDE
戦争はヌードだ
これまでの社会で身に着けていたものを
一枚一枚
脱いでいかなければ
人など殺せはしない
脱いで
脱いで
身軽になって
殺して
罪悪感を着込み
その重さにだるさを感じ
いつのまにかまた脱ぎはじめる
そうやって厚着していたものを
どんどん
どんどん
脱いでいって
行きつく先は死
脱いで脱いで
裸になった先に死があるのではなく
どうやら死は
裸になったときに再び着込むものらしい
死
いや、死の恐怖を着込む
着ては脱ぎ
着ては脱ぐ
そしてたどり着くのは
全て脱いだ
生きたいという裸の欲望だ
その欲望の前では
倫理も道徳も理性も意味を成さなくなっていく
生きたい
生きたい
だから殺して
だから喰らう
その時の自らのクレジットは
日本人でも
階級でも
故郷の地でも
名前でも
性別でもない
生きたいとう
生存本能により二足歩行する
ただの生物だ
たとえそれが生きた屍だとしても
だったらどうした
私は生きている
製作費の問題だろうか
映画の質感ではなく
音声も聞き取りにくくて
イライラもするのだが
戦争の愚かさと恐ろしさ
その虚しさだけは
どうしようもなく伝わってくる
フィリピン・レイテ島の惨状
その多くが餓死者という酷すぎる事実
戦争はやったらいかん
このレビューは気に入りましたか?
2人の会員が気に入ったと投稿しています
地獄の迷走
投稿日:2017/06/04
レビュアー:こうさま
大岡昇平原作の小説を2014年に映画化した作品で極限状態に追い込まれた人間が獣と化してゆく様を強烈な映像で描いている。
舞台は太平洋戦争末期のフィリピン、レイテ島、一等兵の田村は肺を患い上官から野戦病院へ行けと命ぜられるが受け入れてもらえない、部隊に戻ると殴られて追い出される、部隊と病院をフラフラと彷徨う田村は亡霊のよう。
既に日本軍は組織としての体制と機能を失い生き残ることだけを考える暴徒化した集団になっていることがうかがえる。
敵軍の砲撃で野戦病院は吹っ飛び部隊は壊滅、死体のならぶジャングルを、それでも軍令で指定された集合地へ向かう餓鬼の集団、飢えを満たすために理性も捨て獣と化してゆく地獄の様相があまりにも凄まじい。
台詞よりも強烈すぎる映像が全てを物語っている。
ちよっと食欲を無くしてしまいそう。
田村一等兵の視点から見た地獄図、戦争の狂気というよりも極限状態に追い込まれた人間のとる行為は行き着くとこまで行き着いた選択となってしまうのだろう。
戦争に限らず遭難や漂流という極限状態でも同じような行為が行われることは否定できまい。
ドキュメンタリー風に進行する映像があまりにも強烈すぎて、本作の発するメッセージ性が希薄になっている感じがする。
これは反戦作品ではないが、こんな地獄絵図が過去にあったということは決して忘れてはならないと思う。
このレビューは気に入りましたか?
2人の会員が気に入ったと投稿しています
観なきゃよかったと思うくらい衝撃
レビューの書きようが無いくらい衝撃でした!
塚本監督演じる田村二等兵は本職が物書きさんですが、
この映画のレビューを書く(彼にとっては実体験ですが)のは難しいでしょうね〜
まずびっくりしたのが、テレビ番組の再現フィルムみたいな安っぽい映像で
初めはこの映画の「程度」を疑ってしまいましたが、
最終的にはそれが良かったと思います!
あの映像のおかげで、映画が、なんか、スクリーンの出来事ではなく、
自分の皮膚のすぐ外で起きている事象であるかのような感覚になりました。
あの場にいたら、俺も今の「俺以外の何か別のモノ」に変わってしまうのでしょう…
同じ題材だと『ライフオブパイ』がこの映画の対極にあると思いました。
衝撃作です!
うまく言えませんが観た方がいい!
※でも、奥さんや子供と一緒には絶対に観ない方がいいと思います!
このレビューは気に入りましたか?
2人の会員が気に入ったと投稿しています
ユーザーレビュー
「野火」【1】 大岡昇平の原作について(前)
投稿日
2017/05/27
レビュアー
ちゅく
塚本晋也監督の「野火」(2015)を見て、衝撃を受けた。
けれども、その映画だけの感想を書くのは、不可能だ。
大岡昇平(1909〜1988)の原作(1951)があり、市川崑監督(1915〜2008)の映画(1959、大映、白黒、105分)があり、
塚本監督もそれを読み、観て、映画を作ったのだから、自分も同様にしなければ、評価できない。
大岡昇平の原作は、特異な作品だ。戦記ではない。
戦争文学でさえ、ないのかもしれない。
こんな作品は、世界中に「野火」一作しか書かれなかった。
大岡昇平は、1944年3月、35歳の年、召集され、同年6月フィリピンのミンドロ島へ守備要員として配置される。
同年12月、米軍が上陸。部隊は、攻撃を逃れ、山中へ籠る。
補給路を断たれた日本軍は、飢餓に苦しむことになる。
そして、散り散りになり、ジャングルを彷徨する。すでに、軍としての組織は崩壊している。
翌1945年1月に、米軍の捕虜となり、フィリピンのレイテ島(ミンドロ島より南東)の俘虜収容所に入る。
同年8月15日に終戦の詔勅があり、敗戦。同年12月、帰国。
1948年、まず「俘虜記」を発表。
俘虜生活の中で、そこに収容される同胞の軍属の人間模様、変容を描く。管理する米軍の将校たちの性格分析までも行っている。
俘虜側で、思想洗脳(オルグ)に踊らされた連中の豹変ぶりは、戦前も戦後も変わらない軽薄さだが、大岡昇平は、冷静な視線で、
生きるためにやむを得ないことだった、と見ている。
オルグを指揮した男が、戦後、地方議員選挙で落選したことまで追いかけている。
煙草などの嗜好品と時計の交換による経済格差。
敗戦前に俘虜になったグループと、終戦後に俘虜になったグループとの軋轢。
戦前と戦後で、何も変わらないではないか、ということを先見している。
レイテの俘虜収容所は、戦後の日本社会の縮図なのだ。
「野火」の、もっとも恐ろしい場面。
そもそも、なぜ日本軍が、南方の島々で、敵と戦う前に、飢餓に追い込まれなければならなかったのか。
この問いを、大岡昇平は、「レイテ戦記」(1967〜1968)で検証する。
大本営参謀本部の無策。
戦争は補給であるという古典的な常識を無視して、「いけいけ」で戦場が拡大する。
死んでいったのは、将校以下、現場の兵隊で、参謀は戦後も、のうのうとして生きて、また戦争を画策しようとする。
関東軍(満州)の服部卓四郎、辻政信。この二人はノモンハン事変で、ソ連の戦車に、手榴弾で戦わせる。
大岡昇平は、1967年3月に、フィリピン戦跡訪問団に同行し、ミンドロ島へ行く。
翌1969年、「ミンドロ島ふたたび」を発表。
「野火」の本質的なテーマは、「生きるか死ぬか」ではなく、「生きるためにどこまで人間の領域を越えるかどうか」である。
この問いは、悲劇のなかに生きる人間の問いかけだ。
「ハムレット」が迷ったように、自分が生き残るために、人間としての信義・信条を捨てるか、死んでそれを守るかということであろう。
「捨てていい」というのが、新約聖書の世界観である。
「信義・信条」は、イエスが死んで守ったのだから、あなたがたは、原罪を背負って、生きるがいい、ということと僕は解釈する。
「野火」の主人公にとって、二段の試練がある。
第一段階は、自分が生きるために人を殺す、ということである。
戦争という状況において、戦闘員どうしの場合、それは罪の意識を背負うことはないだろう。
「野火」の主人公は、非戦闘員である島の女を射殺する。
飢餓のためではなく、「マッチ(燐寸)を貸してくれ」という彼の言葉が理解されなかった。
日本の兵隊は恐いと思っていたであろう、女は、悲鳴を上げ、パニック状態になったとき、主人公は銃の引き金を引いてしまう。
この罪を、彼は、まず背負う。
第二段階は、飢餓を脱するために、人間が人間を狩り、殺し、その肉を食うということである。
主人公は、朦朧として「猿の肉」を食べさせられ、目覚めたあと、「猿」は、人間の肉であることを知る。
彼は、それによって生き延びた。
それが、死んだ、敵兵の肉であっても、味方の肉であっても、死んだ人の肉であることは、許されると思う。
罰を受け、獣(けもの)に落ちるのは、「狩り」の行為だろう。生きた人間を殺して、その肉を食らう。
おそらく、狩る、という最後の段階が、この原作の電極がもっともショートする場面であろう。
彼は、そこで、白い光を見て、卒倒する。「狩られた」肉は食べたが、「狩り」に加わる直前に卒倒したのだ。
原作の主人公は、帰国後、この小説を、精神病院で書いている。
戦争が生み出す人間の狂気
投稿日
2016/07/22
レビュアー
飛べない魔女
なんていう映像だろう。
低予算のためなのか、映像は粗いし、音声もクリアではない。
その粗さと聞き取りづらさがより鬼気迫る映像として
見るものの心を捕らえてしまう秀作だと思う。
どなたかのレビューにも書かれていたように、戦争とは敵との戦いだけでなく
同胞との戦い、自分との戦い、理性と本能の戦いでもあるのだということを
改めて痛感させられた。
人は極限状態になるとこうも壊れてしまうものなのだろうか。
原作者である大岡昇平の実体験に基づいた話なのだろうから、なお更恐ろしい。
戦争とは、人間らしい生活を奪うだけでなく、人間の理性を壊して、
人としての尊厳はなくなり、人では無くなってしまうのだということを、
ラストシーンでまた痛感させられるのだ。
戦争は絶対ダメ!絶対してはいけない!
塚本監督の戦争に対する熱い思いがひしひしと伝わってくる作品。
俳優人の狂気の演技も凄かった。
リリーさんはリリーさんとは気づかないほど別人だった。
NUDE
投稿日
2020/09/18
レビュアー
ビンス
戦争はヌードだ
これまでの社会で身に着けていたものを
一枚一枚
脱いでいかなければ
人など殺せはしない
脱いで
脱いで
身軽になって
殺して
罪悪感を着込み
その重さにだるさを感じ
いつのまにかまた脱ぎはじめる
そうやって厚着していたものを
どんどん
どんどん
脱いでいって
行きつく先は死
脱いで脱いで
裸になった先に死があるのではなく
どうやら死は
裸になったときに再び着込むものらしい
死
いや、死の恐怖を着込む
着ては脱ぎ
着ては脱ぐ
そしてたどり着くのは
全て脱いだ
生きたいという裸の欲望だ
その欲望の前では
倫理も道徳も理性も意味を成さなくなっていく
生きたい
生きたい
だから殺して
だから喰らう
その時の自らのクレジットは
日本人でも
階級でも
故郷の地でも
名前でも
性別でもない
生きたいとう
生存本能により二足歩行する
ただの生物だ
たとえそれが生きた屍だとしても
だったらどうした
私は生きている
製作費の問題だろうか
映画の質感ではなく
音声も聞き取りにくくて
イライラもするのだが
戦争の愚かさと恐ろしさ
その虚しさだけは
どうしようもなく伝わってくる
フィリピン・レイテ島の惨状
その多くが餓死者という酷すぎる事実
戦争はやったらいかん
地獄の迷走
投稿日
2017/06/04
レビュアー
こうさま
大岡昇平原作の小説を2014年に映画化した作品で極限状態に追い込まれた人間が獣と化してゆく様を強烈な映像で描いている。
舞台は太平洋戦争末期のフィリピン、レイテ島、一等兵の田村は肺を患い上官から野戦病院へ行けと命ぜられるが受け入れてもらえない、部隊に戻ると殴られて追い出される、部隊と病院をフラフラと彷徨う田村は亡霊のよう。
既に日本軍は組織としての体制と機能を失い生き残ることだけを考える暴徒化した集団になっていることがうかがえる。
敵軍の砲撃で野戦病院は吹っ飛び部隊は壊滅、死体のならぶジャングルを、それでも軍令で指定された集合地へ向かう餓鬼の集団、飢えを満たすために理性も捨て獣と化してゆく地獄の様相があまりにも凄まじい。
台詞よりも強烈すぎる映像が全てを物語っている。
ちよっと食欲を無くしてしまいそう。
田村一等兵の視点から見た地獄図、戦争の狂気というよりも極限状態に追い込まれた人間のとる行為は行き着くとこまで行き着いた選択となってしまうのだろう。
戦争に限らず遭難や漂流という極限状態でも同じような行為が行われることは否定できまい。
ドキュメンタリー風に進行する映像があまりにも強烈すぎて、本作の発するメッセージ性が希薄になっている感じがする。
これは反戦作品ではないが、こんな地獄絵図が過去にあったということは決して忘れてはならないと思う。
観なきゃよかったと思うくらい衝撃
投稿日
2017/05/04
レビュアー
ダイアー教授
レビューの書きようが無いくらい衝撃でした!
塚本監督演じる田村二等兵は本職が物書きさんですが、
この映画のレビューを書く(彼にとっては実体験ですが)のは難しいでしょうね〜
まずびっくりしたのが、テレビ番組の再現フィルムみたいな安っぽい映像で
初めはこの映画の「程度」を疑ってしまいましたが、
最終的にはそれが良かったと思います!
あの映像のおかげで、映画が、なんか、スクリーンの出来事ではなく、
自分の皮膚のすぐ外で起きている事象であるかのような感覚になりました。
あの場にいたら、俺も今の「俺以外の何か別のモノ」に変わってしまうのでしょう…
同じ題材だと『ライフオブパイ』がこの映画の対極にあると思いました。
衝撃作です!
うまく言えませんが観た方がいい!
※でも、奥さんや子供と一緒には絶対に観ない方がいいと思います!
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