シャーロック・ホームズの冒険

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子供の頃からホームズは好きだった。学校の図書室から借りては読みまくった。初めて会う依頼人の「人となり」をズバッと見抜く観察眼には子供心にカッコいいと感じていた。

そんなホームズシリーズをこの機会に観てみようとレンタルリストに載せたが・・・、やっと届いたVol.1。ホームズの元にはなにやら曰くありの依頼人がよく現れる。殺人事件が起きてから捜査、とも限らない。そもそも第１話は誰も死んでいないし。その上、第１話から出し抜かれるし（ちょっと意外でした）。

ホームズシリーズの見所は、科学捜査も発展していない19世紀に、自らの観察力と推理力で事件を解決していくところにある。いわゆる古典的ミステリーだが、今後時間をかけてゆっくりとシリーズ全巻観てみたいものだ。

情報にあふれて、飛ぶように過ぎてゆく時間をすごしている今だからこそ見ておきたいシリーズだと思います。登場人物の描写もさることながら、衣装や小道具などの細部にわたり、丁寧につくりこまれていて、何度見ても新しい発見があります。科学捜査・・・などというものがなかった時代の鮮やかな推理は、アクション映画などで味わう感覚とはまた別な爽快感です。

「四人の署名」は、完全版の「11」です。

ドイルのホームズ物の四つの長編のうち、もっとも南亜趣味に長けた作品。
（前編・後編で、計90分になっている。）

「四人」とは、ジョナサン・スモール、マホメット・シン、アブドゥラ・カーン、ドスト・アクバル。

ホームズは、回教徒ではない英人名のジョナサン・スモールに注目した。

この原作は、相棒ワトソンが、依頼者のメアリ・モースタン嬢に惚れていまい、事件の解決後、結婚するという、
別の余話を抱えている。

メアリの父は、10年前に失踪していたが、手がかりはない。
６年前から年に1粒ずつ、高価な黒真珠が送られてきていた。

手紙の差出人がわかる。
サディアス・ショルト。

失踪したメアリの父：モースタン大尉と、サディアスの父：ショルト少佐は、インド在留中に、どうやら、隠された財宝を私物化することになったらしい。

その隠し場所を四人の囚人でが記したのが、題名の「署名」である。

囚人たちは、自分らの解放と引き換えに、宝の在処（ありか）を、英軍の将校に明かす。

アンダマン島とは、どこにあるのか？

インド東部のベンガル湾にある。

ホームズの言う「非常に役に立つ共犯者」は、この不可解な事件の鍵になっている。

身長と吹き矢。彼が、クレオソートに足を浸けてしまったことで、名犬「トビー」の活躍が始まる。

最後、テムズ川での船合戦が見事だ。

スモールの悪太郎ぶりに乾杯したい。

潔い。

アイリーン・アドラーは、コントラアルトという女声で最も低い声域をもち、当時のヨーロッパを駆けたオペラ歌手。
架空の人物であるが、ホームズに唯一、勝った女性であり、事件のあと、彼は、アイリーンのことを「あの女性（the woman）」と言った。

「ボヘミアの醜聞（しゅうぶん・スキャンダル）は、ＤＶＤ完全版のVol.１（第1巻）に入っています。ドイルのホームズ物では、最初の短編集「冒険」所収。

同じDVDには、暗号物の傑作「踊る人形」（第三短編集「帰還（帰ってきた）」所収。


「ワトソン、起きろよ。四頭立て荷馬車が停まっている。」

これは、国家レベルの依頼である。●が馬。

　
●　●＝＝＝
　　　　　　　｝←−−−大【馬　車】2両
●　●＝＝＝


ホームズがいつも使っている馬車は、一頭立て。

●＝＝＝　←小【馬車】１両


ワトスンは結婚、開業し、ホームズとは別居していた。彼は、ホームズの居るベーカー街221Bを訪れる。
「君は太った。結婚生活に向いているようだね。」とホームズ。

その時、四頭立ての馬車が前の街路に、蹄を響かせ停まった。

顔に仮装マスクを付けた男が部屋に入ってきてきたが、ホームズに促され、男はマスクを脱ぎ捨て、ボヘミア国王自身であることを名乗る。
国王は、五年前、皇太子であったころ、アイリーン・アドラーというオペラ歌手と交際していた。
二人は曖昧に別れたが、彼は近く、スカンディナヴィア国の王女クロチルドと政略結婚することが決まった。
アイリーンは、二人で撮影した写真をクロチルドへ送りつける、と脅迫する。
ボヘミア国王は、写真を取り戻すため、アイリーンに対し、空き巣、追剥まがいのことを行わせた。
しかし、醜聞の証拠写真を奪うことはできなかった。

この事件が、そもそもホームズに回っていたのは、英国、ボヘミア、スカンジナビアという三国の外交に関わる一件だったからであろう。

しかし、ホームズは見事に、アイリーンに負かされる。
「あの女性（the woman）」と言うことになる。

コントラアルトというと、女声では最も低い音域。
キャスリーン・フェリアを思い出す。
マーラーの「大地の歌」。ブラームスの「アルト・ラプソディ」。

「最後の事件」は、ＤＶＤ完全版のVol.７に入っています。ドイルのホームズ物では、第二短編集「回想（思い出）」所収。
同じDVDには、「空き家の怪事件」（第三の短編集「帰還」所収）が入っています。

この「最後の事件」で、ホームズは、宿敵モリアーティ教授とともに、スイス・アルプスのライヘンバッハの滝壺に落ちる。

作者ドイルは、ここ（「回想」の最後の短編）でホームズを葬りたかったが、生活上、うまくいかなかった。

ホームズは「空き家の怪事件」で復活する。

この「最後の事件」は、モリアーティ教授というホームズの宿敵が、唯一、その姿を現す作品だ。

相変わらず、ホームズは、事件を追っているが、……。

ロンドン、そして欧州をめぐる犯罪で、「教授」行為を進めているのが、モリアーティである。
資金援助も、スパイの設定も行う。

原作にはない事件だが、このTVドラマでは、フランスのルーブル美術館から、ダ・ヴィンチの「モナリザ」が盗まれる。
これが「教授」の策謀であり、ホームズの知能がそれを上回ったことが分かる。

モリアーティは、真作を盗み、贋作を売ろうとしたのだが、目論見が破れる。
贋作にナイフで×を切り、ホームズに憎悪を募らせる。
すでに、自分の足下まで司直の手が伸びていることを知っているのだ。

そして、ホームズの住むベーカー街「221B」に訪ねてくる。

二人の会話が面白い。

モリアーティは、「ナポレオン金貨の事件」（「赤毛連盟」）で、君に迷惑を被ったと言う。
「あの（スポルルディングと赤毛のダンカン・ロスの）事件は、あなたでしたか！」と、ホームズ。

「で、言いたいことがあれば、５分で聴きましょう」。
「あくまで、やる気か」とモリアーティ。
「では。どうしろと言うんですか？」
「やむなく、過激な手段に訴えねばならん」

こういうやりとりがあって、最後は、こういう会話になる。

「私の頭は君に劣らん」
「過分な賛辞ありがとう　教授」

ホームズも、モリアーティも、お互いが対等の知能をもつ人間と、知り尽くしている。

ホームズは、ロンドンから鉄道で逃げるが、臨時列車を仕立て、モリアーティは追いかけてくる。
最後は、スイスの落差250メートルの滝の上で、素手の「心中」をしなければならないほど、互いの運命が重なっていたことになる。

こういこうとが、面白い。

ホームズは、原作者ドイルの都合で「帰還」したのだが、モリアーティは、滝壺に落ちたままだった。

この、名探偵の宿敵には、独特の魅力がある。

ドイルの描写では「爬虫類的」「長身痩躯」「体が揺れる」とある。

原作のドイルは書かなかったが「モリアーティ」のキャラクターは傍系のドラマで生きている。

「古畑任三郎」の「森脇教頭」、べネ・カンバーの「ホームズ」の「ジム」。