宮廷画家ゴヤは見た

『スペインの天才画家ゴヤが活躍した激動の時代を背景に、異端審問がもたらした一つの悲劇を描いた歴史ドラマ』チントラより引用
異端審問で捕まった富豪の娘イネスは豚肉を食べなかったと言う理由だった。この異端審問＝拷問で、イエスと言うまで攻める。
結果、イネスは「イエス」と言ってしまったので、牢屋へ。
　娘を助けたいイネスの父はロレンソ神父を捕え拷問し、人は拷問されると信念を曲げる証拠を取るが、その効力はむしろロレンソ神父を追放する結果となり、何の改善もなかった。

　この映画ではゴヤの描いたイネスとロレンソの肖像画が、とても素敵。大画面で見たらもっと迫力があるだろうな…なんて絵の好きな私はストーリーよりも絵の方に目が向いてしまいました。それにしてもイネスを演じた女優さん…凄いです。あんなに美しかった娘が、ここまで変わるのか…と言う役者魂と演技の凄さに感動。

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映画の始めに映される不気味極まる絵。それを描いたのがゴヤ。
人物画の名人で王室にも愛された。まるで二重人格者かと思うほど別な絵を描く人だ。
しかし、映画でのゴヤは至って普通の人で知識人であり普通に憐憫の情を持ち、世間をうまく渡り歩く人だ。

生贄の子羊のごとく、つまらない言い掛かりでユダヤ教徒だと責められ、カトリック教会から拷問され牢獄の身となるイネスは訳のわからないまま、歴史によって不幸のどん底へ落とされる。

かと思えば、フランス軍が攻めてきて王族が逃げ、カトリックの権力が下がりプロテスタントが上へいくと、彼女は牢から放たれる。
何故入れられたのか、何故放たれるのか全く分からないから、恨む気持ちすら沸かない。ただ、ロレンソ神父に凌辱され身ごもり女の子を産んだ気持ちだけが残っている。
凌辱に対して恨みはないのかと不思議に思ったが、それ以上に牢獄暮らしが辛かったということだろう。

しかし、結局、フランス軍も負け王族も元の鞘へ戻ると、またカトリックへ権力がわたる。
権力が時によって右往左往する。その度に正義も変化する。国家というものの怪しさを訴えたかったのだろうが、大河ドラマの割に時間が短い映画だったので、忙しすぎた。なので、主役が誰なのかぼやけてしまった。
ロレンソが最期、カトリックへ居直らなかった理由も説明不足のような気がした。イネスの純粋な愛が何を訴えるのかも希薄だったような気がする。
いい映画で重いテーマで役者も上手かったのに残念だった。

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　ナタリー・ポートマンの変貌ぶりが見事で悲しかったです。１６年前に引き離されたわが子は彼女の中では赤ん坊のままなんですよね。カルロスを恨むわけでもなく、わが子と信じた赤ん坊を彼に見せに行くあたり、三人で穏やかに暮らすことが彼女の願いだったことがよくわかります。
　カルロスのような卑怯者がいたことも事実だと思いますが、老司祭のように時代の波をかぶりながらも人に責任をなすりつけたりはせずに、静かに信仰に生きた多くの人がいたことも確かだと思います。ミロス・フォアマンのこのあたりの歴史解釈もわたしは好きです。

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ナタリー・ポートマン、ハビエル・バルデム共演ってことだけで借りてみた作品。
なので、本作があまりに暗いお話で、気が滅入ってしまいました・・・

物語は、史実を織り交ぜながらといったところでしょうか。
18世紀末のスペイン、魔女狩りともいうべき、カトリック教会の異端審問によって、
うら若き美しい少女イネスはその誤解を解くことなく、酷い拷問を受け、
以降16年も牢獄の中に閉じ込められることとなります。
ナポレオンのスペイン侵出によって、イネス始め多くの人は開放され、
破門となりスペインを後にした元神父ロレンゾもこの地に戻ってくる。
ここで、16年前イネスがロレンゾの子を身ごもり、出産していた事実が明るみになり、
物語が展開されるのですが、孤児として育ったその子供もまたいい人生は送っていないという・・・
そして、イネスは気が触れてしまっているし、ロレンゾは時代の流れに命を落とすことになるし。
なんとまぁ、暗い話でしょう。

スペインの宮廷画家だったゴヤは、少女イネスとも神父ロレンゾとも交流があり、
彼らを引き合わせた本人であり、彼らの顛末を見届けた唯一の者でもあるわけです。
ゴヤが見つめた、時代に翻弄された人々の物語。ゴヤの話ではなく、時代を切り取った映画。
そんなスタンスで描かれているので、面白い作品だとは思えなかったのですが、
これが、当時のスペインの姿だったのだろうと推し量ることはできました。

16年も牢獄の中でいたということで身体的にも精神的にもボロボロになってしまった
イネスを演じたナタリー・ポートマンの演技はすごかったです。
自分の産んだ子とも引き離され虐げられてきたら、きっとあんな風になっちゃうんでしょうね。
あの姿を見ると、宗教の支配下にある世界って怖いなぁって思いました。

見終えた後の感想を一言で言えば「中途半端」に尽きます。あくまで私個人の印象ですが時代背景云々といった感じはなく、いい加減な主人公とその犠牲になった女性の話にしか思えませんでした。またゴヤ自身の描写が弱いですし、時代背景とは別の次元でストーリーが進められているとも感じられました。個人個人の心理描写が弱いこともあり、物語の説得力にも欠け、時代認識も雑です。結局、本作品から明確なテーマを得る事はできず、キャスティングやタイトルに騙された印象です。