レイルウェイ　運命の旅路

第2次世界大戦時、日本軍の捕虜となり、鉄道建設に狩り出された英国兵士と日本人通訳らの実話を映画化したドラマ。
鉄道好きで平凡な人生を送るはずだった英国軍兵士のエリックは、シンガポール陥落時に日本軍に捕らえられ、タイとビルマを結ぶ泰緬鉄道の建設現場で過酷な労働を強いられます。それから約50年後、当時の記憶に苦しめられながらも、愛する妻と平穏な日々を送っていたエリックは、鉄道の建設現場にいた日本人通訳の永瀬が、戦争体験を伝えるため今もタイに暮らしていることを知ります。

中年男エリック（コリン・ファース）は鉄道マニアらしく、ニコール・キッドマン扮するパトリシアとの会話にロマンチックなラブストーリーでも始まるかのような雰囲気の導入部です。しかし、実はそれがずっと封じ込めていた戦時中の壮絶な体験に繋がっていたのには驚きました。
エリックは日本軍の捕虜となり、タイとビルマを結ぶ「死の鉄道」の建設に駆り出され、壮絶なトラウマを負ったようです。

「戦場にかける橋」と背景が似ていますが、はるかに痛ましい内容です。
拷問のシーンは、日本人には見ていてちょっと辛かったです。
日本兵への怒りと憎悪が渦巻くエリックの心情に寄り添った演出は、彼の心の闇を探る重い展開が息苦しかったです。
エリックが日本軍の元通訳、永瀬（真田広之）と対峙するシーンは、緊迫感みなぎる迫真の場面にドキドキしました。
戦時中に行われた残虐な行為には被害者も加害者も苦しめられていたのですね。
戦争の傷を癒すのは容易ではなく、エリックの出した結論には救われましたが、どんなに目を背けても過去は決して精算できないと感じました。

同種族で殺し合いをするのは人間とチンパンジーだけだそうです。
そしてその人間とチンパンジーの遺伝子は１％しか違わないということです。
領土争い、宗教の違い、価値観の違い
生まれも環境も文化も違うのですから、
考え方は違うのは当たり前なのです。
なのにそれを受け入れて、互いに尊重しあわない、自己主張ばかりする、
自分たちが正しいと信じて疑わない、
そんな人間のおごりが生む戦争。
憎しみを終わらせなければ、人類は永遠に戦争を続けるのでしょうね。

攻める側も守る側もにも、大きな心の傷を残していく戦争のむごさ。
人間らしい優しさとか労わる心を失わせる戦争の醜さ。
エリックと長瀬、どちらも戦争に翻弄された一兵士に過ぎません。
エリックが下した最後の決断は
終戦から４０年近くたって、ようやく取り戻した人間としての尊厳でした。
感動しました。

そして、事実、その後この二人が、長く友人として友情を深めたということに、また感動しました。
人は絶対に分かり合えるものなのです。
憎しみの連鎖は悲劇しか生みません。

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鉄道マニアの初老の男エリック（コリン・ファース）は、列車で偶然同席した女性パティ（ニコール・キッドマン）と恋に落ち、結婚する。
ところが、連日のように悪夢にうなされるエリック。
彼の過去に自分の想像もつかない凄惨な経験があるに違いないと察したパティは、
それを知りたい、夫を理解したいと考えるようになる。
実話に基づいた作品で、映画公開の際にパティさんご本人が来日されていました。

ふたりの出会いから結婚までの導入部は、まるでおとぎ話のようなロマンチックさです。
それがエリックの壮絶な過去の回想に転換する部分もうまくて、とても引き込まれました。

第２次世界大戦中、通信兵としてシンガポールで従軍していたエリックは、日本軍の捕虜となり、
タイとビルマを結ぶ泰面鉄道の建設現場に送られる。
エリックたちは日本兵に隠れてラジオを作り、故国の放送が流す戦況に希望をつないでいたが、
日本軍にそのことが知れ、激しい拷問を受ける。

「死の鉄道」と呼ばれた泰面鉄道の建設の建設といえば、デビット・リーン監督の「戦場にかける橋」が思い出されますが、
おぼろげな記憶ながらそれほど残酷な描写はなかったような。
午前１０時の映画祭のパンフには、
「映画製作によって当時の過酷な経験の恨みを晴らすつもりが、
意外にも日本人が高潔に描かれている点にプール（原作者）は不満を漏らしていた。」と書かれていました。

それに比べてこの映画は拷問のシーンがかなり詳細かつ長くて、観ているのが辛かったです。
コリン・ファースの若いころを演じたのは、「戦火の馬」の主役だったジェレミー・アーヴィン。
拷問シーン、大変だっただろうなあと思います。
エンドクレジットに実物のエリックの若いころの写真が出てくるのですが、そっくりです。

後半、エリックは当時自分を激しく尋問した日本人通訳、長瀬（真田広之）が、
現地の博物館でガイドをしていることを知り、会いにいきます。
エリックと長瀬の緊迫の体面シーンも見もの。
ただし、この物語はあくまでもエリック側からのもの。
彼の長い間の恨みとトラウマがどのようにして氷解していったのかに焦点があてられているので、
加害者だった長瀬の方の心理描写は物足りない気がしました。

なによりもすごいのは、夫を理解しようと努めた奥さんの愛。私なら即離婚してただろうなあ。

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　鉄道愛好家の中年男性が美人さんと出会って結婚するけど、過去のトラウマがフラッシュバックして苦しむ主人公。友人にかつて拷問に加わった日本人通訳が生きてることを知らされて報復の旅へと向かう話。

　主人公とヒロインの出会いから結婚までの序盤からして詩的な映像と印象的な人物構図と画面が美しくて惹きこまれるカメラでよかったです。
　そして主人公が経験する過去のトラウマと現在をカットバックで交互に描いていく。過去に何があったのか話さないので妻が友人を訪ね歩いて聞いていく。
　美しい映像の中に挿入される日本軍の凄惨な拷問の数々の対比。

　拷問を思い出して苦しむ主人公が友人から拷問をした日本人通訳がタイで生きていることを知らされて、タイへと向かう後半。
　当時とは逆に日本人を尋問して拷問しようとする主人公。そこで報復をするのか?　どうか。そして今の日本人通訳の贖罪の行動。
　イギリス人側から描いているので日本人が悪役になっていますが、それもラストシーンで日本人も被害者なんだと少しだけ教えてくれます
　
　難を言えば、奥さんがどうしてそこまで旦那さんを支えられるのかな?　とか思わなくもないですが。夫婦の絆を深く描くと3時間とかの大作になってしまうので仕方ないでしょうが。
　けど、奥さんの献身的な愛があったから主人公が立ち直れて、友人はそれがなかったためにあの行動をとったのかなと思いました。

　演出は単調だしテンポもそんなに良いとは思えませんが、戦争で傷ついた人たちがどう立ち直っていくのかを見せてくれる良い映画だと思いました。

それにしてもコリン・ファース売れてますねぇ。正直言って私はあまり好みじゃないけど、何故か最近私が興味を引かれて観る映画に必ずといっていいほど出て来る。アカデミー主演男優賞を獲った「英国王のスピーチ」（2010）では確かに上手い役者だなとは思ったけど、あれは脚本が良かったのと共演のジェフリー・ラッシュの名演に助けられたのが大きい、と思う。その後「ストレンジャー」（2010）、「裏切りのサーカス」（2011）、「モネ・ゲーム」（2012）、「アイ・アム・ニューマン」（2013）、とまるで彼の「追っかけ」してるみたいに毎作観てるワケですが、「ストレンジャー」ではパトリシア・クラークソン、「モネ…」ではキャメロン・ディアス、「アイ…」ではエミリー・ブラントなんて「旬」の女優とも共演していて（勿論私はそっちが目当てで観てるんですが）、彼女たちは皆それなりにキャラの立った演技してるのに彼の方には全く「華」が無いから全然盛り上がらない。まぁ確かにどの作品も脚本、演出が今イチの映画ではあって、彼ばかりを責めるワケにはいかないんですが（笑）。
この作品はどうも感心しませんでしたね。原作は本作でコリンが演じるエリック・ローマクスという男（英国人、またはオーストラリア人。何れにせよ1941年太平洋戦争で日本軍がイギリス植民地だったシンガポールを陥落させた時点で日本軍に降伏して捕虜になったイギリス軍の中尉だった）が50年以上経って老人になってから書いた「自叙伝（自分史）」なんですが、このエリックという主人公は「自叙伝」特有の「自己賛美、自画自賛」の臭みがどうしても出てしまうから、読者、観客から見ると（いや、私「だけ」なのかもしれませんが）魅力に欠けるんですね。コリンというヒトもまたこの「魅力に欠ける」男に演技で「生気を吹き込む」というタイプの役者じゃないから、ただの「木偶の坊」に見える（笑）。だいたい「肉体的拷問」による「トラウマ」がどれほど苛酷なものかは経験の無い私には想像もつかないけれど、「直接」手を下したワケでも無い（その場にいただけの）通訳の若造に50年もの間「復讐」の念を燃やし続けて、わざわざ現地に出かけて会って「謝罪」されたら「赦し」ちゃう、というのはあまりにも「軽過ぎる」し「美し過ぎる」と（私には）感じられてしまう。
ニコール・キッドマンがまた「夫に献身的な愛を捧げる妻」を演じるには最も不適な女優だと私には思えますねぇ。トシとってボケてきた夫の尻を叩いて「感動」の自叙伝書かせて「有名人の妻」を狙う、くらいの「したたかな」女には十分見えましたけど（笑）。