マルホランド　ドライブ

　何がどう繋がっているのか分からなくて、でも場面ごとには面白い展開があって、常に何かが起きそうな予感を抱かせる。全部意味がありそうだけど、細い糸で繋がっていそうで、理解できそうで理解できない不可思議さが、この映画の魅力とも言えます。
　男が突然銃で撃ったり、女の宝石にペンキをかけたり、突拍子のない行動を、精緻に現実的に見せるあたりは、キューブリック作品と似ているという印象を持ちました。画的な構図もシンプルで力強さを感じます。

　でもやっぱり美女二人（ナオミ・ワッツとローラ・ハリング）の存在が光っているからこそ、この抽象的な不可解な映画も、飽きずに観られたのかなと思います。
　二人がいったいどうなるのか？裏に隠された秘密があるのか？キーや箱の意味は何なのか？などのミステリー要素に、長編ながら目が離せません。それとあの裸身にもクラクラッと来て、個人的にはここが一番楽しめました。（苦笑）
　この映画の仕掛けは他の方のレビュー投稿を見て、なるほどと思いましたが、それでもまだ理解できない。しかし場面ごとには印象に残っているシーンもあるので、意味が分からなくても、面白い作品を観たという、満足感を得られる映画だと思います。

　ミセス・ルノワ（ココ）役のアン・ミラーは若い時にタップダンスの名手、美脚で名を馳せていた女優だと思うので、70歳後半になっての出演姿に、その面影はどこへと、ミュージカル好きとしては彼女を見て、時の流れを感じてしまいました。★★★★

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■原題：Mulholland Drive
■２００１年■アメリカ■１４６分
■監督：デヴィッド・リンチ
■脚本：デヴィッド・リンチ
■出演：ナオミ・ワッツ／ローラ・エレナ・ハリング／アン・ミラー／ジャスティン・セロー／ダン・ヘダヤ　他
■受賞歴：カンヌ国際映画祭☆監督賞
　　　　　　　全米批評家協会賞☆作品賞／主演女優賞（ナオミ・ワッツ）
　　　　　　　ＮＹ批評家協会賞☆作品賞
　　　　　　　ＬＡ批評家協会賞☆監督賞
　　　　　　　英国アカデミー賞☆編集賞
　　　　　　　インディペンデント・スピリット賞☆撮影賞（ピーターデミング）
　　　　　　　セザール賞☆外国映画賞

■本作は数年前に１回観たきりで、その時はもうひとつピンと来ていないところがあったんですけど、久しぶり２回目の鑑賞で自分の中ではすっきりしました（すっきりの後は、すでにもう１回観たくなってます）。

　これはつまり、

　“嫉妬のあまりレズの恋人を殺してしまった泣かず飛ばずの女優が、今度は罪の意識に耐えられず自殺したその断末魔に見た夢”

なのでしょう。

　そして、その夢の配役が絶妙ですね。感心します。
　特に、夢の中で一番最初に彼女を激励する老夫婦が、現実には最後彼女を自殺に追いやった“幻覚”だったというのがコワイです。
　これにかぎらず、配役や構成についてはすごく考えられてると思ったのですが、もしデヴィッド・リンチがこれを直感的に撮ったのだとしたら、とんでもない天才かもしくはある意味病んでる？それはさすがに失礼か（汗）

　それはともかく、彼女の夢の中での晴れやかな顔と現実の疲れきった顔を観ているとなんだか切なくなってしまいました。

　そして売れない女優、本名でいうとダイアンを演じるナオミ・ワッツはとんでもなく美しい。

　彼女の姿も含めて、何度も繰り返し観たくなる。
　“麻薬のような映画”と誰かが言っていたような・・・。今はそれがよくわかります。

　Blu-ray化、熱望！！

愛と憎しみ、喜びと悲しみ、成功と不成功、生と死。
表と裏の集う場所。歪んで映されるスクリーン。

「虚」はまことしやかに…、「実」は斜めに…。

私たちは、ダイアンに夢を見せてあげられたのでしょうか？
いやいや、本当のダイアンは別の夢を見ているかもしれませんよ。

ナオミ・ワッツの、「私は女優！」的な演技はすばらしかったと思います。

この作品はカンヌ映画祭の監督賞をはじめ、いろいろ受賞しているようですが、当時「リング」のリメイク直後でブレイクしそうなナオミワッツと、元ミス・アメリカのラテン系アメリカ人女優ローラハリングの「美しさ」がこのミステリアスな作品をさらに魅惑的にしていました。

リンチ監督の映画らしく、まるで「夢」のシーンがつながっていくような、「ことばでは解釈しきれない」作品でした。

分かりにくい映画を作る監督と聞いて、興味が湧いてついにデイビッド・リンチ作品初鑑賞。

別のところに書いたけど、自分にレセプタ(受け皿)が無いものを見たとき、「面白い脳内物質」が分泌されないと「面白くない脳内物質」が分泌されて「面白くない」になるのかというとそうではなく、何も分泌されずに感覚ではなく理性で対処しようとし始めるので「分からない」になってしまう。私の場合はトリュフォーの映画がそうなんですが、この映画は分かりにくいより以前の段階で「面白い」と感じる映画だった。

謎解きはそんなに面白くは無い。何故かというと、この映画の謎は無理やり仕掛けを埋め込んでいて策士策に溺れているようだからである。ひらたく言うと「そんな小賢しい事しなくても良いんじゃないの」である。

謎はここのレビューを読んで100%理解しました。謎解きよりもこの映画の面白いところは極端で個性的な演出だ。「時間軸をメチャクチャに行き来するので次に何がどうなるのかまったく読めない」「これで最後に辻褄が合うんだろうか？」と思うと映画に引き込まれていく。そこがこの映画の面白いところだと思う。謎解きは劣後債みたいなものだ。

ナオミ・ワッツは初めて見たが、オンタリオからロスに出てきて舞い上がってる女の子、推定22歳【実年齢33歳】を実に上手く演じていて、こういうキャラクタの女優なのかなと心配になったが、あとからどんどん技を繰り出してきて素晴らしい演技だった。この人は凄い。いつかオスカー女優になるだろう。ハリウッド女優にしては歯並びが悪いのが気になるが。

あと、びっくりしたのはアン・ミラー！まだ映画に出ていたのかー。面影はあるなぁ。これが遺作だそうだ。

この映画の私的名シーンは、ダイアンとカミーラが二人でアダム・ケシャー監督の自宅パーティーに行くシーン。カミーラはもうダイアンを切る決心をしている。監督が出てきてカミーラとダイアンにシャンパンを渡し、監督はカミーラに「Here’s to love.(愛に乾杯)」と言う。ダイアンは仲間はずれ。ダイアンは自分からカミーラに「Here’s to love.(愛に乾杯)」と言って乾杯する。今日、もうすぐ捨てられるダイアン。切ない。そこに監督のママ登場(この人がアン・ミラー)。監督がダイアンに「君は僕のママとは初めてだよね」と言ってママを紹介する。カミーラはまったく表情が変わらない。ダイアンは気が付く。「カミーラは監督のママと既に会っているんだ」「そしてそのことを私には言わなかった」

だんだん破滅が足音を立てて近づいてくる。可哀想だ。女は男のために女を裏切るものなのか。このシーンのローラ・ハーリング（カミーラ）の演技が良い。美人で何ものにも動じず自信に溢れた30代の女。家内にもそういう頃があったなぁ…。そういう女って、意地悪なんだよね。カミーラはダイアンの前で本物のカミーラ(金髪)とキスする。ダイアンが監督を好きなのを知っていて監督といちゃつく。

悲しい女の映画なのに、悲しさが全然残らない。
すべてがフィクションだという事を観客にあまりに意識させてしまったからではないか？
デイビッド・リンチ監督って、もっと『観たら夜眠れなくなる映画』を作る人かと思っていたが、この映画はかなりの娯楽映画になっている。ちょっと思っていたのと違って意外だった。
ナオミ・ワッツの「２１グラム」を予約した。