裏切りのサーカス

刺激に満ちた場面の連続というわけではなく
物語展のテンポが速いというわけでもない
それでいて一瞬たりとも目を離したくない
静かな緊張感に支配された作品でした

沈んだ色調は映像全体を抑制的に
でも一抹の不安定感を残します

陰謀と権力闘争の果てに退職を迫られたスマイリー
案に相違して組織の中に潜入したスパイ「もぐら」を探せと命令されます
若い部下と退職警官をアシスタントに調査に乗り出すと
そこには次から次へと驚くべき事実が現れます

途中に挟まれる背景を構成するエピソードの映像
これがみんな厚みがあって素晴らしい
特にコリン・ファースのゲイを暗示するシーンなど
ラストの伏線になるんですがとても素晴らしい

俳優さんたちの実力を感じます
ゲイリー・オールドマン
初めて認識したのは「レオン」でした
深刻な薬物中毒からの帰還者とのこと
飛んだ目の演技がすごかった

コリン・ファース
はじめてみたのは「シングルマン」
ゲイつながりですかね

作品の風合いはいかにもイギリス風
40年以上も前
珍しいモーゼルミリタリーという拳銃
それも弾倉式ではなく
クリップ装弾式が登場した作品
「殺しのライセンス」を思い出しました

見終わった後
白黒がきちんとついていない印象もいいですね
単純な勧善懲悪ではなくて

ゲイリー・オールドマンの演技が高く評価されていたので見てみました。

地味でメリハリのない映画です。歩くシーンと話しているシーンがやたら多くて
展開がわかりにくい。
いつの間にか過去のシーンになっていたりして。あの人が生きてるから過去のシーンなのね…とか
考えながら見なくちゃいけないからしんどい。
映画通の人にウケそうな作品です。お気楽映画ファンの私には合わなかったな…

裏切り者を探す話なので、それが誰なのかは見届けようと思っていたけど
途中からどうでもよくなってしまった感じ。
でも最後まで見たし、印象に残ったエピソードもあったんですが…。

あと、マーク・ストロングの髪が中途半端なのが気になって…いっそのこと「キック・アス」の時みたいに
剃っちゃってもよかったのに。今回は部下なので、偉そうに見えないようにしたのかな。

ごく巷で本作の主演ゲイリー・オールドマンに似ていると言われた私です（笑）。
それはともかく、人の名前を覚えるのが苦手な私は本作のような多くの登場人物が込み合ったストーリーは苦手な分野なのですが、そう思って身構えていたせいか筋書きを追うのに苦労することはありませんでした。実は、本作の筋書きは意外と単純なのですが、鑑賞者を惑わすのは様々にてんこ盛りなエピソードだったと感じました。

時は東西冷戦下。一触即発の事態を避けるため、政府関係者のみならず一般市民さえ、隣人さえも疑う疑心暗鬼の日々を過ごしていた頃、イギリス諜報部（MI6）は、その中枢部、別名「サーカス」にソ連の2重スパイ「もぐら」が潜り込んでいるという情報を得る。MI6は「もぐら」の正体を暴くために工作員をハンガリーに送り込むが、その作戦は失敗。政治的な矢面に立たされたイギリス政府は、「サーカス」のリーダー、コントロールとその右腕スマイリーを失脚させる。こうして幕を閉じたかに思えた騒動はある事件で新たな幕を開ける。その事件により、「もぐら」の正体に近づく者たちは、闇にうごめくKGBの実態に迫っていくと共に、その存在に近づこうとするためか、自らの暗部を曝け出さざるを得なくのなるのだった。

いわゆるスパイ物の、それも殺しの番号を持たない普通のスパイが暗躍していた時代の、空気感の再現が素晴らしい。隣人はおろか身内でさえ信じられない不信感が、スマイリー始め登場人物の多くに見受けられます。なので、派手なドンパチは全くありません。ただひたすら、疑心暗鬼に陥る人達と、それでも正気を保ち国への忠誠を尽くそうとする人達の、心の葛藤が描写され続けます。
その描写は私生活にまで及び、スマイリーと妻の関係に、ハンガリーの工作員ジムのその後や、重要な情報をもたらす男リッキーの痴情までが明らかにされます。そして、その関係すべてがストーリーに絡み合うので、単純な2重スパイを探すという作戦が複雑な様相を呈するように見えてしまうのでしょう。
それが本作の監督の持ち味で、ドンパチの無いスパイ物に更なる独自の持ち味を加えています。その味わいとは「退廃」。前作『ぼくのエリ』で、妖しく儚く滅びゆく者たちを、哀愁たっぷりに、時に過激にセクシュアルに描いた演出を本作にも同じように用いています。資本主義に犯される前のソ連とその脅威に怯えつつもアメリカに与しようとしないイギリスの諜報部員達を、闇夜に跋扈する魑魅魍魎のように描くと同時に、彼らにも守るべき存在があり愛する者があるという、人として当たり前のことを詳細に描写しています。見ようによっては鬼とも菩薩とも見える人の多面性を、スマイリー自信と、彼に関わる多くの人のエピソードに感じられます。それが時に過激で、見たまんまでは瞬間ではあるが腐乱死体の映像であったり、見ようによってはゲイとも思える複雑な関係の描写だったりするのでした。最も象徴的で分かり易いのが「サーカス」の防音室ですね。あれは正しく淫靡そのものでしょう（笑）。

謎は単純、しかし、その謎に関わる人物像は極めて複雑。この相反する設定と、監督独自の、美意識と言っていいのでしょう、その演出が物語に深い味わいをもたらしています。
作品の全体像を俯瞰して観れば、少々のまとまりの無さは感じてしまいますが、かなりの力作だと思います。

海外盤ソフトは二月に既に購入ずみ。劇場上映も鑑賞ずみ。
原作も読破ずみ。
すっかりこの作品に入れ込んでしまったこの一年だった。

原作→DVD→劇場の順での鑑賞だったので、DVDを見た直後は、
な、なんだ、これは原作未読の観客に理解できるんかいな？
USAの観客みたいに、わけわからん、スローペースすぎる、
ゲイばっかり出てきてショウに合わん、なんて感想が日本でも
多数を占めるのでは？と不安ではあったが、予想外に好評で
よかった、よかったと安堵。

DVDで鑑賞してみると、よーくわかる部分がたくさんあると思う。
たとえば、スマイリーの回想シーンの中のひとつに、コントロール
以下、幹部が全員集まって、ソ連の海軍演習に関する情報について
話し、結局言い争いに発展してしまう場面。
それ程長いシーンではないが、後々に繋がる伏線がたくさん含まれて
いる。劇場鑑賞だけでは、とてもすべてを見極める事は困難だろう。

今回の邦盤ソフトで、ちょっと期待しているのが、日本語吹き替え。
情報量の面では、字幕より、ずっと多くを伝えることができるので、
多少は、わかりやすくなるのではないかと思っている。
(演者と声優が合う、合わない、は別にして）

レンタル盤でもおそらく収録されると思うが、監督とゲイリー・
オールドマンのオーディオ・コメンタリ―が、なかなか興味深いので
ぜひ、聞いてみる事をお勧めします。

2011年（イギリス／フランス／ドイツ／128分)

難しい。地味。
サーカスとは？
イギリス諜報機関MI6の所在地がロンドンはケンブリッジ・サーカスにある事から、そう呼ばれる。

STORYは極めてシンプルで、「サーカス」の幹部4人の中にソ連のKGBに情報を流している「もぐら=二重スパイ」を探し出す事。

二重スパイを調査するチーフのゲイリー・オールドマンとその助手ベネディクト・カンバーバッチと容疑者の一人コリン・ファース。
あとは二重スパイ解明の鍵を握る、ソ連へ寝返ったスパイのトム・ハーディと諜報機関でトップのコントローラー役のジョン・ハートくらいしか、名前と顔が一致しません。
派手な展開や表立った「裏切り」もほとんどなくて、そのもぐら(二重スパイ）のせいで多くのMI6の正体がバレた・・・という位なのです。

不思議なことに寝返ったスパイはソ連に強制送還されるのです。
それは多分、拷問と死を意味するのだと思われます。

1970年代の東西冷戦下のイギリスを舞台に、実際にMI6のスパイだった経歴のジョン・ル・カレの原作の映画化。

古めかしさが魅力なのと「男は女で身をもち崩す」という事実を実感
しますし、スパイとは実際にスパイになれば、身分を偽る訳ですから、
寝返りも致し方ないかなぁとか思いました。

日本に於いての諜報活動を行なってる機関は、
公安警察、
外務省、
内閣情報調査室、
海上保安庁などのようです。
日本の諜報機関は世界のトップテンにも入っていません。
ちょっとお寒い気持ちになりました。
とはいえ当時のMI6も、もっぱらの仕事が盗聴です。
「俺たちが第三次世界大戦を防いでいるんだ」
これが彼らの誇りのようでした。
現在ではスパイにも情報化の波が押し寄せて、リストラそして消滅の道へと進むのでしょうか？