ホット・ロック

ロキュの６９日連続レビュー�U　その10
いろはレビューの「ほ」

(ネタバレあり)
ブラッド・ピットは特にデビューのころは、ロバート・レッドフォードと重なるイメージで売り出したと思うんですけど、逆を言うと、70年代初頭人気絶頂期のロバート・レッドフォードは今の表現で言うイケメンそのもので、若々しくてハンサムでかっこよく、同性から見ても、出ているだけで絵になるスターの輝きがあります。

個性豊かな、ある意味おおらかな時代だった70年代のアメリカ映画のにおいがして、好きな作品です。
まず、舞台がニューヨークというのがそう。

共演もなつかしい顔ぶれ。
ジョージ・シーガル。　『レマゲン鉄橋』とか『おかしな泥棒　ディック　&　ジェーン　』とかありますが、
グレンダ・ジャクソン共演の『　ウィークエンド・ラブ　』リリースしてくれないかな。

ロン・リーブマン。　『ノーマ・レイ　』『スローターハウス5』とかに出てました。
そして、登場シーンからして印象的な、食えないオヤジを演じたゼロ・モステル。　『　プロデューサーズ　』の旧作のほうとか、『ザ・フロント　』とかに出てますが、「屋根の上のバイオリン弾き」がブロードウェイ初演の際にテヴィエ役の名優。

監督は『　ブリッド　』『　ヤング・ゼネレーション　』のピーター・イェーツ。
音楽は、まだ『スリラー』よりずっと前で「鬼警部アイアンサイド」で菜を知られるようになったころの巨匠クインシー・ジョーンズ。

そして脚本はウィリアム・ゴールドマン。　『　明日に向かって撃て　!　』『　動く標的　』『　マラソンマン　』『　マジック　』『　遠すぎた橋　』などを書いた人。　　
ロバート・レッドフォードと縁が深いひとですが、ぼくが大好きな脚本家の１人です。

しゃれっ気のある泥棒映画ですが、決して傑作じゃないです。　　ツッコミどころがいっぱい。 (笑)
何やってるの? 　バカじゃない　? うそでしょ　? って言いたくなってくるけど、愛嬌があって、肩がこらずに見れるのがいいです。

「ホット・ショット」なら知っている

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　僕の大好きなドナルド・Ｅ・ウェストレイクのドートマンダー・シリーズは、コミカルな海外ミステリがお好きであればきっとご存知であろう。泥棒の天才ドートマンダーが、金庫破りや運転の名人などの仲間とともに、様々なお宝を盗む計画を実行するが、たいていの場合何かトラブルが起きてうまくいかない、というものだ（僕的なお勧めは『ホット・ロック』『最高の悪運』あたり）。
　映画化もいくつかされたけれど、あまりうまく行っていない。その中で唯一、原作の楽しさを（ちょっと印象は違うにせよ）再現しているのが、このロバート・レッドフォード主演の『ホット・ロック』ではないかと思う。『ブリット』『ヤング・ゼネレーション』で知られるピーター・イエーツ監督の、軽やかな演出が楽しい、アクションコメディの佳作である。
　レッドフォードはこの頃まだチンピラ然とした雰囲気があって、後年の生真面目な感じが薄い。彼が演じるドートマンダーは、腕力に任せてというより、頭脳派の泥棒で、厳重な警備を突破するあっというような作戦を考える男。泥棒なのに、金への欲望はそれほど強くなく、計画を成し遂げることにこそ執着をみせる。なんだか草食系な雰囲気が、とてもいい（ラストの軽やかな歩みは名場面）。
　映画のプロットはほぼ原作どおりだが、ヘリコプターで警察署の屋上から侵入するくだりなど、映像によるサスペンスが利いている（空撮では建設中のＷＴＣが映る）。相棒ケルプ役のジョージ・シーガルや、悪徳弁護士のゼロ・モステルなど多彩な脇役も楽しい。銀行の貸金庫係のおじさんなんかも、いい顔しているなあ。
　泥棒映画がお好きな人はもちろん、水曜ロードショーでごらんになった方ももう一度いかがでしょうか。合言葉は「アフガニスタン・バナナスタンド！」。６５点。

ホット・ロック（１９７２年アメリカ、カラー１０１分）

宝石泥棒の男たちの姿をユーモアを交えて描いたアクション・コメディの傑作。
奇想天外なアイデア、小道具を使っての鮮やかな盗みの手口、手に汗握るサスペンス．．．と言いたいところだが、これはアクション・コメディである。
肩肘張らず、楽しく観れるが、監督はなんと６８年「ブリット」のピーター・イエーツなのだ。

盗みで暮らしを立ててきたジョン・アーチボルト・ドートマンダー（ロバート・レッドフォード）は、刑期を終えて刑務所から出てきた途端、怪しい高級車に後をつけられる。鍵屋を営んではいるが、実は金庫破りが本職の義弟ケルプ（ジョージ・シーガル）から、ボストン博物館に展示される巨大ダイヤを盗み出す仕事を持ち掛けられたジョンは、仲間を集め、博物館に忍び込む。ジョンたちはダイヤを盗み出すことに成功したが、駆けつけた警備員に捕まりそうになり、ダイヤを手にしていた仲間の一人アラン（ポール・サンド）は、とっさにそれを飲み込み、逮捕される．．．。

せっかく盗んだダイヤを、飲み込んだらまずいやろ〜〜〜と、いきなりツッコミたくなるが、その後の展開が二転三転、一体どうなることやら．．．そんな愉快な映画なのだ。

レッドフォードとジョージ・シーガルのコンビがいい。
特にＧ・シーガルのとぼけた表情は絶品で、コメディ映画における彼の演技は独特なものがある。
しかしコメディ路線だけではなく、シリアスものや戦争ものでも、また違った面をみせる。
６６年「バージニア・ウルフなんかこわくない」、６９年「レマゲン鉄橋」、７３年「ウイークエンド・ラブ」、７８年「料理長殿、ご用心」などはその最たるものだった。

前述のダイヤを飲み込んだアランは爆弾作りのエキスパートだが、もう一人、運転のプロであるマーチ（ロン・リーブマン）が仲間で、都合４人で盗みにチャレンジする。
練習を重ね、完璧な作戦が練りあがったが、それでもコトは思ったように運ばない。
大体、こういった強盗シーンでは予期せぬアクシデントがつきものだ。
そうでなかったら映画にならない。
ただアクシデントをどう乗り越えていくか．．．ここが勝負の分かれ目で、映画の出来・不出来にも関わる。だが、そこは風刺表現にも秀でたピーター・イエーツ監督、豊富な映画センスを用いて、観客を惹きつけるに十分な演出をみせている。
当時の世相にもマッチ、クインシー・ジョーンズのスコアもいい。