ロード・トゥ・パーディション

静かな中にも、凄惨な光景が織り成すアクション映画のようですが、実は父親の息子に対する愛情が描かれているドラマです。あえてセリフを少なくしたのか、ひときわ映像の素晴らしさが引立っています。裏の世界で家族を養う自分を知ってしまった息子に対して、同じ道を歩ませたくないという父親の気持ちが一貫して伝わってきます。ラストの海辺のシーンはどことなく「ショーシャンクの空に」を彷彿とさせます。最後まで息子の手を汚さずにすんだことが、せめてもの救いだったと言えるでしょう。

とにかく映像の素晴らしさが群を抜く。
古き良き時代のアメリカの街並み、これが雪景色も、雨に濡れた夜景も、走るクラシックカーも、みな目を見張る美しさ。この映画、何度観ても映像の素晴らしさは胸を打つ。

トム・ハンクスへの批判めいたレビューや、作品への穿った見方が散見されるが、そんな重箱の隅をつつくようなことよりも、この映像を見て下さい、といわんばかりだ。
撮影監督がコンラッド・Ｌ・ホールとくれば、納得できる。
彼の作品を上げたらキリがない。（それでも記してしまいたくなるのが人情か．．．）
思いつくまま古い順に、６６年「動く標的」、６７年「暴力脱獄」、６７年「冷血」、６７年「夕陽に向って走れ」、６９年「明日に向って撃て！」、７５年「イナゴの日」、７６年「マラソンマン」、８８年「テキーラ・サンライズ」、９１年「訴訟」、９９年「アメリカン・ビューティー」、９９年「シビル・アクション」、どれも名作ばかり。ほかにも多数あると思う。
そして「明日に向って．．．」、「アメリカン・ビューティー」、本作と３度のアカデミー撮影賞を受賞している。しかも本作は７６歳での受賞という快挙だ。
因みに、「明日に向って撃て！」に出演したキャサリン・ロスとは足掛け７年の結婚生活を送っている。

ジュード・ロウがエキセントリックな殺し屋を演じて印象深い。
役作りのために、頭髪を実際に抜いて演じたというから、まるでデ・ニーロ並みだ。
その殺し屋マグワイアと、トム・ハンクス演じる主人公マイケル・サリヴァンが、田舎の食堂で対峙するシーンがある。たわいないセリフの応酬だが、緊迫感は尋常ではない。

名優ポール・ニューマンは、ギャングの親分にして哀しい父親像を体現、息子コナー（ダニエル・クレイグ）との確執、溺愛するサリヴァン一家との関係など、老練な演技で存在感をみせている。

しかし何といってもトム・ハンクスがいい。
彼のファンという訳ではないが、組織の中に生きる男、親子愛を、サム・メンデス監督の狙いどおり演じていたのではないだろうか。そしてガンさばきもなかなかのものだった。
私はこの映画の主役に、彼の起用は大成功だったと思っている。

同年の「ギャング・オブ・ニューヨーク」（マーティン・スコセッシ監督）に勝るとも劣らぬ名作だと確信している。

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

「亡き息子を思って悲しみに浸るんだ・・。」

ルーニー（ポールニューマン）の深く、搾り出されるようなセリフを聞いたとき、彼の亡き1人息子、スコットを思い出した。

ポールがダメダメ息子に激しい怒りをぶつけ、それでも強くハグした時。
やはり、ポールとスコットの関係を思い出さずにはいられなかった；；

偉大すぎる俳優を父に持ったスコット。
超えるに超えられない大きな壁が、スコットには常に聳え立っていたのだろう。
薬に溺れ、若くして命を落としてしまった。

そんな彼を、どう扱っていいか最後までわからなかったというポール。


77歳の時、彼が最後に出演したこの映画。
今年82歳で俳優を引退した。
これ以上の役は、もう出てこなかったのね。

これは亡き息子へ鎮魂の映画だったのかもしれない・・・。

　トム・ハンクスは嫌いじゃないけど、“彼が主演”ということで映画を選ぶほど好きでもない。
　本作も、ジュード・ロウの殺し屋っていうのに興味があったのと『アメリカン・ビューティ』のサム・メンデス監督作というのが若干。

　観始めて早々、“おおっ、ジェニファー・ジェイソン・リーがこんな普通の役で出てるぞ！”と喜んだのもつかの間、あっという間に出番終了でガックリきたのが最後まで響いたのかどうかは分からんけど、イマイチ響いてくるものがなかった。
　ポール・ニューマンの威光もオレには届かない・・・。
　トム・ハンクスはファンの方には申し訳ないんですが、ミス・キャストっぽい。ぐっと抑えて、ためて、重厚に演技しているようには見えるんですけど何か狙いすぎに思える。どうもフィットしてない。
　期待のジュード・ロウは、悪くないけど少なくとも凄腕の殺し屋には見えない。もっと弾けてもよかったんじゃないかなあ。

　丁寧に作られてるのは感じるけど、全体的に退屈でした。
　（ちょっと、疲れ気味の時に観たからかな・・・）

親子の間を描いているのはわかるけれど、その役回りにトムは打ってつけだとも思います。でもでも、やっぱり、ギャング役のトムは人を殺すトムは似合わないと言うか・・・あまり好きじゃないです。