ザ・ウォーカー

えりえりらまさばくたに
世界は、その日終わった。
永劫に続くと思われた物質文明は信じる神の膝元の相容れぬ軋轢に阻まれて自壊した。
かつてバベルの塔を破壊した人と人との不信感は灼熱の核の炎となって全ての我儘な人類にその強欲の贖罪として降り注ぐ。
人は塩の柱を見ることもない。
振り反る都市はおろか、己の首さえ爆圧で胴体から解離してしまったからだ。
イーライは善良なケーマートの従業員。
たまたま地下倉庫で職務についていたので事なき得た。
在庫品で飢えをしのぎ、染み出す汚水で乾きを癒した。
放射能の減衰した大地に這い出すとそこは死が支配する世界に変容していた。
瓦礫に埋もれている時に彼は光を失った。
それは信仰と信頼だったのかも知れない。
灯明もない暗黒の地下で這いずるうちに彼の野生の感覚は研ぎ澄まされた。
…声が彼を捉える。
それは懐かしくも遠い記憶の欠片。
掘り起こせ、抱け、そして、あゆめ、新たなるゴルゴダ（流刑者の贖罪の地）を目指せ。
全ての本は焼かれていた。
神は唯一無二ではない。
奉る存在が曲解されて伝えられた時、個々の神の言葉として「人」が伝えた本は全て捨てられた。
その存在と言葉自体が破滅の要因とされたからだ。
…ただ一冊、稀有な場所に保管された存在を除いて。
流刑者の血とあがないが眠る丘で導きの主は復活した。
エル…イーライ。
人類の混沌が訪れる時、その名を冠した者が現れ救いの言葉を広めると言う逸話がある。
近未来の想像の大地でかつてはユダヤの民の象徴だった名を持つ人類の素たる黒き民の男が人に秩序と平穏を与える福音葉を携えて復活の地を目指す新叙事詩。
血生臭さの上に崇高なる受難が彩られるのは人の業を感じて乗り越える事が救いの言葉の深さを理解するのに必要だったからか？。
暴漢を瞬時にほふった後で愛用の剣をいたたまれずに投げ捨てるのは良心の呵責なのだろう。
その本の編纂者に彼の名はいらない。
彼こそが本であり語り継がれるべき存在だからだ。
神は人を見捨てない。
人が神を見限るのだ。

〜細密なイラストを元に映画本編の進路を指定しているので全体的整合されて丁寧に製作されています。
原題のタイトルを見ただけでも主人公のイーライの運んでいる「本」の正体は一目瞭然です。
混沌とした世界を歩むイーライの姿は現代の強者優先の世相の批判なんでしょうかね。
じっくり楽しめる作品でした。
ＢＤ版には特典が満載でおなか一杯になれます。

ソレは保護されている。
全能の力に保護されている。
ソレは死ぬことを許されていない。
ソレは消え去ることを望まれていない。
ソレは信じる力を武器として。
いつの日か再び蔓延することを夢見る。
まるでウィルスのように。
ひとつから幾億へ。
再びこの世を支配する。

ザラついた映像が物語の時代にマッチしていて好きです。
しかしなんといってもアクションがイイ。
デンゼルのアクションに血湧き肉躍る。
複数を相手にしたときでも彼は動じず、まるで流れるように対応していく。
素早く。
的確。
一人一人を相手にしているような印象ではなく、敵の攻撃の次がまるでわかっているかのように動く。
その秘密は後で明らかになり。
なるほどと納得できるのです。
彼は何故・・・・・
と「・・・・」の中に色んな疑問が湧いてきますが、それもちゃんと答えが示されます。
それは強引にも思えますが、希望にも思える。
そういうことがあったっていいと理解できる。
ゲーリー・オールドマンは「らしい」感じで独裁者を演じ。
ゲーリーの「敵役」は「適役」と安心させてくれます。
あの時代の生活習慣や、生きていく辛さ、過酷な日常などをもう少し描いてくれれば尚好き。
そういうの気になります。

兎に角カッチョイイ「静かなる旅人」デンゼルをご堪能あれ。

ボクは返却してから気付いて残念だったんですが、レンタルディスクにも特典が付いてたんでしょうか？
ゲーリー演じるカーネギーの幼少時代を描いた短編アニメーションが特典としてセル版には付いているらしいです。
レンタル版にも付いてたら観たかったなぁ・・・


酒場で登場するバカタレ。
とてもアメリカンを感じるバカタレ。
あーゆーバカタレってどうしてあんなんなんでしょう・・・
「だったらなに？」ってことでもイチイチ突っかかっていきますね。
でもちゃんと「スッキリしたぁ」って展開が用意されているので嬉しいんだけど。

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近未来の荒廃した世界観の映画は大好きなカテゴリー。
ゲリー・オルドマンは大好きだし、デンゼル・ワシントンも結構好きな俳優。
そんでもって、この世にたった１冊の本を30年歩いて運ぶ男。

こうなると、俄然期待しちゃう訳ですよ。
そんなに大事な本って、なに？とかね…。

なんですけど…
ガッカリな作品でした（泣）

デンゼル演じるイーライは結構カッコいいんですが、ゲリー演じるカーネギーが物足りない。
せっかく久しぶりに悪役を演じるんだから、せめてレオン並みにはキレた演技を見せてくれないと…
おまけに、大事な本＝聖書ってのが早いうちに分かってしまい、一気にテンションダウンでした。
だって、キリスト教の信者でない私は聖書は読んだ事ないし、殺し合いをしてまで手に入れたいアイテムだとは思えませんからね。
もう、この時点で『なんじゃこりゃ？』って感じです。

ただ、最後に残った聖書が点字だったってオチは予想外でヤラレました。
でも、点字だって分かったとたんに、イーライの目がいきなり光を失ったかの様になるのはイケませんな。
だいたい、目が見えないのにネコや鳥に矢が当たりますか？
あんなにカッコよく戦えますか？
実はイーライ点字も読めたんです！位で良いと思うんですけどね。

まあ、わが国には座頭市って強い人が居ましたけど（笑）

★★+（2.5点）

何故イーライは西へ？何故ゆえに聖書？
この辺をもう少し丁寧に描いてくれたら面白かったかもしれませんが…おススメは出来ませんね。

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原題『THE BOOK OF ELI』イーライとは、デンゼル・ワシントン演じる主人公の名前。

世界の終末を描いた本作品、全編に渡り、銀灰のモノクロームっぽい映像で退廃した世界観を描いています。
その滅亡後の土地で、一冊の本を西の目的地に届けるべく、３０年間の間、旅を続けてきたザ・ウォーカーことイーライ。
使命を果たす為に、バッサバッサと邪魔者の命を奪うイーライ。その殺り方が凄い！なんとナタを使った見事な殺陣劇。最初に見せるシルエットでの殺陣は、日本の時代劇を思わせるそれ。アンタは座頭市か、それとも破れ奉行か！？（知ってる？）。

そして、世界に残された、たった一冊の本が欲しくて欲しくて、部下に強盗させてまで手に入れようとしていた支配者カーネギーに、久しぶりの憎まれ役ゲイリー・オールドマン。
そこまで欲しい本とは何なのか？その本があれば、世界を支配できる？本の正体は？

ここから少しネタバレです。

本の正体、実は序盤に明かされます。
そもそも、その正体明かしが主題ではありません。ここでは言いませんが…分かっちゃうかも(^^;

まず、多くの日本人が思うでしょう。西洋宗教的な話にはピンとこないと。
信仰も薄すければ、内容もロクに知らないし、信仰心を煽っても何？となってしまうでしょう。
でも、その本の存在自身は、世界の誰もが知っていますし、その誕生の歴史はもちろん、過去の支配者や、巡る争いの血塗られた歴史も今更だと思います。
確かに、信仰心があれば、多少の感じ方の違いはあるでしょうが、話の筋や、作品の面白さを感じるには、そんなに影響は無いのでは？と個人的に思う訳です。
本の正体、分かりましたか？

故に、カーネギーは、その本を欲しがるのですが、頭のイイ大物の悪なら、自身で作ってしまうところでしょうが、彼は楽して既存の物を捜す訳です。
この辺りが、少々小物の悪でして、ゲイリー・オールドマンが演じるには、ちょっと物足らない感もありました。

この作品の凄いところは、そんな本の正体明かしなどではありません。
デンゼル・ワシントンの体を張ったアクションもそうですが、ストーリーに奇想天外なアクセントを付けているところです。
最後に秘密が分かった瞬間、なるほどー！と。
振り返れば、確かに数々の付箋は貼られていましたが、いやいや、もう一度観たい！確認したい！と。
もう一度確認したい…この感覚は『シックス・センス』以来か？確認したい内容は全然違うけど…

という事で、ＤＶＤ出たら、もう一度観てみようと思っていたのですが、今になったら『シックス・センス』ほどでも…（汗）
でも面白かったですよ。お薦めします。
★★★★

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　雰囲気がとてもよい。マッドマックスのような荒れ果てた荒野がほぼ滅亡した地球の姿で、これは空がきれいであやしくていい。途中でどうも紫外線が大量に降り注いだために人類がほぼ滅亡したようなことがわかりますし、みんなずっとサングラスをかけていることからもわかります。
　文明が崩壊したあとの人類があちらこちらで生活する集団を作っている話は、小説「新世界より」がものすごく面白いのですが、日本を舞台にこういう世界を映画（連続ドラマでも）にしてくれると、すごく面白いものができるはずです。それだけの映像表現ができる人達がいればですが。いい話をうまく作れる人にまかせないと、せっかくの素材がだめになってしまうのは、「漂流教室」なんかでもわかります。映画もだめ、テレビもだめ。完璧な映像化を望みたいところです。
　映画は、最後にちょっとした仕掛けがありますし、主人公がなぜ西を目指すのか、なぜ強いのかも明かされます。いいですね。宗教色がありますが、それはそれでいいとして、映画として、私は、すごく好きなタイプの物語です。期待以上でした。