近頃なぜかチャールストン

"近頃なぜか岡本喜八"してしまってるんですが、久しぶりに観ても面白いです。
1981年の作品ですが、モノクロでスタンダードサイズ、ATG製作と言えば、ある程度想像できるんじゃないでしょうか。予告編にもありますが「独立愚連隊」の兵隊たちが年老いて破天荒さを維持し、そこに「肉弾」の少年が加わったという物語ですね。

内容的には日本の現状(20年以上たった今も同じこと)を皮肉るシニカルさを前面に押し出したストーリー。邪馬台国のお年寄りたちは豪華キャストで個性爆発ですから、それだけでも楽しいです。
まあ難を言えば、シニカルに拘りすぎるストーリーで"まじめすぎるシニカルさ"が、岡本喜八さんらしい破天荒さを損ねているとも言えるんだけど、その分観るものを選ばない間口の広さはある作品ではないでしょうか。

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1981年の映画なので、まさかモノクロ映画だとは思わなかった。
モノクロ映画が苦手だというわけではないが戸惑いは隠せない。
もしかして、戦争に近い時代設定なのかと錯覚するが、やはり舞台は1981年。
モノクロがすごく遠い時代と感じ、笑いのツボが違うんじゃないかと
不安を覚えるも大丈夫。けっこう笑えた。
終始グダグダのドジ刑事（容貌がルパン風）、
ツルピカのため○○○○がすべってしまう文部大臣他他、
しょーもなくて笑える。（褒めています）
Ｙ談だって味がある。ヤマタイ国の非核三原則も笑えます。

しょーもない感じでありつつ社会派だ。
しかも、1981年にとっての社会派なんじゃなくて2008年でも通用するする社会派。
保険証の類は破って捨てるなど、日本国の制度に頼ることなく自力で生きるところは、
最近の年金を払わずに自分で資産運用して老後のお金を貯める風潮に似ているし、
抑止のための軍事力なんていうところも、話題の憲法改正問題に通じるものがある。
現代社会にメスを斬るといった言葉がしっくりくる映画でもあった。
30年も前から日本は変わってないんだなぁと思う。

全体的にお爺さんお婆さんたちの物怖じしないおとぼけぶりが、
失礼ながらなんとも可愛らしいのだけど、
冒頭に主役的な次郎が婦女暴行未遂なんて悪質な犯罪をおかすので、
どうしても彼を応援することは出来ない。
万引きとかノゾキとかそういう前科にしてほしかった。

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とんでもない設定でリアリティなんかは、ほとんどなくて。登場人物もぶっとんでいる人たちでしたが。役者さんたちの力か、面白く観れてしまうのが不思議でした。

つかみどころなく、飄々としたお芝居をする役者さんたちが何とも不思議な魅力で。日本のおかしなところを風刺していって。
話のテンポもよくて、じゃんじゃんと次に進んでいくので飽きずに最後まで観ることができました。

チャールストンが流れるクライマックスなんて、なかなか笑えました。
最後には、ハチャメチャなおじいちゃん達を応援している自分がいました。

ただ、何故白黒のスタンダードサイズなのかが疑問のままでした。

あーシニカル。劇場で見たのですが、もうおかしいやらかなしいやらいたいやら。割と年齢層高めの客席からも、くすくすと笑い声が上がっていました。
低予算でこのクオリティ。監督がすごいのはいうまでもありませんが、あの俳優陣の怪演ぶり！「ずるいわこんなの！」と叫びたくてたまりませんでした。

しかし皮肉です。あーもう。
ヤマタイ国のみんなのキャラが濃すぎて、それだけでももうおなかいっぱいでした。
独立系非行少年とか、労働大臣とか、はちまきとか、ひとつひとつがおかしい。
ちなみにこのジャケットの絵も絶妙のセンス。

この映画の感想を書き始めたら止まらないのでこのへんで。
是非、是非見てみてください。

シナリオもプロットも古い。流行の時代感覚をセンスよく描出してみせてはいるが、随所に配置されているメタファーも、何というか、古い。つまり、時を超えてなお鑑賞に耐え得る一本、とまではいかない映画だと思う。
ただ、田中邦衛は、やはりホンモノである。