クロスロード

「リトルダンサー」っていう映画を観たら、なにやらピンと来ない話だったので、ピリっとしたのを観たくなり、これを観た。
最初に観たのは３０年以上昔。そのときもいいなと思ったし、１０年前に観たときも興奮したが、今観たらどっと涙がでた。ウォルター・ヒルが監督した作品を全部みたわけではないが、おそらくこれが最高傑作だろう。
が、興行収入は大したことがなく、「４８時間」や「ストリート・オブ・ファイヤー 」のように皆に知られた作品でもない。
主演のラルフ・マッチオの代表作はやはり「ベストキッド」ということになってるし、共演したジョー・セネカやジェイミー・ガーツはその後も大した作品に恵まれていない。
これは、さして話題にならないうちに消えて行った作品と言える。
残念である。

「リトルダンサー」との共通点は主人公がスターを目指すというところ。
が、リトルの方の少年はどこまで本気なのかよくわからない感じ。この作品の主人公も甘っちょろい考えしか持っていないのだが、でも、本気度はけっこうあり、幻の名曲を自分のものにするために犯罪者として病院に収監されている往年のスターミュージシャンの脱走を幇助したりする。
で、その往年のスターミュージシャンは自由を得て少年とともに旅に出るのだが、実はその者は実力でスターになったわけではなかった。実力はもちろんあるのだが、それだけではスターにはなれない。悪魔との取引で地位と名声を得たのであった・・という設定が面白い。

スターになるってことがどんなに狭き門であるか、そこを目指すことがどんなに愚かなことであるか・・ってなことをウォルター・ヒルはよく踏まえているようだ。で、そのうえで、本物かニセ者を問われるファイナルシーンがあり、主人公の少年は見事にその試練をくぐりぬける。
見事にくぐり抜けるところは「リトルダンサー」の少年も同じなのだが、この作品には恋の切ない終わりがあったり、黒人と白人の差別のど真ん中に入り込んでの修羅場があったりするし、ファイナルステージの盛大なバトルは大迫力。
それは、ギターの技を競うバトルなのだが、ロックギターの勝負の最後にクラシックギターの技を出して逆転するところにはグッとくる。「リトルダンサー」の少年はクラシックバレエの学校の入試のオーディションでラップみたいな曲をかけて踊っていたが、それはちがうだろうって思ってしまった。

なんにしても、世に出て地位や名声を得るってのは大変なことである。実力がなくては勝負に勝てないわけだが、それだけでは世には出られない。この作品も質は高いのに他のつまらない作品の中に埋もれてしまっている。悪魔と取引しなかったからなのだろうが、悪魔と取引するとあとが怖いってことも教えてくれていて、ホントに楽しい作品である。

こんなのだったって思った。
20年以上も前の偶然借りた（ずっと前のある時、ここでレビュー見て興味を引かれてリストに入れたけどそれっきり忘れてた作品でした）映画が、こんなに好きになるなんて。

ギター・バトルはむちゃくちゃかっこいい！
若い頃、鍵盤楽器も弦楽器もちょっとかじった私だけれど、あんな風にギターを奏でられたら良いなぁ、すごいなぁ、何かが宿ってるよなぁ、と羨ましい限りです。

黒人のおじちゃんの言う「ブルース・マン」の響きも妙に素敵で、なんだか良い映画だった。そうそう、何かの音楽に心奪われるってこういう事だよねって思いました。

思えば、映画ってこんな感じのものだった。私達は近頃あまりにもクリアな映像を見過ぎているんじゃないかって思ってしまいました。
ちょっとザラついた映像や暗めのトーンが、なんだかほっとさせてくれました。

お勧め度：いろんな出来事のあるロードムービーなので退屈はしない。ちょっと解りにくい部分はあるが

対象年齢：中学生以上（暴力場面なし。あからさまなＨ場面なし。字幕です）

食事中に見られるか：大丈夫

親爺の青春・・そのものです・・。涙・・・

キワもの映画だと思ってたらおもしろかった！！
ラルフ・マッチオといえば「ベスト・キッド」ですが、あのテイストとソッポを向いてしまってたのは早合点だった。
ラルフの運指もなかなかリアルです。
吹き替えは他の方も触れているとおりライ・クーダーと本人が出演もしているスティーヴ・ヴァイ。
この当時はヴァン・ヘイレンに参加していたころで、見事なプレーで楽しませてもらえました！
この映画気に入った方に、十字路エピソードで思い出しましたが、「ノー・カントリー」でアカデミー賞をとったコーエン監督作の「オー・ブラザー！」おススメしますョ！