陰日向に咲く

だいぶ前に原作を読んで劇団ひとりの才能に唸った一人である。
私は映画よりも、登場人物が交錯するおもしろさや人物の心情を深く知ることが出来る原作がおすすめ。
しかしながら、映画では「人とのつながり」というテーマをはっきりとさせ、感動させられる作品に仕上がってる。

個人的には、モーゼが雨の中走るシーンでの西田敏行の表情に注目して欲しい。宮崎あおい、三浦友和など素晴らしい演技をする俳優陣が勢ぞろいしている。

映画を見るきっかけは誰の作品かだったり、出演者だったり、ストーリーだったりいろいろ。でもそれはきっかけに過ぎない。
そこから自分がなにを感じるか。

１回目みた時、正直何がいいんだかさっぱりわからなかった。
２回目。ジワジワ〜っと染みでてくるような感じがあった。
これは主役達の話ではない。
その他大勢どころか人生で陽のあたらない人たちの話だ。
自分は一人ぼっちだと思っていたのに実はいろんなところで人とつながっている事に気付き、「人生捨てたもんじゃないな」「明日はきっと晴れる」と今までとちょっと違う気持ちでこれからを生きていける話。

借金地獄・田舎娘・売れない芸人・ホームレス・サラリーマン・ストリッパー（脱がないけど）・崖っぷちアイドル・アキバ系オタク…
それぞれが小さな思いを胸に生きているのに、そんなところまで陽はあたってくれない。
売れっ子になりそうな芸人の夢は、立派な芸人になる事ではなく、好きな人の幸せ。ただそばにいるだけで幸せだった。
母親の気がかりは、息子にとって良い母親であったか、息子を幸せにできたか、ただそれだけ。
アイドルが自分に振り向いてくれても願うのはアイドルの成功。ファンとして応援する。

世の中って主役ばかりに目がいっちゃうけど、実はこういう人たちが支えあって生きてるんだよね。
自分のことより、大事な誰かのことを優先してしまうようなちょっと気の弱い人たち。
そこにライトがあたったのが嬉しい。

それにしても塚本高史ってカッコイイのにヲタの役が似合うよね。

Q. この作品で一番良かったのは何ですか？
A. エンディング曲です。(即答)

とにかく映画で言いたいことは主題歌のケツメイシ「出会いのかけら」で全部。
歌詞を聴けばすべてが分かるし、メッセージ性もこの曲のほうがある。
ので、本編は重要じゃありません。

ケツメイシって好きじゃなかったんですよね。私。
もともとHIP HOP自体、好きではなくて。
友達と行った夏フェスでたまたま出演していたケツメイシ。
有名どころだし特に見たいアーティストがかぶってなかったから、
暇つぶし感覚でみにいきました。
やはり大御所。一番大きなステージで、おそらく2万人以上の人がいたのではないかと。
音楽が流れ出した途端に会場が沸きます。
そして、繰り出される曲すべてが知っている曲なんですね。
嫌いなのに、知ってる。
んでもって、会場が笑顔、笑顔、笑顔。笑顔で満たされていく。
あんなピースフルなアクトってなかなか見れないと思うんです。すげぇなぁ〜
まったく好きではないアーティストであんなに楽しめたのはあれが最初で最後。

つまるところ、この映画は彼らの歌に助けられてます。大いに。
予告編ではあの曲がものすごい雰囲気を盛り上げてくれる。
そして、だまされるわけです。すごいいい映画なんだろうなぁ〜

わたしは原作を読んでないんですが、
映画を見た限り原作は結構いいんじゃないかと思います。
映画ではいろいろと設定が変わったりしている(意図がわからない)みたいなので、
もうちょっと展開とかが面白いのかも。
もしこの作品に興味があるなら、小説を先に読んだほうが楽しめるんじゃないかな？
と、読んでもいない私が薦めてみる。

評価７２点(１００点満点)
劇団ひとりの原作を映画化した作品。なかなか上手く仕上げているが、もう一つ説得力というか心に響くものが欠けているようには感じる。

東京に暮らすダメ人生を送っているいろんな登場人物が、なんとか花を咲かそうと懸命に生きている姿は、やはり人生いろいろで、生きるということの大変さ、時には楽しく、切ないものだということを教えてくれる。

最初はなんの脈絡もなく、それぞれの生き様が展開されてゆくが、ちゃんと最後にだんだんとつながってゆくところが面白い。
原作の非凡なところだろう。
特に大きなヤマ場もなく淡々と進んで行く中に、いろんな心温まる感動的なシーンが用意されている。

嵐が過ぎれば穏やかに陽がさす。人生というのはそういう繰り返しなのだろう。若手とベテランが上手くかみ合っていい雰囲気をだしている。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

　本が流行り始めた頃、この題名だけで涙が出そうになった。
　何軒か本屋を歩いたら品切れで、その後、読む機会をついに逸してしまった。
　ってことで結局、映画の方を先に観てしまったわけです。

　群像劇。しかも、あまりに狭い世界で起きている出来事で、大都会東京では、こんな偶然は絶対にありえないのですが、そんな設定の不自然さがチャラになるくらい、１人１人の描き方がリアルで心に響いてきた。
　それぞれの人物が抱えている「どうしようもなさ」がいい。
　人間はそんなに強くない。
　自分にも色々あるように、電車で横に座っている人にもそれぞれドラマがある。東京にきて、自分の存在の小ささに打ちのめされ、少し寂しい思いをしたことがある人には共感できる、そんな物語。
　メインのサークルとは全く別に存在する、塚本高志と平山あやのエピソードがまたほっこりポイントをうまく作れていると思いました。

　ただ、号泣ポイントは絞った方がいいですね。ちょっとしつこすぎました。
　ジュピターさんのご遺体の前でのやり取り。ここで号泣。
　しかし、その後のジュピターさんの手紙ですーっと涙がひいていく。これ、要らなかったんじゃない！？
　彼女が、彼の正体を知ってたってことくらい、みんなわかってるし。缶カラ開けたら、しなびたお札が出てきました、っていう演出だけで十分じゃないの？
　感動させたいという気持ちが裏目ったか、この編集しきれない未練がましさが本作の残念ポイントだったように思いました。