家の鍵

生まれた子供が障害児だったときに、特に若い夫婦の場合、離婚してしまうことがかなりあるそうです。日本だとその子供はどちらかの祖父母がひきとって育て、親である若者はまた別の相手と世帯をもって何事もなく生きていくことが多いのですが、欧米ではそういう子どもを育ててくれる施設があるんですね。ジャンニが15年ぶりに会った息子と数日間のふれあいで、障害のある子どもを引き取って世話をしようと思うのは、血のつながりがそうさせたのでしょうか。それとも、たまたまジャンニが数か月前に二人目の子供の父親になって、父親という自覚がめばえていたからでしょうか。考えさせられました。

恋人を出産で亡くし、産まれてきた子供は障害をもった。
その事実から目を伏せた父ジャンニは１５年ぶりに息子に会う。
人間の弱い部分が、善悪交えずに、静かに描かれる。
とても重いし、とても温かい。

次の２シーンが私の胸を特に締め付けた。
−パオロが、検査のために数名の医師たちの前を
何度も何度も往復して歩かされるのを見て、
ジャンニが耐え切れなくなって、抱き寄せるシーン。
−ラスト・シーン。

シャンニがパオロを抱擁したり、顔を拭いてあげたりする時の、
優しい眼差しと、柔らかい動き。愛情が溢れている。
８ヶ月の赤ちゃんがいるのに、パオロと一緒に暮らすのに同意した
奥さんも素晴らしい。
イタリアは障害支援が盛んなのだが、「何故にイタリア？」と常々思う。
この映画に描かれている人々（ドイツも含む）からも、
その優しさが感じられた。

それにしても、Kim Rossi Stuart　はカッコイイ！！
こんな美形、観たことがない。非の打ち所がないハンサム。
頭も良さそうだし、人格も優れてそう。
はぁぁぁ。
こういう人、いるんだなぁ、この地球上に。

目の保養にも、この映画はお勧めだわ。

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恋人を難産で失ったショックで、障害を持って生まれた息子を恋人の兄に預けっぱなしで１５年も放置！？
と、あらすじを見てポカーンとしてしまったのですが、確かに当時若かったジャンニにはショックなことかも。自分には荷が重い、と逃げてしまうのは仕方がないかな。
そんな彼も時が経っていい年になり、別の女性と結婚して子供も生まれたらしく、親としての責任感とか色々芽生えてきたんでしょうね。見捨てた形になってた息子をリハビリセンターに連れて行くことに。
リハビリセンターで出会ったニコールが、娘が重い障害を持って生まれたことによって、やりたいことも何もできなくなってしまった、いっそ娘が死んでくれたらいいのに、と淡々とした口調ではありましたが、心中を吐露したシーンに、「こういうのは奇麗事ではすまされないのね」とぐさっときました。
子供のうちは周囲の同情もあるし、親も若いから頑張れるけど、子供が成長したら？自分が年を取ったら？この生活はいつまで続くの？絶望的な気持ちになります。
これまでパオロを育ててくれた恋人の兄とやらも、持て余し気味になってたんじゃないでしょうか・・・。パオロも「いい子にしてないと追い出される」的な発言をしていたし・・・。
最後に、ジャンニはパオロを引き取って一緒に暮らそうと決心しますが、「えっ？終わり？」と唐突に終わった感あり。
奥さんとのこともあるし、色々あるでしょうね。めでたしめでたしでは終わらない。

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ラストシーンが重く残る。傷害を持つ子供と一緒に暮らしていくということは、一時の情愛や同情からでは続いていかない困難が待ち受けているだろう。１５年の時間を経て、主人公ジャンニ（キム・ロッシ・スチュアート）の涙は、その苦難の道を歩んでいこうとする覚悟であった。

それを際立たせるのは、病院で一緒になった同じ障害児を持つ女性ニコール（シャーロット・ランプリング）の存在だ。彼女の述懐は、彼の今後を予兆するものである。

全体が淡々としています。終わりもかなり唐突で、思わず「えっ！？」と声が出てしまいました。「これから親子仲良く暮らしていこう！めでたしめでたし」という上がり調子ではなく、障害を持った息子と向き合っていくことの困難をはっきり感じさせる終わり方です。
心温まるふれあいに、やっぱり親子だなあとしみじみしたかと思うと、あえて父親の庇護を拒絶するかのようなパオロ。彼は父親やまわりの人間を試しているかのように、挑戦的な態度を取ります。まわりは同情しているのか、父親は自分を恥じているのか。
ニコールの絶望的な言葉がとても重く、現実味を帯びています。
あえて二人の行方に結論を出してないところがとてもヨーロッパ的です。泣きのツボをこれでもか、と見せつけ泣かせる日本映画を見慣れている人には向かないと思いました。
ほめてるのかなんなのかわからないレビューになってしまいましたが、ほめてます。役者さんたちが素晴らしいのは言うまでもありません。リアクション過剰なアメリカ映画にはない味があります。