クローン

●サスペンス
●ヒューマンドラマ
●ＳＦ
●ミステリー
といろんな要素が詰まった映画ですが、その全てが嫌味ではなくうまく融合されて表現されています。多くの人と同じようにディック繋がりで見た映画ですが、なぜこんな良い映画を見逃していたのだろうという感じです。というか何故そんなに話題にならなかったのでしょう。・・・映画館で見たかった。
SF映画ファン以外でも楽しめ、ラストまで意表をついてくれます。

作品紹介のイントロだけ読むとエイリアンとの戦いを派手に描いてるように想像するが、実際はSFの舞台でサスペンス映画を描いてます。

ディック原作の映画だと「ブレードランナー」「トータルリコール」「マイノリティレポート」等が有名ですが、これらの作品と比較してもアクション、CGに特段みるべきものはありません。
しかし、主人公が戦争中のエイリアンに殺されて爆弾を内蔵されたクローン人間の疑いを掛けられ、疑いを晴らしていくストーリー展開が実に面白いのです。
面白さの骨子は自分が本当の人間なのかクローン人間なのかが分からない怖さにあります。
ほぼ全編通して、追手を逃れながら真実に辿り着くまでの逃亡シーンがメインですが、追われる苦悩、焦燥感、等の心理描写を丁寧に巧みに描いているのでラストまではらはらどきどき手に汗握って物語に集中できます。
そしてラストには驚愕のどんでん返しが・・・。

監督が「ニューオーリンズ・トライアル」「コレクター」を撮ったゲイリー・フレダーなのでサスペンス調のストーリー展開は得意なんでしょうね。

この作品は肉付けすれば一級の娯楽SFになりえたのに、潔く肉を削いで上質のサスペンス映画に徹した点が非常に心地良いです。

SFサスペンスが好きな方には特に観ていただきたい作品です。

いやはや傑作です。ディック作品の映画化は数あれど、これほど原作の雰囲気がよく表現されてる作品はないと思います。

「自分は誰なんだ」というのはディック作品に繰り返し現れるテーマですが、この作品はまさにストレートにそこだけを追いかけて展開します。そして衝撃のラスト。

まじめに再現すればするほどもろB級作品になるのがディックの世界。ラストで大いに笑ってください。えっ笑えない？

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（ま、ネタバレらしいネタバレはしてないと思いますが、まっさらで観たほうがよいかもしれませんから・・・・）

　　ほおほお低予算の割りにやるじゃんと思っていたらILMが特殊効果だったってぇことは、必ずしも低予算じゃないのかな、ま、いいや。（ILM；Industrial Light & Magic はスター・ウォーズのために生まれた特撮専門の会社、念のため）

　　ともあれ、特撮が主役の映画じゃござんせん。あと実はアイディアストーリーでもない。オチはこの手のものがお好きな向きなら大体予想がつくし、ッてかもっとすごいオチを期待しちゃったりするだろうけど、でもがっかりすることはない。

　　オチがわかってたって面白い映画は面白いんだ。たとえば「ミッション：インポッシブル」、あの人がまさか・・・ってその瞬間にたどり着きたいからまた観ちゃったりする。

　　この映画もまぁ筋書きは古典的だわね、逃亡者モノ、裏切り者は誰だ、そして俺ってホントは・・・っていうパターン。でもね、古典的ってことはやっぱりきっちりとやって見せれば面白くなるってことで、地味ながらもきっちりと定石どおりに見せてくれます。

　　そしてなにより主役がいい。ゲイリー・シーニーズってテレビシリーズ「CSI NY」なんかでもがんばっとりますが、地味でちょっと神経質そうで、なんとなく「あいつ人造人間だぜ」みたいに言われたら納得しちゃいそうな雰囲気がある。
　　ついでに言うとあんなに綺麗なカミさんがいるという設定なのは、同じ中年としてちょいとむかつくが、それも演出か。

　　ッで、地味で神経質そうだから、その逃亡劇もちょいと痛々しい。しかもなんだか人造人間みたいだから迷宮的な雰囲気も深まり、分不相応に魅力的なカミさんだ（と観ているもの、ッてかアチキが思っている）から陰謀の予感はつのる一方・・・・

　　うん、成功の半分はやっぱり配役ですね。彼でなければ、というわけではないけれど、ぴったりと嵌ってるもんなぁ。
　　ゲイリー・シーニーズ、ちょっと追っかけてみたくなる俳優です（ッて、追っかける相手が増えて困ってるこのごろ・・・・　中田秀夫でしょ、清水崇でしょ、それから冨江でしょ(^_^;)・・・・）

JUCEさんにおすすめいただきました-その3。

このところ古い低予算SFを続けて観たので、大作ではないがこの映画で描かれた未来社会がとてもいい特撮に見えた。ｗ
地球外からのミサイル攻撃を防ぐために都市全体を覆うドームの外は、廃墟のようなスラムで多くの貧民が棲んでいる。
よくある暗い未来のイメージだが2つの世界が丁寧に仕上げられて不自然さがない。

主人公のエリート科学者スペンサー・オーラムは突然逮捕され、自分では全く覚えがないのに、高度な科学力を持った敵対異星人によって造られた「サイボーグ」だと告げられる。
合成DNAを使って複製された体に意識や記憶も刷り込まれ自分自身の正体を知らない。
しかしその心臓には標的に近づいたとき起爆する高性能爆弾が仕込まれていると・・・
尋問官は「敵が複製できなかった唯一のものは魂だけだ」とスペンサーに言うが、彼にとっては疑いようのない彼自身なのだ。
クローンだろうと人工知能だろうと、意識のあるところに魂はある。
（この尋問官は「ザ・セル」のサイコキラー役だった俳優。いい演技をしている。）

彼は果たして本物か、それとも爆弾を抱えた偽物か？
彼自身も彼の妻にも観客にも最後の最後まで分からない。
主人公の機転、スリリングな逃走劇、人と人の葛藤。
ストーリーが面白いので、これから見る人は是非ネタバレをパスして観てほしい。

ところで邦題は「クローン」だが、クローンと言う方がサイボーグより高度っぽいと感じるのは、たぶん間違ってる。
いくらSFでも、クローン技術で大人から採取した細胞から大人のコピーが作れるというのは漫画的（エイリアン4とか）。
同じ遺伝子を持った一卵性双生児でも、痩せたり太ったり筋肉付いたり病気になったり・・・長年の生活の中で違う体型が作られる。
この映画では高度な科学力によるロボット。そのほうが理にかなった説明だと思う。
原題は「impostor」ニセモノという意味のようだ。

でも地球に潜入し人間を複製できるほどの科学力を持った異星人が、なんでこんな回りくどい作戦を仕掛けるのかは謎ｗ
たぶん、そういうのとは違うところにチカラを入れた映画である。

完全に見逃してたなあ。
JUCEさん　教えていただいてありがとうございました。