ブラック・スワン

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「ナタリー・ポートマンがアカデミー主演女優賞を取った作品」
これがこの作品を一番的確に表現してるのかもしれない。

「眠れる森の美女」「くるみ割り人形」と共に３大バレエと言われる「白鳥の湖」
誰もが知ってる名だし、聞いたことがある曲で、断片的にでも見たことがあるはず。
というのが、私みたいな特段バレエに興味がない人の前提。
だけど、ちょっとだけ掘り下げてストーリーの概要を知って、白鳥と黒鳥はバレエ
では同一バレリーナが演じるって辺りも予備知識としてあった方が入りやすい
映画だ。

製作側もそれは心得ているのか、冒頭レッスンシーンでご丁寧にストーリーは
振付師のヴァンサン・カッセルの口から語られるんだけどねｗ

タイトルである黒鳥（ブラックスワン）は悪魔の娘なわけだが、主役を射止めた
ナタリー・ポートマン演じるバレリーナが重圧の中、精神的においつめられ、
妄想とプレッシャーの中壊れていくことを指しているってことなんだろうけど、
どうもしっくりこない。ブラックスワンと銘打つのであればもっと過激で、まさに
サイコって感じにしてほしかった。

どれほどの重圧なのかとか、元バレリーナでなにかありそうな母親との確執。
どれもこれも中途半端。
何故、そんなにそこまで追い込まれていくのか、見れば見るほど、よくわからない。
「あなたは精神的に主役をはる器じゃないよ」って言いたくなる。
ヒステリックに叫ぶシーンに至っては興醒めでしかない。

だけど、ナタリー・ポートマンは確かに迫真の演技、体当たりの演技なわけだ。
でもそれは観ているものを感動させたり、恐怖を感じさせたり、サイコの世界に
引きずりこまれたりするわけでは決してないのだ。
「上手に出来ました、だから主演女優賞は貴女にあげますね。」
これが全てってことを後半で悟らずにはいられなかった。

ライバルのバレリーナ、リリーを演じたミラ・クリス。
こっちの方がよっぽど輝いていたし、まるで優柔不断な主人公に比べ魅力的。
ビジュアルだってこっちのほうが断然よかった。
ミラ・クリスってよく知らなかったんだけど、「ザ・ウォーカー」でソラーラを演じて
いたのが彼女だったようだ。あれも確かに良かった。

蛇足だが、アロノフスキーは、「レスラー」と「ブラック・スワン」は元々ひとつの
企画であったことから、これらを姉妹編と呼んでいるらしい。
ひとつの企画をレスラーとバレリーナにわけて描いたってわけだ。
まぁ、だから何！？って話ではあるんだけどね。。。ｗ

エンディングは「完璧」そして「死」。
これってホワイトスワン同様に自由を得たって言いたいんだろうね。
この一言で、背筋に冷たいものを感じさせ、何故そこまでして演じるのかって
いう部分を感じさせてくれれば良作であっただろうに、作品的には平凡。
中の下といったことだろうか。

Darren Aronofsky はもともと苦手なんだけど、これはお見事。レスラーも素晴らしかったけど。
この監督、最近ちょっと好きかも（笑）

この人は、人の心の隙間というか、恐怖心を見事に描き出す。そして、オスカー受賞のNatalie Portman、圧巻の演技。

彼女が黒鳥を踊りきるのはクライマックスだけなんだけど、もうちょっと観たかったなあ。

Vincent Casselも良かった。
なんかハマり役。この映画キャストがみんなハマってたなあ。

しかし、痛そうなの。痛そうなシーンがいっぱいあって、腰痛の私としては、痛みが増した（涙）

直視できないシーンがいっぱいある。

Natalie Portman、頑張って踊ってますよ。やっぱりあの身体づくりはすごいね。 Mila Kunisも踊れる。

ハリウッドはやっぱり俳優がいろいろできてスゴイ。日本のバレエ映画もあれくらい踊れるひとを出してほしいよね。

抑圧されたものが多いとプレッシャーがかかった時に、精神を蝕んでいく。
このあたりはDarren Aronofsky の真骨頂。
なんとも恐ろしい映画ですが、エンディングもお見事でした。

謎がいろいろ残っていて、はっきりしないとことろもいいね。

しかし、この映画の振付師Benjamin MillepiedとNatalie Portman は見事婚約、出産となり、めでたいことです。

いちばん怖いのは、 Winona Ryderです。

リストには入れていたのですが、先日午後のロードショーで見てしまいました。テレビ東京は今週２３日午後９時から、なんと「舟を編む」も放映してくれますね。すごいぞ。
ついでにＮＨＫBＳプレミアム４月２５日午後1時からの「ラルジャン」ロベール・ブレッソンも見逃せません。
などと、宣伝している場合ではない、「ブラックスワン」です。
第一印象、バレエの映画にしては汚らしくて優雅さが皆無であることに驚きました。
天井が低く、壁が迫り、薄暗くてじめじめしたバックステージの廊下がうねうね続き、そこを追い詰められた表情をしたナタリー・ポートマンが急ぎ足で歩いていく様子を正面から映し続ける。テレビのワイドショーが事件の渦中の人物を追うときのアングル。落ち着かない。
バックステージだけではなくヒロインの住居もレッスン場もパーティの会場すら、どこか乱雑で殺伐として居心地悪そう。映像も暗くわざとザラザラとした感じにしているように見える。
「レスラー」の監督だと知って納得しました。選んだ道を極めるために壮絶な自己との戦いを続ける人間の姿を、どこまでもリアルに追うわけですね。しかしプロレスラーを描いた手法でバレリーナを描くのはどうなのかと、違和感ありありでした。いつも泣きべそをかいているか、過呼吸寸前で喘いでいるかのナタリー・ポートマンはそう美しくも感じられなかったし、演技的にも目を瞠るほどのものはなかったと思いました。「ブーリン家の姉妹」のほうがはるかによかった。
内容ですが、芸道ものに多重人格のサイコサスペンスを絡ませたようなかたちです。
結果的にニナ（ナタリー・ポートマン）は一流のバレエダンサーではなかったのですね。一流は一流であることを続けることで証明されるのですから。一度で燃え尽きてはアマチュアです。
セクハラの演出家は「君の成功を阻むのは君自身だ。自分を解き放て」なんてニナをけしかけ、ニナもいろいろ未知の経験に挑むのですが、「自分を解き放つ」ことはとうとうできなかったのではないか、と私は見ます。
なぜならニナが「踊る目的はなんだ?」と演出家に問われた答えが「完璧を目指します」で、最後のことばも「完璧を感じたわ」だったから。
自己完結の物語でした。まあ、イヤラシイ演出家のいう通りにはならず文字通り命がけで自分を貫いたのは天晴れでした。

私には、ニナの母親のエリカがすべての元凶に思えてならないのです。
エリカが果たせなかったバレリーナの夢を娘のニナに託し、その夢のためにエリカは献身的に、時には異常なまでの愛情を注いできたのでしょう。
ニナも母の愛に応えるべくバレエに打ち込んできたでしょうし、ニナにとってもバレリーナ、それもプリマになることが人生の目標になって行ったのだと思います。
そして、チャンスが巡ってきて、『白鳥の湖』の主役の候補に挙がります。
主役は、白鳥と黒鳥の二役を演じ分けなくてはなりません。
母の支配下で、従順に無垢に育ってきたニナには、白鳥の役は適任でしたが、黒鳥を演じるのに必要な官能的で邪悪な性格は、今のニナには無いものでした。
娘がプリマの座を得たことを喜びながらも、エリカは娘にあれやこれやと注意を与え、干渉を続けます。
以前から体を掻き毟る癖があったようで、黒鳥を上手く踊れないストレスからニナは背中に掻き傷を作ります。
エリカは、そんなニナにボレロを着せ、爪まで切ってやり、「あなたに主役は無理なんだわ。」「役に潰されるわ」と、ニナを励ますどころか不安に追い込むのです。
ニナをさらに不安にするのは、リリーの存在でした。
男を誘惑する邪悪な黒鳥の化身のようなリリーに、ニナは自分の役を奪われるのではないか？と、追い詰められていきます。
監督のトマからは不感症とまで言われ、性的にも脱皮しようともがくニナは、母親の監視に反抗し、ついに母を罵倒する言葉を浴びせてしまうのです。
「私は主役。ママは群舞の一人じゃないの！」
私が、この母親に最初から感じていた違和感は、何なのでしょう。
自分の夢を娘に託しながらも、その夢が叶いそうだと見るや、娘を追い詰めるような言動をするのは、娘が自分を追い越して行くのを許せない嫉妬なのでしょうか。
ニナが、リリーのように自分を解放できないのは、母親の呪縛のせいだと思うのです。
自分の中の黒鳥の部分が出てくると、自然にそれを押さえ込もうとしてしまうのも、母の呪縛のせいです。
公演の前夜、舞台裏でトマを誘惑するリリーを覗き、ニナの方を見た彼女の顔がニナに変わるのを見て、ニナの精神状態は限界に近づいたようでした。
いよいよ、公演初日を迎え、もはや、ニナが見たり感じたりするものは、それが幻覚なのか、妄想なのか、現実なのか、観客にさえも分からなくなるようなトリッキーな映像でした。
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ジャケット写真のナタリー・ポートマンはふっくらとして綺麗ですが、9ｋｇも減量したとあって、劇中での彼女はプリマドンナらしい体型に痩せて、背中の筋肉の動きが見えて怖いほどでした。
劇中の登場人物として白鳥と黒鳥を演じ分けるのと同時に、役者として「明」と「暗」を演じ分ける必要があったナタリー・ポートマンですが、その葛藤ぶりがニナという役を通して透けて見えるようでした。

この作品では、黒鳥を演じきれないニナの苦悩と狂気に追い込まれていく様子が描かれていましたが、見方を変えるなら、リリーは黒鳥になりきることができても、純真な白鳥は演じられないということだなあと、ふと思いつきました。
やはり、何事にも二面性があるということですね。

人は皆、美のおもちゃ。
美しさのおもちゃ。
美しさを崇め。
美しさを求め。
美しさに縋り。
美しさに狂い。
美しさに囚われ。
美しさに弄ばれ。
美しさを愛す。
美しさに愛されたい。
追い求める美しさに、完全などない。
完全な美を追い求め。
それを掴んだ実感を味わった途端。
きっと美しさは、その形を変えて。
新しい美を創り上げる。
そうやって美しさは「美」であり続ける。
それでも手にしたい。
その美しさに包まれたい。
その「美」そのものになりたい。
人は皆、美のおもちゃ。
美しさの虜だ。

映画化する８年も前からオファーを出していただけあって。
これは完全に、ナタリー・ポートマンの役。
彼女以外では有り得ないし。
彼女以外では成し得ない高みに到達していると思う。
バレエの経験を活かし、日に８時間もトレーニング。
さらに食事制限で９キロも減。
研ぎ澄まされた肉体は、「集中力とはコレぞなもし」を体で表している。
その執着とも取れるナタリーのアプローチは、ニナと完全に同化していた。
エロスを微塵も感じさせない女優。
それがナタリー。
今回は大胆なシーンも演じているが、やはり生々しさはあまり感じない。
でも、それでいい。
それがいい。
それこそが逆にエロスに思えてしまうような逆転現象を味わった。
だから白鳥が似合う。
そして似合いすぎる白鳥としてのニナの存在があるからこそ。
黒鳥が艶やかに舞う。
ハっとする・・・・・
やっぱ正解。
抑圧、解放、重圧、変身。
孤独、混乱、不快、絶頂。
追い詰められる私。
私を見ている私。
またしてもアロノフスキー監督にしてやられる。

「レスラー」に続いて、またしてもやってくれました。
「π」は観てて、頭痛くなったなぁ・・・面白かったけど。
「ファウンテン」は完全に付いていけなかったなぁ・・・・
さて残りひとつ「レクイエム・フォー・ドリーム」はどんなんかな？