声をかくす人

　イギリスの法の適用外におかれた人々によって建国されたアメリカは、人権を抑圧される痛みを誰よりも知っているからこそ、建国時において、人権を守るために「法の支配」と「民主主義」を何よりも大切な理念として掲げた。ただ、にもかかわらず、この法の支配と民主主義によって人権を守られる対象は、限られていた。すなわち、その理念に「共鳴」する「自国」の「白人」の「男性」だけ。これが、アメリカがいつまでも絶対的な人権の擁護者になれない、法の支配に服さない国家となってしまう弱点の最大の根源である。

　「ヒマラヤ杉に降る雪」で描かれたのが、偏見と差別にとらわれる人間が運用する「法の支配の弱点」であるなら、「声をかくす人」で描いているのは、そもそも「法の支配の適用を受けない、すなわち人権を持たない非人間を生み出すアメリカの残虐さ」だ。「あいつはテロリストだから」「反逆者だから」「黒人だから」「女だから」「戦争時だから」…。さまざまな理由をつけて、法の支配の範囲外を認めようとする圧力をかける。人権を持たない非人間を指定する特権は、一部の人間にのみ与えられている。

　この人権を守る対象を絞るアメリカのダブル・スタンダードは、その対象範囲を広げながらも、なお今も続いている。そして、今では、その害悪を世界中に拡散する困った大国になりつつある。イギリスから独立した、ある意味一番進んだ人権国家であったアメリカは、帝国主義を打ち倒す第二次世界大戦で大活躍し、戦後の国際秩序をつくるうえでも多大な貢献をした。しかし、それは大国として認められた国だけは、法の支配と民主主義に縛られない特権を与えるという限界をもった国際秩序であった。

　こうして、アメリカ以外の国々が人権を叫ぶようになると、アメリカは選ばれた大国として、その人権運動を弾圧する側にまわる。このアメリカのゆがんだダブル・スタンダードを克服し、新たな国際秩序の構築こそがいま求められている。それをするのは、アメリカのダブル・スタンダードのもとで一番、苦しめられている、人権の対象外におかれた人々と、彼らと連帯できる市民たちだ。

　レッドフォード監督らしい映画と言えばらしい。
　個人的な感想は、リンカーン大統領暗殺で揺れる国民の感情を早期納得を得るために冤罪を陸軍長官が押し付ける・・・これには怒りが込み上げた。
有罪と思い込み嫌々受ける弁護から変わっていく展開に最後まで緊張感を持ったまま観れる映画だった。。。
ジェームズ・マカヴォイ演じるエイキン弁護士は本当に素晴らしく、長官を演じるケヴィン・クラインは非情で残酷、そして何と言っても無実を訴える女性メアリー・サラット演じるロビン・ライトが◎！
　暗い映画ではあるので一人視聴がお勧め。。。

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リンカーン暗殺…
その共犯とされた、ある女性の裁判が描かれた映画。

ポイントは、
被害者が大統領であること、
戦時中の裁判であること、
民間人が軍法会議で裁かれたということ、
そして、被告が、有罪の決め手も無罪の決め手もない…
限りなくグレーゾーンだったということ。

とんでもなく、特殊な裁判！！

面白い映画では無かったけど…
とにかく、考えさせられた。
＜国＞と＜法律＞について……

国あっての法なのか…、法あっての国なのか…

国がなければ、法律は意味ないし…
かといって、法がなければ、国としてまとまらない…。

この映画では、
結局、法を無視した判決となっていた。

大統領暗殺という、国の一大事…
法（個人の権利）より、一刻も早い裁きを…
そして、国の安定を……みたいな……。

この裁判が正しいか正しくないか…
解らない…
あまりにも、特殊すぎる裁判で…
あまりにも、どでかい問題すぎて……。


公平な裁判をされなかった彼女は、可哀相だけど…
そこまで、ヒドいとは感じなかった。
なぜなら、
彼女が、無実という確信が無かったから…

無実っぽい事、言っていたけど…
私的には、最後の最後まで、彼女は、グレーゾーンのままだった。

実際の彼女は、どうだったんだろう？？

＊＊＊＊＊＊＊＊＊＊
「戦時に法は沈黙する」かぁ〜

とにかく、いろいろと…、何か考え深かったです……。

決して派手な作品ではないけど、よく見ると豪華な俳優陣。
裁判物ですが、リンカーン暗殺のこんな裏話は知らなかったので驚きでした。
裁判で感情に流されないように判断する難しさを再確認。

きちんと作っているいい作品でしたが、私には真面目というか硬すぎて映画としての面白さなどはあまり感じられませんでした。
もう一度見るのは無理そうです。

娘役、エヴァン・レイチェル・ウッドだとはエンディングまで気づかず。
出演シーンが多い割には見せ場がなかったような。
恋人役の女の子はかわいいと思ったら、「旅するジーンズ」とか「シンシティ」の子だったんですね。

しかし、この邦題はどういう意味？
「扉をたたく人」のパクリみたいで覚えにくい。
事前に解説など読まなかったし、史実も知らなかったので最後どうなるかわからず緊迫感が味わえたのはよかったです。

圧倒的不利な立場からどう戦うか。
それはスポーツでもビジネスの世界でも日々起こっている。
結果はどうあれ、逃げずに戦うことで気づけることがあると教えてくれる。