モダン・タイムス

wikipediaによると、この映画は『自由を我らに』という1931年のフランス映画のパクリだと非難され、チャップリンはフランスの映画会社から告訴されたらしい。
確かに似ているのだが、この類似は図らずもチャップリンの非凡さを証明する結果となった。

テーマのまとめ方といい、笑いのセンスといい、芸といい、チャップリンの才能はとにかく飛びぬけている。

工業機械の歯車のひとつとして人間性を否定され、搾取されている社会の底辺の人たち、といった構図が実に明確。
そしてそんな冒頭から、警察や政府や資本家など権力に圧迫されながらも、人間らしさをとりもどしてゆく過程が秀逸なユーモアに彩られながら描かれる。

なんとなくインターネットでのコミュニケーションがさらに世を席巻し、人間が通信の中継地点でしかなくなった未来なんかを想像すると、スマホをいじる時間もほどほどにしようなんて気にもなってくる。

俺にとっては『独裁者』と並ぶチャップリンの傑作。

作品自体は、先の大戦中なんだけど、現代に通じるものがあって、その先見性にびっくり。ひたすらネジをまわす、なんていうのは面白いし、今でもあったりするんだからねぇ、５０年以上たっても変わらんのは人間の愚かさなのかな。なんて、深く考えたりしてしまうような作品です。でもまぁ、５０年以上たっても思うのは、動きの素晴らしさ。サイレントだ、トーキーだ、と当時は色々言われていたんでしょうが、この動きですよ、これ、素晴らしい！！今はこんなんで笑わせてくれるものってないもんなぁ。万国共通なのに。

最後の方で、今まで一切しゃべらなかったチャップリンが喋る、というか歌う。おぉ！！このひっぱり具合、すごいね。多分、当時としては「チャップリンの肉声がようやく！！」っていう感じだったんでしょう。そんなことを考えたりしました。

全編を通すとドタバタ喜劇、よく出来ていますが、ぼぉっとみていたら面白かったことしか覚えていない。でも、後々観ると・・・「なるほどなぁ」って思うところが多くて、チャップリンの凄さを感じます。やっぱり、すごいな・・・今、こんな風刺映画はできんだろ・・・短絡的な、悪口のオンパレードの映画ばっかりだもん。

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　本作はチャップリンの芸達者を改めて見せつけられる。人間にこんな器用な動きが出来るものかと感心する。曲芸師か軽業師一本でも身を立てられたのではないだろうか。
とくに玩具売り場でのスケートや、後半の歌の場面などは目を見張り、多才かつアイデアマンの所以だろう。
　物語もドタバタ喜劇のように小気味よく展開してゆくが、無駄がなく、全部が繋がっているように見える。それは美しいモザイク模様に似ている。
やはり印象的なのはラストだろう。頑張っていけばなんとかなるさ。笑顔でやっていこう。人生行路とも言える一本の道に二人のシルエットは、なんともありふれている。でも私はこういったありふれた普通のメッセージが好きだ。
　チャップリンだからこそ、説得力と温かみが感じられる。それはたんなる一時の感傷ではない、現代にも通じる辛辣な批判が込められているからこその、彼一流の優しさだと思うからだ。★★★★★☆

最後のチャップリンが優しかった…。

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「サイレント映画なんて、今見たら絶対面白くねえだろ」なんてイメージを粉々にブッ壊してくれたのがバスター・キートン、そしてチャップリンでした。
そんなチャップリン映画でも１、２を争う傑作がこの「モダン・タイムス」。
トーキーが主流となり、サイレント期に活躍した俳優や監督が次々と消えていく中、チャップリンは「言葉」よりも「動き(アクション)」で人の心に訴えるサイレントにこだわりました。
他の俳優がトーキーによって悪声がイメージダウンに繋がり落ちぶれたのに対し、舞台出身のチャップリンやリリアン・ギッシュはトーキーでも通用しました。
キートンも舞台出身で声は悪くなかったのですが、渋いバリトンボイスはキートンのイメージとは合わなかったようです。
オマケに映画製作会社の規制もあってか、キートンは自由に映画を作らせてもらえず、サイレント期のような凄味のある映画を作れなかったそうです。

このように俳優仲間の失敗は後を絶ちません。それでも、チャップリンはサイレント映画を続けたのです。

チャップリンの考え、私にはよく解ります。
現に初期のトーキーは音が出せるようになったからといってやたらセリフばかりで退屈な映画が多い。そういう監督はほとんど失敗に終わっています。
逆に、サイレント映画の“動く”事にこだわった監督は息の長い者が多かったです。

今の映画でも、だらだら喋り続けるセリフばかりの映画は総じて退屈なものが多いです。
例外として「十二人の怒れる男」等のセリフ劇は、一言一言が重要な意味を持っていますし、何より体全体を震わせながら熱いセリフを吐いてくれます。
そう「言葉によるド突き合い」。だからこそ面白い。

さて話を戻しますが、チャップリンはサイレント映画にトーキーの“音”を巧みに混ぜて演出しました。
「街の灯」も上手い演出でしたが、個人的には「モダン・タイムス」の方が進化してると思います。
サウンドの中で、映像に合わせて響く機械音やベルの音。そしてラストのダンスシーンはチャップリンの歌声が収められています。
「歌の時くらい音を出したいな」と誘惑にかられたのか、それとも「音ってのはこういう時に使うんだよ」とアピールしたかったのか。いずれにせよ、「ティティナ(ティティーナ)」の演奏が美しい見事なシーンです。

「モダン・タイムス」の冒頭はフリッツ・ラングの「メトロポリス」を思い出すような工場の場面から始まります。
部品を流す機械、その上で機械のように部品のボルトを締め続ける人間たち。延々と続く流れ作業で狂ってしまう人間の恐怖と滑稽さ。
冒頭の工場のやり取りだけでも面白いのに、後半はチャップリンが貧乏と向き合いながら起こす騒動でさらに盛り上げてくれます。
チャップリンが捕まるのは「偽牧師」以来じゃないですか？散々法権力から逃げ続けてきたチャップリンも、とうとう捕まってしまう。
世の中に対する皮肉がたっぷり込められています。ただ、そこはチャップリン。
何度捕まろうが何度でも戻ってくる。愛する者のためなら何度でも。愛が成せる展開だ。
「今回がダメでも、また次があるぜ！」と語りかけてくれるようなラストシーンが素晴らしい。
つうかポーレッド・ゴダードがスゲエ可愛いんだが。美人揃いのチャップリン映画でも指折りの美人だ。「ライムライト」のクレア・ブルームもとびきりの美人だった。
モチロン真のヒロインは３０作品で共演したエドナ・パーヴァイアンス嬢です。
クライマックスまでギャグの連続で楽しませてくれる傑作！