クリティカル・リポート

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タイトルは私の出身校の紋章に書かれた表記ですが、本作を見て思い出しましたね・・・。ジャケデザインを見るといつものB級アクション映画を連想しますが、内容は意外と硬派で見応えのアル作品でした。ハリウッド製なら「水の利権」だけで2時間近く物語を維持するなんて想像するだけで不可能ですが、これを見事に昇華してます。本作は地球上で最後の未開の大陸「アフリカ」を舞台に政府の陰謀にジャーナリストが立ち向うと言った手垢の付いた脚本をベースにしながらも、実際に問題化してるアフリカの水資源と言う切迫したテーマを描いてます。話の筋としては凡骨で少し説教臭い点も有りますが、それを補って余り有るロケ地のアフリカの生のロケーションは素晴らしい。カメルーンやケニアなど著名な都市で撮影され、出演してる俳優も殆どが黒人でしかも無名の役者ばかりですが日頃見慣れてるハリウッド製のB級映画と違うテイストが味わえます(良い意味で)。主演の男優も存在感が有り、ジャーナリストと言う設定も有って銃で悪役を殺す事も無く、それでいてアクション・シーンも楽しめる中々考えられた設定をソツ無く演じています。Grammy賞候補にもなったアンジェリク・キジョーのアフリカン音楽も中々ですし、出演はアフリカ、スタッフはイギリスと言うコンビネーションが良い方に出たと思う。アフリカの現状を訴えるかの様な物語は遠いかの地での出来事の様に考えがちですが、資源の乏しい日本も人事とは思えませんでした。エンディングで国連環境計画UNEPのマークの出る映画って始めて見たと思う。本作は際立って面白いと言う訳では有りませんが、画面の硬質感など気に入る点の多い作品でした。

貴方も本作を見ると、日頃飲んでるミネラル・ウォーターが美味しく感じるかも？

なかなか実感できない水問題。
しかし・・・実は今世紀、地球規模で最もクリティカルな問題は水不足であると、レスター・ブラウン氏が指摘している（よくは知らないけど、たぶん）。
地球は水の惑星といわれるけれど、人間が生活や農耕に利用できる真水はそのうちわずか何とかパーセントに過ぎない。（これまた数字を知らないのですが、たぶんそんなに多くないはず）
真水が足らないという問題は農業問題であると同時に貧困や差別の問題でもあり、「テロとの戦い」より深刻だというのが実際のところらしい（映画の話じゃなく、現実の話として）。

水か、軍備か。ある意味、現実世界の状況を象徴するような設定にもなってます。
そうはいっても、水問題や国際政治をお勉強する映画ではないので、その点のご心配はないかと。逆にそっち方面を期待すると口あんぐりということに＾＾
カーチェイスなど一通りそろったアクション映画。不必要に入り組んだ愛憎劇やわざとらしい葛藤もなく、いろんな意味でストレートな娯楽作品と見ました。
よくも悪くも真水のように、のどごしスッキリ、あとには何も残らない・・・それではラストに出る「水は基本的人権」という国連環境計画のメッセージがムダになるのかな？

昔、私が幼い頃、アパルトヘイトが続いていた南アフリカの映画で「ロリーポップ」という黒人と白人の少年が友情を育むストーリーの映画がありました。子供心にも「ウソ臭い話だな〜」と退屈に思った記憶があります。ずっと後から、政府の宣伝映画だったと理解できました。

この映画も、同じです。
この映画の悪役は、白人の武器商人と汚職大臣の２人であり、大統領は思慮深く、国民思いであり、警察も公平で機動的です。
…はい、はい、悪いのは外国人と一部の役人だけなんですね。…

国家的な課題も、足りないのは資金だけであり、それさえあれば解決できるわけですか。
それをするのが、国連環境計画UNEPというわけですね。
それを世界中にアピールできるなら、この映画を作ったこともそれに協賛金を出すことも「無駄金」ではないのですね。

しかし、国民が困っているという水問題は、映画の冒頭の大統領の演説と中盤の村の風景、そしてラストの井戸のシーンでほんのわずかに触れられているだけで、映画のストーリーに影響を与えていません。
ストーリー自体も、アクションとしてもサスペンスとしても穴の大きなモノで、登場人物のほとんどが途中でストーリーから外れていき、ラストまでいっても驚きも感動もありません。
もし、国際連合食糧農業機関FAOから協賛金が出るなら、大統領は食糧不足の演説をし、ラストを畑のシーンに替えればそれで成り立ってしまいます。学校の問題にすれば、国際連合教育科学文化機関UNESCOの協賛を受けられることでしょう。

アフリカの水資源問題を描くなら、国民の飲料水の問題と同時に農業用水及び工業用水を必要とする企業体との水利権争いを描かないと問題の本質が見えてきません。そして、国内の対立だけでなく、河川の上流と下流の国家間の対立もあります。
そして、何よりnationalismが形成されていない部族意識が、地域間格差を生じさせています。

国連環境計画UNEPも、もう少しましな映画を協賛すべきですね。