オレンジと太陽

(ネタバレあり)

信じられないような話・・・しかし、この映画は実話に基づいている。

ソーシャル・ワーカーのマーガレット・ハンフリーズ(エミリー・ワトソン)は、一人の女性に「自分は４歳の時、他のたくさんの子供たちとともにオーストラリアへ送られた。
自分の身元も、母親がどこにいるか、どうして送られたのかもわからない」と調査を依頼された。

こうして彼女は自分の国イギリスの、そして遠く離れたオーストラリアの、大英帝国時代から１９７０年ごろまで続いた歴史の暗渠、その濁流に足を踏み入れることになっていく。

養護施設に入れられていた子供を、強制的に送り出した児童移民。
その数と実態は想像を超えたものだった。　
子供たちは、過酷な労働を強いられ、虐待されていた。　政府が関与していた。　そして教会も関与していた組織的なものだった・・・・。　

心に傷を負った人たちからのすがるような訴え。　心を閉ざして警戒する人もいた。
にわかに信じがたいことなので、彼女の行動を疑問視したり、教会への中傷だと怒って激しく反発する者もいた。

彼女は権力もなく、超人でもない普通の一人の女性。　
一個人で扱える限界をはるかに超える問題の大きさに翻弄され、押しつぶされそうな責任の重さ、傷つき苦悩しながら、また家族や支援者に支えられながら、活動を続けていく。
普通の人間の、人として誠実で真摯な姿をこの映画は静かに描いています。

監督はジム・ローチ。　　
父親のケン・ローチをほうふつとさせる作風で、本作がデビュー作となりました。

これは多くの方々に、自信を持って推奨できる良作です。

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長い年月、自分がどこの誰だかわからない状態で過ごしてきた酷さ、幼く誰も守ってくれない強制労働に近い過酷な毎日を封印して生きてきた辛さを考えると、イギリスからオーストラリアへの児童移民の問題は、完全な解決は難しいだろうと思います。
見て見ぬふりができず、非常に深刻な重大な問題に関わることになり、目をそむけず立ち向かってゆくマーガレットの姿に、深い深い感動を覚えました。
確かに勇敢ではあるけれど武勇伝でなく、彼女が悲しみに押しつぶされそうになる姿や、夫や家族の立ち位置の難しさも織り込み（「ママをあげたよ」と子どもに言わせたり、、）、一人の女性マーガレットの骨太な物語になっています。
レンという登場人物が、マーガレットと関わる中で変わっていきます。
彼の終盤放つセリフが、とてもいいと思いました。

先日見た韓国映画「トガニ」もそうでしたが（もう原作読みました）、マーガレットの著作（からのゆりかご 大英帝国の迷い子たち）を読んでみよう思います。

英国・豪州政府が19世紀から1970年まで、養護施設の子供達を極秘にオーストラリアへ労働力として送っていた「児童移民」という名の強制児童移民政策があった

1986年ある女性の告白から調査を行い、その恐るべき真実を暴いた英国のマーガレット・ハンフリーズを描いた感動的な実話

感想･総評：今となっては信じられないような話だが、人権が叫ばれるようになったのはつい最近のこと。少しましな時代になりつつあると言えるのでしょう

対象年齢：高校生以上（残酷さはある。Ｈ場面もある）

食事中に見られるか：無理ではないが、食事中に見るには重すぎる

決して楽しい話ではないのですが、この様な事が行われていたとは
信じられない事でありドキュメンタリーとして観る価値があります。