蝉しぐれ

公開当時、劇場まで足を運んで観たのです。
当時は(まだ)若かったためか、許容範囲が狭くてですね。原作を描き切れていない！とガッカリしたものでした。配役にも不満などありつつ、ドラマ版の方が尺が長いため比較的原作に近い描かれ方がされていて、どうしてもドラマ版の方に軍配をあげてしまっていた。

主人公の文四郎は下級武士の息子にして、秘剣の奥義を授けられた剣の達人。公開当時は、これを重大に捉え過ぎていて、どうも染五郎氏のイイトコの“坊ちゃん”然とした風情では醸し出せない、その辺りの存在感はドラマ版の内野聖陽の方が勝っていると思っていました、それこそつい最近まで。

しかし、あれから15年？突如本作での染五郎さんの静謐な佇まい、欅御殿での立ち回りが脳裡に浮かぶようになり。木村佳乃さんのやわらかな笑顔の記憶なども相俟って、また観たい！と、手が伸びてしまいました。

15年近く経っても忘れない。それは、劇場画面の大きさのためなのかとも、もう一度観るまでは思いましたが、役者の透明感、存在感が大きいと今は思っています。

つまり、染五郎さんは美しかったのです。記憶に焼き付く程。それが、公開当時は鼻につくというか、キレイすぎて、なんかチガウ、とか思ってしまったのでしたが、その辺り、今あらためて観たらどう感じるのか。そういう興味もありました。感想、変わりました。

「静謐な美しさ」、所作のうつくしさ。庄内地方の風景の美しさと相俟った、木村さんの「ふく」の一途さ健気さも、記憶に残る美しさ。このおふたりでこうしてフィルムにおさめてくださったこと、監督に感謝申し上げます。ありがとうございました。たぶん、また15年後くらいに観ると思います。

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ＮＨＫでの放送を観、魅かれて原作を読み、期待して映画を観ましたが････
がっかりでした
この作品は、政争に巻き込まれながら剣を磨く独りの青年の成長の物語ですが
暖かい友情やほのかな恋、そして藤沢作品独特のまるで「そこ」に居るかのような細かな情景描写が藤沢作品の最高傑作のひとつと
言われているものです

困窮の極みの最中、父の遺言を守り剣を磨き、ついに秘剣「村雨」を伝授されるまでに至った精神力の強さも見どころの一つですが
この映画の中ではそんな孤高の剣士の姿は無く欅御殿での乱闘シーンはあまりにも腰ぬけ過ぎてガッカリしてしまいました
（秘剣「村雨」さえ登場しません）
また、このシーンでは「七人の侍」のパクリもあり･･･
ラストはラストでとても良い雰囲気で終れていたのに
欅御殿のシーンのせいで２度は見る気がしませんでした

ただ、木村佳乃さんの透明感のある美しさは見事でした

アルゴの渋滞で面白い映画と思った黒土監督、山田監督の弟子で藤沢作品を舞台とした、委員会（博報堂vs電通、松竹vs東宝、日テレvsテレ朝、前者が山田作）も巻き込んだ師弟対決。TVでも撮っている経験からか、上手にまとめてきている感有りで、そこが逆に詰め込みすぎに見える処かもしれません。またマジでお祭りやってて、花火あげてたり、庭先に植え替え出来ない野菜が育ってて、緒形さんのナスのとり方も正しい、遠方の野良仕事も腰が入ってる、四季を通した撮影等、意外な処にマジメな演出でビックリしました。
パートの前後どちらが良いかで賛否が分かれますが、仲良し３人の少年時代はスタンドバイミーを見ている様な、ラストはマディソン郡の橋の様で胸熱になります。日本アカデミー賞は最優秀は全て三丁目に持っていかれましたが11部門で受賞、タイミング的に運が悪かったのか、逆に1つも取れなかったのはどこか押しが弱かったという事かもしれませんね。

- - 時代劇の復活を切望中 - -

美しい日本の風景と叙情的な音楽がマッチし、上質で静謐な仕上がりになっている。
文四郎とふくの決して結ばれることのない切なさ、静かな会話の中で２人の燃えるような思いが伝わってくる。
市川染五郎の演技が秀逸で、殺陣でも迫真の演技を見せる。
本当にいい映画だ。

内野聖陽と水野真紀のシリーズドラマ「蝉しぐれ」を見たが、キャストで見る限り個人的な趣味だが、この染五郎と木村佳乃のほうがよかった。藤沢周平の話は、いつでも藩の上役の専横とそれにまきこまれる純粋な心のせめぎあいでワンパターンだが、その中で起きる不条理な関係を染五郎と木村佳乃はよく演じていた。こういうひそかに燃える心を押さえて道を踏み外さない人間模様に感動できるのは日本人だけかもしれない。欧米人なら、欲情を抑えない合理的な感覚で平気で再婚し、それが幸せと言う結論に至るのだろう。日本の現代も同じだが、やはりふつうの道は曲がりくねるが、曲げてはいけないのは人の道だろう。