新少林寺/SHAOLIN

　時代背景が良く分からなかったので調べると、１９１２年の辛亥革命の翌年、清王朝が倒されたものの、海外諸国による侵略や国内の動乱で、軍閥たちによる私利私欲の争いが繰り広げられていた頃のお話だと知りました。山間の奥深くにある伝統と誇りに満ちた古風な禅寺、少林寺。民百姓を外敵から守り、正しき道を教示する村のシンボル的な存在。修行僧たちは方丈の下に一致団結して日々精進。健全なる肉体に健全なる精神が宿るという、宗教と武術が合体したお寺だから軍人と雖も足を踏み入れることは難しい。日本の歴史上の人物でいえば、寺院の焼き打ちで一山の僧とともに焼死を遂げた快川和尚の「・・心頭滅却すれば火も亦た涼し」に通じるものがあります。

　軍閥の将軍、侯杰（こう・けつ／アンディ・ラウ）は、邪な考えを起こしたことから野に下り、仏門に入って改心するという長ったらしいストーリーが続きます。少林寺拳法ＶＳ軍閥といっても最後は破滅させられる運命にある少林寺ですが、大師兄淨能（ウー・ジン）を筆頭に、淨空（シー・イェンレン）、淨海（ユイ・シャオチュン）などの決死の戦い。入道した将軍・侯杰改め、法名淨覚の名で捨て身の行動が逞しくも美しくも描かれています。このピリピリとした緊張感を和らげるかのように、厨房係のお惚け悟道（ジャッキー・チェン）と小坊主達の挿入シーンで一息付けました。どちらかといえばお硬い作品でした。

粗暴で傲慢な主人公が富と権力に執着するがあまり部下の裏切りにより最愛の家族を失うことで絶望を味わい、
辿り着いた少林寺で自らが行なってきた悪事、権力に執着してきたことがどれだけ愚かなことだったかを悟り命の尊さに目覚めていくというストーリーは、
真摯に武術と向き合おうとせずただ強き事のみを求める武術家が「天津一」の武術家を目指して他の武術家との戦いに執着し、
勝つ度に名声もあがるが、母・友人の助言に耳をかさず傲慢となっていき愚かな義侠心と名声を欲するがあまり相手を殺め恨みかわれる事となり、
愛する母と娘を失い絶望し身も心もボロボロとなり命さえも危うくなるが救ってくれた老婆とその孫娘が暮らす山里で温かな人達と生活を共にし
穏やかな時の中で改心・再生し中国武術を普及させた武徳のある実在した武術家を描いたジェット・リー主演「ＳＰＩＲＩＴ」のストーリーに近いかなと。

酔拳・猿拳・蟷螂拳等の少林武術のシーンがふんだんにあれば良いのかどうか、
前作を凌ぐ出来栄えとなっているか否かと考える事はじつに些細なことなんだと今作品を観て思いました、・・なんてね。

馬車と共に崖下に落ち瀕死の愛娘と一夜を過ごす候杰が少林寺の鐘音を聞き少林寺に駆け込む場面は、
前作「少林寺」で将軍の臣下達との闘いで手負いの李連杰が意識が薄れゆくなかで少林寺の鐘音に手繰り寄せられるように寺に駆け込むという場面を
踏襲しているようで作り手側の前作を慕う気持ちが所々うかがえられて良かったです。

慈悲の心と武術を以て道理の合わぬ事には屈せず世の平安と心の安息を求める弱き者達を助け守る為に命をかけてまで闘う少林寺僧達はまさに義侠の士ですね。
暴君だった候杰が仏門に入り帰依し最後は大きな阿弥陀仏像の手のひらに落ちていくシーン、
曹蛮が無残に焼け落ちた伽藍と無数の屍の山に虚ろな眼差しで何かを手繰り寄せるかのように嗚咽するシーン等も感慨深いものがあります。

“人生は縁だ、縁に従えば安らかになれる。”

作品の意図とするところが伝わってくるようで記憶に残る優れた作品だと思いました。

慈悲もなく、血も涙もない「暴君」が、ある出来事から改心していく…「少林寺」という場所からしても、内容的には古くからある「定番」ものなんだけど…やっぱり「殺陣」技のキレ味は「抜群」だし、剃髪でさえ「ドラマチック」に撮影されているし、セット？とＣＧの組み合わせだとは思うが、緻密で細密な圧倒的に再現された「荘厳」な映像は素晴らしいねぇ〜♪

ラストは、せつない「バラード」とリンクしながら、現在の「少林寺」とオーバーラップするんだけど、この映像たちがまた憎らしいほど心に染み入ってくる…

文字通り「アジアを代表するスターたちの豪華共演」だけあって正統派ヒーロー筆頭のアンディ・ラウ、今や重鎮となったジャッキー・チェンの存在感…ヒーロー＆ヒールともに芸達者が勢ぞろいで、見応えたっぷりだった♪このジャンルの作品は個人的に大好きだ♪

少林寺は出てくるものの、リー・リンチェイ主演のとは異なり、なんだか人生を語るようになった本作。
単純な格闘物ではなくなってしまったぶん、昔のカンフー映画と違い、すっきり感は減ってしまったかと。
ただ、集団でのアクションや映像、シナリオ自体は結構良く、映画としての完成度自体は高いと思うので、
単純なカンフーアクション物ではないということを承知の上でなら良いかと。

3点

なにかが足らん。もう1歩かな。