ハンナ・アーレント / バルバラ・スコヴァ
ハンナ・アーレント
/マルガレーテ・フォン・トロッタ
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(25)
解説・ストーリー
ホロコーストを生き延びたユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント。1960年代初頭、彼女は何百万人ものユダヤ人の収容所移送を指揮したナチスの重要戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判に立ち会い、その傍聴記を発表する。しかしアイヒマンを、思考することを放棄して命令に従っただけの凡庸な小役人と評し、さらにユダヤ人自治組織の指導者がアイヒマンに協力していたとにも言及したレポート『イェルサレムのアイヒマン』は、ユダヤ人社会からの激しいバッシングに晒される。本作は、そんなアーレントの孤高の戦いを通して、その波乱の人生と彼女が訴え続けた信念に迫る伝記ドラマ。主演は「ローザ・ルクセンブルグ」のバルバラ・スコヴァ。監督も同じく「ローザ・ルクセンブルグ」のマルガレーテ・フォン・トロッタ。 JAN:4988013710665
ホロコーストを生き延びたユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント。1960年代初頭、彼女は何百万人ものユダヤ人の収容所移送を指揮したナチスの重要戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判に立ち会い、その傍聴記を発表する。しかしアイヒマンを、思考することを放棄して命令に従っただけの凡庸な小役人と評し、さらにユダヤ人自治組織の指導者がアイヒマンに協力していたとにも言及したレポート『イェルサレムのアイヒマン』は、ユダヤ人社会からの激しいバッシングに晒される。本作は、そんなアーレントの孤高の戦いを通して、その波乱の人生と彼女が訴え続けた信念に迫る伝記ドラマ。主演は「ローザ・ルクセンブルグ」のバルバラ・スコヴァ。監督も同じく「ローザ・ルクセンブルグ」のマルガレーテ・フォン・トロッタ。 JAN:4988013710665
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「ハンナ・アーレント」 の解説・あらすじ・ストーリー
解説・ストーリー
ホロコーストを生き延びたユダヤ人哲学者ハンナ・アーレント。1960年代初頭、彼女は何百万人ものユダヤ人の収容所移送を指揮したナチスの重要戦犯アドルフ・アイヒマンの裁判に立ち会い、その傍聴記を発表する。しかしアイヒマンを、思考することを放棄して命令に従っただけの凡庸な小役人と評し、さらにユダヤ人自治組織の指導者がアイヒマンに協力していたとにも言及したレポート『イェルサレムのアイヒマン』は、ユダヤ人社会からの激しいバッシングに晒される。本作は、そんなアーレントの孤高の戦いを通して、その波乱の人生と彼女が訴え続けた信念に迫る伝記ドラマ。主演は「ローザ・ルクセンブルグ」のバルバラ・スコヴァ。監督も同じく「ローザ・ルクセンブルグ」のマルガレーテ・フォン・トロッタ。 JAN:4988013710665
「ハンナ・アーレント」 の作品情報
「ハンナ・アーレント」 のキャスト・出演者/監督・スタッフ
ハンナ・アーレントの詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
114分 |
日 |
独・英:ドルビーデジタル5.1ch |
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
PCBP73238 |
2014年08月05日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
2位登録者: |
46枚
|
0人
|
1人
|
ハンナ・アーレントの詳細
収録時間: |
字幕: |
音声: |
114分 |
日 |
独・英:ドルビーデジタル5.1ch |
レイティング: |
記番: |
レンタル開始日: |
|
PCBP73238 |
2014年08月05日
|
在庫枚数 |
1位登録者: |
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ユーザーレビュー:25件
考えることで、人間は本当に強くなれるのか
投稿日:2017/10/27
レビュアー:趣味は洋画
「一人の死は悲劇だが、集団の死は統計上の数字にすぎない」
いみじくも、アドルフ・アイヒマンが云った言葉として残されているが、とても受け入れられる言葉ではない。
この「ハンナ・アーレント」を観ている最中、何度もハンナ(バルバラ・スコヴァ)の言葉に‘なるほど’と共感し、さすが敬愛される哲学者だけのことはある...と思ったものだ。
ラストの8分間の講義(演説のよう)は、無学・無教養の小生ですら‘信念をもって生きなければならない’ということを教えられた。
しかし映画を観終わってしばらく経ってから、やはり何か喉につかえたような気がしてスッキリしない。
私には「原理」とか「論理」といった、難しい言葉の意味は分からないし、こういった‘世界’に好んで入り込もうとも思わない。
だが、いくらアイヒマンが自身の行為について「命令に従っただけだ」といっても、本当にそうなのかと疑ってしまう自分がいる。ハンナはイスラエルで裁判を傍聴し、膨大な裁判記録を読破し、彼女流の哲学で自説を論じている。アイヒマンの真の心もちを見透かすことができるのだろうか。
世の中には「知らないこと」が多々ある。「知らなくてもいいこと」もある。
しかしナチス・ドイツの行なった、悲惨で残虐な歴史的「事実」は変わることはない。
「思想」や「ナショナリズム」という言葉を持ち出してきても、根本的な「事実」はやっぱり変わらない。
映画を観ていたときの高揚感、感情が徐々に薄らいでくる。
自分の気持ちが怪しくなってくる。
ハンナを演じたバーバラ・スコヴァという女優サンを初めて知った。
重いテーマの作品、むずかしい役柄に果敢に挑み、抜群の存在感をみせている。
(時代考証の表れか、煙草の吸いすぎが気になるが...)
彼女の秘書(?)ロッテ・ケーラー役のユリア・イェンチが瑞々しくていい。
ハンス役を演じたウルリッヒ・ヌーテンと共に、04年「ヒトラー〜最後の12日間〜」に出ていた。
監督はマルガレーテ・フォン・トロッタというドイツ人女性監督。同じく初めて聞く名前。
元女優サンのようで、1942年生まれであるから、70歳の作品ということか。
パワフルだ。
カマンベールさんが本作のレビュー・タイトルに書いておられる。
「哲学者にアイヒマンの何が解るか?」
単刀直入で実に解り易い。
このレビューは気に入りましたか?
1人の会員が気に入ったと投稿しています
スパスパ
初めから終わりまで煙草を吸い続ける主人公、ハンナ・アーレント。
アメリカに亡命したユダヤ人で哲学者。
ユダヤ人のドイツからの追放を担当していた
アイヒマンは没収した財産で莫大な収益を上げ、
その後の収容所への輸送の責任者となる。
亡命先のアルゼンチンにてイスラエル警察に見つかり、
イスラエルに輸送される。アルゼンチンの法を無視して。
ハンナ・アーレントはその輸送を含め裁判記を出版する。
彼は愚かでではなかった。完全な無思想性
ーこれは愚かさとは決して同じではないー
それが彼をあの時代の最大の犯罪者の一人にした素因だったのだ。
またいかに努力してもアイヒマンから悪魔的な
底の知れなさを引き出すことは不可能だとしても、
これは決してありふれたことではない。と悪の陳腐性を論じた。
アーレントは「平和に対する罪」に明確な定義がないことを指摘し、
アメリカによる広島・長崎への原爆投下が裁かれないことを批判している。
このレビューは気に入りましたか?
1人の会員が気に入ったと投稿しています
思考の深い淵へ沈んでいくわたし。
アイヒマン・ショウを見た後、この映画でもアイヒマンを取り上げていることを知り
見てみることにした。
予想外に、圧巻だった。
ただただ、彼女の思考を繰り返しなぞり、アイヒマンがどういう人物だったのか、
悪魔的な行為を戦時下で行った時、戦後、それを誰がどう処罰できるのか、
ぐるぐるぐるぐる考え込んでしまった。
アイヒマン・ショウを見た時にもった感想は、
単純にナチスに所属し、ヒトラーの手足となり最前線でユダヤ人を
ガス室へ送った男は残虐非道で、裁判においても無表情で冷淡な印象で、
自分は命令に従っただけで無罪である、
とのうのうと主張する姿に怒りを覚えた。
ナチス→悪。
その指揮官であったアイヒマン→悪。
処刑は当然だと。
でも、この映画を見ていると、わたしのこの単純な図式って、
正当なのか、だんだん揺らいできた。
ハンナはユダヤ人であり、実際に収容所に送り込まれた忌まわしい過去をもつ。
命からがらアメリカへと亡命できたとき、
アメリカはパラダイスだ、
と思ったそうだ。
わたしもミュンヘンに残る収容所を見に行った。
そこにはいやな重苦しい空気がたちこめ、当時ガス室へ送られ亡くなっていった
ユダヤ人(小さなこどものものもあった)たちの衣服、靴、骨が山積みになっていた。
なんで人間がこんなむごたらしいことができるのだろう。
日本人のわたしさえ、おぞましく感じ怒りがこみ上げた。
ハンナは実際、収容されているのだ。ユダヤ人なのだ。
わたし以上の感情を持っているはずだ。
彼女は大学講師をしている哲学者として、イスラエルで行われる
ナチスの指導者アイヒマンの裁判の傍聴ができる機会を得る。
その感想はニューヨークタイムズ紙に掲載されるという契約だった。
被害者側、加害者側。
アイヒマン・ショウで見た、あの実際のモノクロ映像が流れる。
ただ、今回は同じ映像を見ているはずなのに、なんともいえない違和感、
複雑な気分に陥った。
ハンナが書いた記事が掲載されるや否や、世界中から非難中傷の声があがる。
ユダヤ人の中にもナチスに協力し、リスト作成等に従事したものがいる、
アイヒマンはどこにでもいる平凡な男で、思考しない小役人ゆえ悪となった、
その2点がアイヒマンを擁護しているとして叩かれた。
命を脅かされたナチスの残党の前で、なおも客観視でき、俯瞰できる強さ。
その強さに言葉を失う。
彼女の言葉にふれるにつれ、わたしの頭は混乱する。
アメリカは広島と長崎に原子爆弾を投下した。民間人が一瞬のうちに命を奪われた。
今も後遺症に苦しむ人がいる。
ベトナムには枯れ葉剤をまいた。こちらも民間人を無差別に殺傷していて、
現在も苦しむ人がいる。
日本の最後の帰還兵、小野田少尉は戦争が終わったことを知らず、
ルバング島で孤独な闘いを続ける中、ルバング島民を殺害した。
現在、シリアでは化学攻撃により多くの民間人が苦しんでいる。
これらとナチスの殺戮はどこがどう違うのだろう。
アイヒマンは国に仕える者としてユダヤ人担当になり、そこでの仕事ぶりを
評価されユダヤ人輸送担当のトップになった。
ユダヤ人をガス室で殺すことに対し、否定的な意見を言っていたという証言もある。
原爆投下に関わった人は誰も処刑されていない。
枯れ葉剤をまいた人も処刑されていない。
名前すら分からない。
小野田少尉についても、彼の人生を考慮し、政府側はルバング島で殺人があったことを
最近まで隠してきた。
このアイヒマン裁判の後、アメリカではアイヒマンテストという
心理実験を行っており、平凡な人間が組織の上部に上がっていくと、
非道だと思われる行為も躊躇なく行えるという結論を出している。
ハンナは言う。
思考を止めてはいけないと。
組織の中に所属していると、個人は歯車になり、その進む方向へと動く。
サラリーマンでも思い当たるだろう。
感覚の麻痺。
ただ、ハンナのように思考を止めず、熟慮し、その大きな流れが悪い方向へと
進んでいると気づいた時、それは間違いです、
と小さな歯車のひとりは声をあげる勇気があるだろうか。
ナチスは許せない。
でも、全体を眺めると、なんだかもやもやが止まらない。
考えれば考えるほど、何が正義で、どうふるまうべきなのか、
考え込んでしまう。
このレビューは気に入りましたか?
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哲学とはどのようなものかを感じることの出来る映画
投稿日:2023/01/21
レビュアー:松村 訓明
この映画は哲学というものがどのようなものかを感じることの出来る映画です。
アーレントという哲学者を通して、人は考えて強くならならなければいけないということを実感する映画でした。ジーンと来る映画を期待している方にはお薦めします。拙いコメントをお読みいただきありがとうございました。
このレビューは気に入りましたか?
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戦いには支えが有った方が
夫婦睦まじい事をそれ程この映画では強調する必要が有るのかと最初は感じたが、その支えが一つの安心感を映画の観客に与える要素になっている。
現実の世界と戦った哲学者の話だが、勉強不足なので、混沌とした現在の世界の情勢の中で哲学者や宗教家がどのように戦っているのか知りたい。
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ユーザーレビュー
考えることで、人間は本当に強くなれるのか
投稿日
2017/10/27
レビュアー
趣味は洋画
「一人の死は悲劇だが、集団の死は統計上の数字にすぎない」
いみじくも、アドルフ・アイヒマンが云った言葉として残されているが、とても受け入れられる言葉ではない。
この「ハンナ・アーレント」を観ている最中、何度もハンナ(バルバラ・スコヴァ)の言葉に‘なるほど’と共感し、さすが敬愛される哲学者だけのことはある...と思ったものだ。
ラストの8分間の講義(演説のよう)は、無学・無教養の小生ですら‘信念をもって生きなければならない’ということを教えられた。
しかし映画を観終わってしばらく経ってから、やはり何か喉につかえたような気がしてスッキリしない。
私には「原理」とか「論理」といった、難しい言葉の意味は分からないし、こういった‘世界’に好んで入り込もうとも思わない。
だが、いくらアイヒマンが自身の行為について「命令に従っただけだ」といっても、本当にそうなのかと疑ってしまう自分がいる。ハンナはイスラエルで裁判を傍聴し、膨大な裁判記録を読破し、彼女流の哲学で自説を論じている。アイヒマンの真の心もちを見透かすことができるのだろうか。
世の中には「知らないこと」が多々ある。「知らなくてもいいこと」もある。
しかしナチス・ドイツの行なった、悲惨で残虐な歴史的「事実」は変わることはない。
「思想」や「ナショナリズム」という言葉を持ち出してきても、根本的な「事実」はやっぱり変わらない。
映画を観ていたときの高揚感、感情が徐々に薄らいでくる。
自分の気持ちが怪しくなってくる。
ハンナを演じたバーバラ・スコヴァという女優サンを初めて知った。
重いテーマの作品、むずかしい役柄に果敢に挑み、抜群の存在感をみせている。
(時代考証の表れか、煙草の吸いすぎが気になるが...)
彼女の秘書(?)ロッテ・ケーラー役のユリア・イェンチが瑞々しくていい。
ハンス役を演じたウルリッヒ・ヌーテンと共に、04年「ヒトラー〜最後の12日間〜」に出ていた。
監督はマルガレーテ・フォン・トロッタというドイツ人女性監督。同じく初めて聞く名前。
元女優サンのようで、1942年生まれであるから、70歳の作品ということか。
パワフルだ。
カマンベールさんが本作のレビュー・タイトルに書いておられる。
「哲学者にアイヒマンの何が解るか?」
単刀直入で実に解り易い。
スパスパ
投稿日
2017/10/06
レビュアー
Eha
初めから終わりまで煙草を吸い続ける主人公、ハンナ・アーレント。
アメリカに亡命したユダヤ人で哲学者。
ユダヤ人のドイツからの追放を担当していた
アイヒマンは没収した財産で莫大な収益を上げ、
その後の収容所への輸送の責任者となる。
亡命先のアルゼンチンにてイスラエル警察に見つかり、
イスラエルに輸送される。アルゼンチンの法を無視して。
ハンナ・アーレントはその輸送を含め裁判記を出版する。
彼は愚かでではなかった。完全な無思想性
ーこれは愚かさとは決して同じではないー
それが彼をあの時代の最大の犯罪者の一人にした素因だったのだ。
またいかに努力してもアイヒマンから悪魔的な
底の知れなさを引き出すことは不可能だとしても、
これは決してありふれたことではない。と悪の陳腐性を論じた。
アーレントは「平和に対する罪」に明確な定義がないことを指摘し、
アメリカによる広島・長崎への原爆投下が裁かれないことを批判している。
思考の深い淵へ沈んでいくわたし。
投稿日
2017/04/21
レビュアー
真
アイヒマン・ショウを見た後、この映画でもアイヒマンを取り上げていることを知り
見てみることにした。
予想外に、圧巻だった。
ただただ、彼女の思考を繰り返しなぞり、アイヒマンがどういう人物だったのか、
悪魔的な行為を戦時下で行った時、戦後、それを誰がどう処罰できるのか、
ぐるぐるぐるぐる考え込んでしまった。
アイヒマン・ショウを見た時にもった感想は、
単純にナチスに所属し、ヒトラーの手足となり最前線でユダヤ人を
ガス室へ送った男は残虐非道で、裁判においても無表情で冷淡な印象で、
自分は命令に従っただけで無罪である、
とのうのうと主張する姿に怒りを覚えた。
ナチス→悪。
その指揮官であったアイヒマン→悪。
処刑は当然だと。
でも、この映画を見ていると、わたしのこの単純な図式って、
正当なのか、だんだん揺らいできた。
ハンナはユダヤ人であり、実際に収容所に送り込まれた忌まわしい過去をもつ。
命からがらアメリカへと亡命できたとき、
アメリカはパラダイスだ、
と思ったそうだ。
わたしもミュンヘンに残る収容所を見に行った。
そこにはいやな重苦しい空気がたちこめ、当時ガス室へ送られ亡くなっていった
ユダヤ人(小さなこどものものもあった)たちの衣服、靴、骨が山積みになっていた。
なんで人間がこんなむごたらしいことができるのだろう。
日本人のわたしさえ、おぞましく感じ怒りがこみ上げた。
ハンナは実際、収容されているのだ。ユダヤ人なのだ。
わたし以上の感情を持っているはずだ。
彼女は大学講師をしている哲学者として、イスラエルで行われる
ナチスの指導者アイヒマンの裁判の傍聴ができる機会を得る。
その感想はニューヨークタイムズ紙に掲載されるという契約だった。
被害者側、加害者側。
アイヒマン・ショウで見た、あの実際のモノクロ映像が流れる。
ただ、今回は同じ映像を見ているはずなのに、なんともいえない違和感、
複雑な気分に陥った。
ハンナが書いた記事が掲載されるや否や、世界中から非難中傷の声があがる。
ユダヤ人の中にもナチスに協力し、リスト作成等に従事したものがいる、
アイヒマンはどこにでもいる平凡な男で、思考しない小役人ゆえ悪となった、
その2点がアイヒマンを擁護しているとして叩かれた。
命を脅かされたナチスの残党の前で、なおも客観視でき、俯瞰できる強さ。
その強さに言葉を失う。
彼女の言葉にふれるにつれ、わたしの頭は混乱する。
アメリカは広島と長崎に原子爆弾を投下した。民間人が一瞬のうちに命を奪われた。
今も後遺症に苦しむ人がいる。
ベトナムには枯れ葉剤をまいた。こちらも民間人を無差別に殺傷していて、
現在も苦しむ人がいる。
日本の最後の帰還兵、小野田少尉は戦争が終わったことを知らず、
ルバング島で孤独な闘いを続ける中、ルバング島民を殺害した。
現在、シリアでは化学攻撃により多くの民間人が苦しんでいる。
これらとナチスの殺戮はどこがどう違うのだろう。
アイヒマンは国に仕える者としてユダヤ人担当になり、そこでの仕事ぶりを
評価されユダヤ人輸送担当のトップになった。
ユダヤ人をガス室で殺すことに対し、否定的な意見を言っていたという証言もある。
原爆投下に関わった人は誰も処刑されていない。
枯れ葉剤をまいた人も処刑されていない。
名前すら分からない。
小野田少尉についても、彼の人生を考慮し、政府側はルバング島で殺人があったことを
最近まで隠してきた。
このアイヒマン裁判の後、アメリカではアイヒマンテストという
心理実験を行っており、平凡な人間が組織の上部に上がっていくと、
非道だと思われる行為も躊躇なく行えるという結論を出している。
ハンナは言う。
思考を止めてはいけないと。
組織の中に所属していると、個人は歯車になり、その進む方向へと動く。
サラリーマンでも思い当たるだろう。
感覚の麻痺。
ただ、ハンナのように思考を止めず、熟慮し、その大きな流れが悪い方向へと
進んでいると気づいた時、それは間違いです、
と小さな歯車のひとりは声をあげる勇気があるだろうか。
ナチスは許せない。
でも、全体を眺めると、なんだかもやもやが止まらない。
考えれば考えるほど、何が正義で、どうふるまうべきなのか、
考え込んでしまう。
哲学とはどのようなものかを感じることの出来る映画
投稿日
2023/01/21
レビュアー
松村 訓明
この映画は哲学というものがどのようなものかを感じることの出来る映画です。
アーレントという哲学者を通して、人は考えて強くならならなければいけないということを実感する映画でした。ジーンと来る映画を期待している方にはお薦めします。拙いコメントをお読みいただきありがとうございました。
戦いには支えが有った方が
投稿日
2014/08/06
レビュアー
KA
夫婦睦まじい事をそれ程この映画では強調する必要が有るのかと最初は感じたが、その支えが一つの安心感を映画の観客に与える要素になっている。
現実の世界と戦った哲学者の話だが、勉強不足なので、混沌とした現在の世界の情勢の中で哲学者や宗教家がどのように戦っているのか知りたい。
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ハンナ・アーレント
(C)2012 Heimatfilm GmbH+Co KG, Amour Fou Luxembourg sarl,MACT Productions SA ,Metro Communications ltd. ※ジャケットデザインは変更になる場合がございます。