あるいは裏切りという名の犬

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　ひとに好かれるかそうでないか、本人の心がけ以上に持って生まれた天性のような気がする。仕事の実力は互角でもドニ（ジェラール・ドパルデュー）にはそれがなかった。

　部下には慕われ上司には可愛がられ美人の妻と娘からは熱烈に愛されるレオ（ダニエル・オートゥイユ）とは大違い。それにコンプライアンスを無視して悪漢を成敗するフランス版ダーティハリーみたいなレオ、その直情径行さが愛される、はもともと出世などに興味はない。ライバル視して熱くなっていたのはドニの側だけでむなしい一人相撲だ。人間の格で及ばないのはドニもよくわかっている。だからよけいに皆が認める地位がほしい、権力と名誉がほしい。
「嫌われる男」の孤独と焦燥を演じてジェラール・ドパルデューは立派だった。わかるよ、その気持ち。悲劇の英雄オートゥイユだけではなく、出世する以外に劣等感を克服する術のなかった友だちのいない淋しい男の、あっけない死に様にもため息ぐらい一つ、ついてやってください。

　それにしてもパリ警視庁の荒っぽさにはびっくり。情報提供者を襲った犯人を拉致し素裸にして穴に投げ込み、有り金巻き上げる。暴力団と変わらない。強盗一味のアジトを襲って皆殺しにしようと計画する。戦争ではないんですから、司法に委ねるべきでしょうに。送別会では店内で銃を乱射する。
「フランスの警察官は法に服さない。警官による虐待が野放しにされている」とアムネスティで取り上げられたそうです。この映画をみて納得しました。フランス人は警官が嫌いとのブログ記事も見つけました。泥棒にあって警官を呼んだら彼らも物を持っていこうとしたケースもあったとか。原題「オルフェーブル河岸３６番地」日本流だと「桜田門」に、フランス人は顔を引きつらせるんだろうか。

最初に大量の人間が出て来て、人の見分けが着かない間に話が進んでしまったので、途方もないほど置いてけぼりを食った。
話が動かなかった前半は、まっっっったく意味が分からなかった。

プレートを盗んだのはどっちのグループ?
そんな所でつまずいてはいけません。

ハリウッド映画に慣れていると
白人と黄色人種と黒人と、特徴のある人ばかりがいろいろ出てくるので人の見分けがかんたんだが、欧州の映画はおしなべて白人ばかり出てくるので顔の見分けがつかないらしい自分の目をようやく自覚した(笑)
外国人の顔の見分けがつかないと、この映画は酷く厳しい。(当たり前だけれど)

母曰く
「ざらざらした顔のひとばかりやな」


ハリウッド映画が見やすく、ヨーロッパの映画がつまらなく感じる原因は『顔の見分け』だったのかもしれない。

話は確かに緊迫していたのだけれど
最後の最後まで、誰がどっちのチームか把握できなくて迫力が半減した。

顔の見分けが着くようになったら、ぜひとも見直したい映画だと思う。

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正義を行う者が必ずしも報われる訳ではないと言う重いテーマ。
オープニングは刑務所からオッサンの啜り泣く声が聞こえると言う衝撃的なモノで、その後は写実的に人物の相関図を見せ、「良い警官・悪い警官」「運の良いヤツ・悪いヤツ」「正義の中でも息づく悪」等を渇いた語り口で見せてくれる。
良く有る「チャラチャラ」した軽いサスベンスではなく、じっくり見せてくれる大人向けのハードボイルド。
ゴクタマに有る「フランス映画って、やっぱスゲー」と言う部類に入る傑作だと思う。
因果応報が有ったとは言え、善を貫くには代償が大きく付きまとう
年金問題や国力の低下にしたって何処かで誰かがほくそ笑んでると思うと虫酸が走るが実際には何も出来ない。
耐え難いクツウ…。

役者も上手く画面に嘘臭さががない。
たまにはカタユデも良いものだ。

ヨーロッパの映画の画質が好きだ。微妙な中間色のグラデーションと、影を効果的に用い光を鮮明に写すところとか。

本作を観てて「ヒート」を思い出した。激しい銃撃戦の中で、男達の友情・プライド・確執・対決を描写し、同時に男女の愛を描いた傑作。それと同様のニュアンスが本作にもあった。
本作では男女の愛に加え、親子の愛も描かれていて、葬儀のシーンでの親子のやり取りにはグッとくるものがあった。歳を取るにつれこの手のシーンに弱くなる。（私にとっては反則技）

クラン警視の奇妙な行動に「？」は有るものの、キレキャラなんだと自分を納得させつつ観てると、途中で話が少しダレて来たりもする。が、レオがはめられる件で俄然話が面白くなってきて、ラストの展開にそうきたかと、膝頭を叩きたくなった。あの場所は“駐車場”だったのかな？

あと、気になるのはかっこ良すぎる邦題とリメイクの事と、ジェラール・ドパルデューの鼻の頭が割れてること（笑）ぐらいで、結構お勧め。
渋くて深みが有りまろやかなフランスワインをご堪能あれ。

悪党すぎるドパルデューと、どこまでもいい奴のダニエル・オートゥイユ。ラストも読めてくる、単純なストーリーであるものの、なぜか見ごたえがあるのは俳優の力としかいいようがない。特に男女のねっとりとした情の絡みがどうもエロい。いいなあ、あのエロさがフランスならではの味だ。ダニエル・オートゥイユは口が小さいなあとしみじみ思うけれど、いぶし銀の魅力を放っている。ドパルデューよ、なんで俳優になれたんだろうと不思議に思うけれどやっぱりどうも厚みのある存在感だ。どんな二枚目の若造でも太刀打ちできない俳優たち、おやじパワー全開です。