画家と庭師とカンパーニュ

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普通なら画家として成功したなんて、なんてすごいことだろうと思う。自分の夢を実現して、金銭的にも問題なく過ごしてきた画家と、長年国鉄職員として苦労してきて、決して豊かな生活をしてきたわけではないけれど、今はやりたかった庭仕事を始めた庭師。

そんな二人の人生、生活が淡々と語られる。これという　事件があるわけでもない。

でも、決して飽きることなく見ることができました。

絵を描くことも、野菜を育てることも好き。いや、きっと好き。
いいなあ、あんな菜園を持って絵を描いて過ごすなんて・・・


まったく違う人生を歩んできた二人が、どこかで衝突するんじゃないかと思って、ちょっとどきどきしましたが、そういうこともなく、よかったです。

最後に、庭師が野菜のそばで寝転んでるところ、
画家が庭師の好きな絵を描いて個展を開くところ・・・
こみあがってくるものがありました。
ジワリと感動です。


画家の絵はそんなにいいと思わなかったのに、最後の個展の絵は良かった〜！！

便利なもの、簡単なもの、楽なもの。
それらは人の目を曇らせる。

カーテンの隙間から差し込む朝日。
青々とした葉を縫う木漏れ日。
熟れた果実についた朝露。
友とのたわいの無いおしゃべり。

なんでもない日が、
なんでもある日に変わることだって、ある。

日常をもう一度見直してみたら、何か新しいことが見つかるかもしれない。
今日を生きることの美しさが、すぐそこにあることにきっと気付ける。
素晴らしい。とても素晴らしい映画でした。

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たいへんイイ映画だと思いましたが、これは正に「フランス」の「年寄り」が作った「フランス」の「年寄り」のための映画だとも思いました。私は「フランス」人ではありませんが大のフランス好きですし（フランス映画は苦手ですけど）、何より十分「年寄り」なんで結構楽しめましたが、「日本」の「若い人」にも楽しめるのか？とちょっと心配になりました。でも、どうもレビュー読んでみたら「若い人」にもかなり好評なんでちょっと意外な気がしましたね。
この映画、フランスの「田舎（カンパーニュ）」の資産家の家に生まれ、パリに出て「画家」になったカンバス（ダニエル・オートイユ）が「年寄り」になって故郷に帰って来て、幼馴染みでずっと田舎で労働者（国鉄職員）として暮らして定年後「庭師」になったジャルダン（ジャン＝ピエール・ダルッサン）と再会する、という「設定」だけを作っておいて、あとは二人の取りとめの無い会話と二人の日常を田舎の風景の中で淡々と描写するだけという、「静かで穏やか」と言えばその通りだけど「起伏の無い退屈な」映画であることは間違い無いんですね。それでも私が最後まで全然飽きずに観られたのは、私にとっての「フランス」のイメージに余りにもジャストフィットしているのが面白かったことと、最近とみに自分が「年寄り」臭くなって来て妙に人生を振り返るクセが出始めているもんで、そこにもフィットしてしまったような気がします。
実に「フランス」だなぁ、と思った点は幾つかあります。先ずとにかく「田舎」が広大で豊かで美しい。フランスって基本的には「農業国」ですし、パリを唯一の例外として近代「都市」文化は実はかなりマイナーなんですね。「田舎」に暮らす人々の「都会」に対する「引け目」は全く無いんじゃないでしょうか。そこは日本やアメリカとはだいぶ事情が違うと思います。しかし「階級」意識が大変強いのも確かで、さらに「芸術」特に「絵画」を崇拝する意識はかなり特別でこれも日本やアメリカとは全然違うように思えます。カンバスとジャルダンの何気ない会話の中に醸し出される微妙な緊張感、「ドラマ」の匂いは「都市」と「田舎」の相克では無く「上層（資産家、画家）」と「下層（労働者、庭師）」のそれであるように思えます。そして何と言っても「愛」に関わる意識の大らかさが実に「フランス」なんですね。妻一筋のジャルダンと浮気性のカンバスはこの面でも対照的ですが、お互いの「愛のかたち」を批判するような野暮は一切しません。これは二人の「友情」から来るのでは無く正にフランスの民族性だと思いますね。
で、どこが「年寄り」のための映画なのかと言うと、ジャルダンという男は登場の最初から「死」の影を背負っているように私には見えたんですね。彼の言葉の端々に顕れる恬淡とした人生観にはかなり若い頃から「死」を意識して生きてきた者の「悟り」に似た無欲さが感じられるんです。かなり前から池の鯉を死神に擬えて日々を過ごしてきたんでしょう。一方同い年のカンバスは己の才能の限界に悩み、若い愛人のボーイフレンドに嫉妬し、妻への未練も断ち切れないという「煩悩」一杯の生活から逃避（Reset）を図って戻って来て、偶然ジャルダンに遭う。カンバスもまた自分のトシを感じ無意識に「死」の影を背負っていたんですね。そして二人は急速に友情を育むことになる。「最高の人生の見つけ方」という映画のレビューにも書きましたが、男同士の友情なんて「死」を意識して始めて成立するもんだと思うんですね。子供の頃一緒に悪戯やったくらいじゃダメです。これはなかなか「若い人」には理解出来んでしょうねぇ。
付け足しのようですが、主人公の男優二人も良かったけど女優陣が皆素敵でしたね。ジャルダンの妻を演ったヒアム・アッバスはこれで3度目（「シリアの花嫁」「扉をたたく人」）ですが、実にイイ。名前知りませんがカンバスの妻と愛人もなかなかです。やっぱり少しフランス映画漁ってみるかな。

フランスらしい、文字どおりの絵画的な映画だ。
壮年期を終わりかけてる男ふたりの友情を淡々と描いたもので、ふたりの会話だけでほとんどの場面が進んでいくが、不思議と退屈さを感ぜず、むしろ心地よく観続けることができる。
登場する女性がみんな品のいい美人。私にはフランス人女性が美人というイメージはあまりないが、ここに出てくる女性は好感度大。モデル系のようだけどファッション臭さがない。
「歳の差カップル」にいやらしさや変な違和感をあまり感じないのも、お国柄かな。
『アバター』のような刺激に満ちた大作に浸かっている人も、たまにはこんな作品をご賞味あれ。

〈トリビア〉なぜかセリフ中に“日本”の事がよく出てきます。

最後にじんわりと染みてきます。
子供の頃と、少し大人になった頃と、随分大人になってしまってから。
それぞれに、相手が同じでも、受け入れられる度量が違うように思う。
真ん中の時期は他人どころじゃなくて、自分の世界でいっぱいいっぱい。
いそがしさに隠れてはいるんだけど、自身の間口が狭いと気付くこともしばしば。
子供の頃、お互いに受け入れていた、あるいはかけがえのなかった相手と
その大変な時期を越えて再会できたら、こんなふうになれるのかなぁ。

どこかで、嫉妬や隔たりを覚えることがあるのかと思っていたら
そんな事件は微塵も起きなくて、本当に平和に、ただそこにいる。

自分の目に見えている世界は小さいけれど
その世界を構築しているそれぞれすべてに世界があって、
それらは過去とも未来ともつながっていて、だから世界は無限に広がる可能性がある・・
当たり前のことが素敵に思える。
毎日一生懸命生きていたいなぁと思った。
毎日が素晴らしいはずだもんな。