県警対組織暴力

あれこれ　仁義なき戦い　の後の作品なんだなあ　ずっとそれより前のものと思ってた　深作の隠れた傑作なので　観てね！

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一連の深作作品の一つなのだが、今回は任侠道が薄れ現代ヤクザの基礎が出来上がった頃の話

ＧＨＱの影も無くなり、本当の意味で日本が元気だった時代
昔ながらの極道はいなくなり、経済の成長に伴い、金が力の象徴かの如く、政治家も企業もヤクザも利権争いに夢中で、そのおこぼれにあずかろうとする、様々な人々がその周りをうろついていた当時
悲しいかな、そういう構造がなければ、経済は発展しなかっただろう、と想像できる
いわゆる持ちつ持たれつである、この構造は日本独特の文化だろう
諸外国では、仕事に私情を挟まないのが美徳とされるが
日本では、皮肉ではあるが、昔の様な極道は地元住人を守り、そのお返しにみかじめ料を貰う、その構図だけが皮肉にも引き継がれてしまった、そこに情や思いやりはない
この作品では、警察側の菅原文太や、昔ながらの任侠を貫こうとするが、時代には逆らえず苛立つ松方弘樹演じるヤクザ
立場は関係なく、葛藤し順応できる者、できない者が、生き残りを懸けて生きた時代の話である。

当時の世相を読むにはよい作品である。

ロキュの６９日連続レビュー�U　その４２

いろはレビューの「け」

(,ネタばれあり　)
タイトルに「サイテーな男どもの美学　」などと、つけてしまいましたが、改めて観ると、これはまちがいですね。　　　そんなものは観ている僕の虚栄、格好づけにすぎません。

久能(　菅原文太　)は広谷( 松方弘樹 )の中に、警察官の自分には果たせない男気の美学を見ていたわけですが、何もかも奪われ敗れた二人にとって、権力側のキレイゴトを否定するには、反権力だ、任侠だというおのれの矜持、旗印のキレイゴトを捨てざるをえない痛々しさがあります。
室田日出男の極道と山城新伍の刑事の場合もそうですが、きょうだい殺しの痛みですね。

いつもながら笠原和夫の脚本は情念に満ちていて、観ていて心引きずり回されます。
こんな悪徳警官と極道に、複雑な思いに胸が熱くなるとは。

深作欣二は好きではありませんが、川谷拓三への取調べ室での有名な暴行シーンや、佐野浅夫の老刑事やチンピラたちの描き方に、暴力がいかに心身ともに破壊して人を変えてしまうのか、そのむき出しの残酷さがよく描かれていて、久しぶりに観ても、面白くて悲しくて、やはり画面に釘づけにされた作品でした。

駅、病院、商店街など、撮影が よく知っている京都東映撮影所近くの地元でされているので、そこは奇妙な感覚でした。(笑)

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　深作映画はあまり好きではないが、笠原和夫が自作中いちばん気に入っている脚本だと言っているのを、どこかで読んだので借りてみた。予想以上に騒々しくて、垢抜けなくて、無駄に下品（松方弘樹の下品さは特筆に値する）で、苦笑とため息が交互に出た作品だった。まあおもしろかったけど。

　６０年代半ばの西日本の小都市「倉島市」を舞台に、ヤクザ組織の抗争を描く実録もの。警察組織や地元政財界もそれに絡み、大騒ぎを引き起こしつつもある一つの潮流が生まれてくる。石油コンビナートの建設に象徴される７０年代高度経済成長時代、その結実である「一億総中流」の未曾有の経済的繁栄を謳歌する社会の到来である。経済構造の変化は情緒的な繋がりを基調とする旧い共同体を解体させ、法と秩序に基づく明るい「市民社会」の建設をうながす。映画の主人公はその流れになじめず、乗れず、抗い、必然的に愚かにかつ惨めに破滅していく二人の男、刑事とヤクザである。究極の歴史的「負け組」。笠原和夫はこの二人、とくに悪徳刑事の久能（菅原文太）に、自身の時代に対する違和感、反感、嫌悪感、怒りを託したように思えた。深作欣二の生きることそのもののような熱い野暮ったい暴力がそれを援護する。

　久能が昭和３年生まれ（離婚届けに明記）というところがポイントだろう。敗戦時１７歳。多感な青年時に社会の混乱の極みと価値観の大転換、生き延びるための「仁義なき戦い」を経験した身には
県警から派遣されたエリート、梅宮辰夫の並べる綺麗ごとなんて頭から信用できない。大原組の手入れの後、上機嫌で夜食を摂ろうとする梅宮に菅原が投げつけた台詞には痺れた。

「上は天皇陛下から下は赤ん坊まで、みんな横流しのヤミ米喰らって生きとっんで。あんたもその米で育ったんじゃろうが。綺麗づらして法の番人じゃなんじゃ言うんじゃったら、十八年めえのあんたの犯した罪、はっきり清算してから、うまい飯喰うてみいや」

　まるで「ゆきゆきて、神軍」だ。過去をなかったことにして経済的繁栄目指してひた走る日本社会に向けての強烈な反感（批判というにはエモーショナルすぎる）。情より偽善的市民道徳を優先させることへの嫌悪感。それを警察官の口から言わせるところが凄い。
結局梅宮は石油会社に天下りし「さあ、今日もみんなで元気に体操しよう」などと満面の笑顔を見せ、左遷された菅原は雨の夜の路上で一人・・。高度成長時代が振り捨ててきたものへの挽歌とも言える結末。いや、挽歌にまでは昇華しきれていない怒りと無念さが燃えていた。

　笠原和夫も深作欣二も直接には触れていないが、思ったことがある。悪役として元ヤクザの市会議員（金子信雄）が登場し、市長も県会議員も彼を介してヤクザ組織と親交を結ぶ。民主主義制度下、議員も市長も住民の直接選挙で選ばれる。腐りきった市政だ、悪辣な奴らよのうと憤慨するが、こういう人間たちににこの地位を与えたのは選挙民（観客たち）自身である。江戸時代の悪代官とは違うのだ。政治や社会を非難してもそれを作り出したのは、ほかならぬ「主権者」としての自分自身であることに思い至らぬ国民をも映画は風刺しているのかもしれない。ここにも「はっきり清算」できていない過去がある。

　タイトルは脚本家と監督に敬意を表してつけました。わたくし自身は「大日本帝国の実在よりも戦後民主主義の虚妄の方に賭ける」派です。そこから以外出発できません。

主人公のたどる道より、主人公にいためつけられる川谷拓三が一番印象に残る。「仁義なき戦い広島死闘篇」でも千葉真一に徹底的にやられる川谷拓三。この後、テレビの「前略おふくろ様」で有名になる前は殆ど知られていない脇役。深作欣二監督は彼を気に入って目立つようにこのような役をふったとか。名は知らなくともたしかこれだとあいつは誰だ、と映画ファンだったら思うだろう。ところで川谷拓三は早くこの世を去ったので、今の若い人は知らないか。そしてこの頃のやくざ映画を観ると、この殺気だった雰囲気に圧倒されるのだ。今は皆さん良いおじさんになってますが。