ドニー・ダーコ

のっけからエコー＆ザ・バニーメンの「キリングムーン」がかかり、80年代の扉が開く。この曲の歌詞自体も内容を示唆していて、曲が小道具として積極的に使われている。圧巻はラストの「マッド・ワールド」。ティアーズ・フォー・フィアーズの曲をゲイリー・ジュールズが歌っているのだが、淡々とした曲調に哀しみがしぼりだされるよう。この曲に限っては訳詞が出る。それくらい重要。

この映画は、わからなければわからなくても良いのではないかと思う。あまりに美しいカメラワークとともに、自意識をもてあました青年の悲しいループにつかまり酔うだけで私はそれなりに満足した。

とは、チョット違うのかなぁ。
凝って製作してた割に途中で眠くなってしまった・・・。

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これは『マルホランドドライブ』と似ていて、謎解きが難しい。
２〜３回観ての私なりの解釈。
最初に航空機のエンジンが落ちてから以降のストーリーはどこか非現実的だ。たとえば、落ちたエンジンの機体が不明などと言っていること。また、ドニーの学校は車と学園バスを乗り継いで行くほど家から離れている感じなのに、彼は夜中に夢遊病状態でその学校へ行ってとんでもない悪さをして帰っていること。また、彼は恋人と映画館へ行くのだが、劇場内には彼ら以外の観客はいないばかりか、恋人は最初から最後まで寝てしまっており、途中ドニーが劇場を抜け出したことにも気づかない。しかも同じ時間中には学校の学芸会が行われているのに二人は参加していない。
他にもいくつかサインがあるのだが、結論を言うと、ドニーは現実にはエンジンが落ちたときに死んでおり、寝ている最中最初に銀色のウサギに起こされて以降の不思議な出来事は、ドニーが死ぬ直前にみた゛夢゛なのだと思う。
「タイムトラベルの哲学」というキーワードのもと、時間を元に戻し、悲劇を避けたような終わり方になっているが、実際にはそうはできない−というパラドックスがこの映画のテーマか？
２８日と６時間４２時間１２秒には何か意味があると思うが、これはわからない。

イントロダクション通り、
「不可解な出来事が次々と起こり始めた」訳ですが、
不可解なまま終わってしまいました。ｗ
パラレルワールドとして描かれているのかなぁと思いましたが、
「こうだ！」という結末は描かれず、謎です。
こういう話は嫌いじゃないのでいいんですが、
ハッキリキッパリした話が好きな人は見ない方がいいです。

（ネタバレあり）この居心地の悪さは何だろう。ドニーの見る世界は矛盾に満ちている。
心に響く言葉を誰も持っていない。大人の言葉は欺瞞にしか感じず、自らも、心ない言葉
の刃を振り回している。
　我々の多くが通ってきた道。客観的に観る力を持ちえないままに、世間との乖離に苦しん
だ時期。今思えば、なんであんな馬鹿な事をしてきたんだろうと、ドニーの行動によって
苦く思い起こされる。
　ただ、ここではミスリードがされている。狂っているのはドニー・ダーコだ、と。
狂った彼に見える世間の方が正しいのだと。彼を「特異点」だと思わせている。

リチャード・ケリーは物語の解釈を観客に投げ「見たいように見てくれればいい」と言う。
それは悪くとれば「厳密な考証は無く、撮りたいように撮った」と言うことでもある。

　物語の混乱は、時間軸の好き勝手な扱いによる。主軸があるとして、未来で枝分かれした
軸がぐるりと回って現在に挿入されている（！）そこからジェットエンジンは落ちてくる。
そしてもう一本の軸、未来のハロウィンからは、銀ウサギがメッセンジャーとして立ち現れる。
死神オババは未来を見たのだろう。見てはいけないものまで見てしまったのかもしれない。
気が触れながらも「メッセージ」を待っている。

ドニーの選択は、発生しているパラドックスを解消させるというもの。銀ウサギにうながされて
（または自らの衝動で）やらかしてしまう悪事の数々が、実は調整の為に必要な作業だった。
そのことにより主軸が入れ替わり、過去も変わる。
新しい時間軸では別の過去と現在があり、人々は少しずつ別の人生を生きている。ドニーが
犠牲となることで悲惨な事件の幾つかは解消されたということかもしれない。

　自分が、世界にとって何らかの意味があるのだろうかと誰しも思う。ほとんどの人が、何も
見いだせないまま生き、死んでいく。自分が居なくたって、世界は何の問題も無く進むものだ
と思って。しかし世界では無数の偶然が起こっていて、その一つの出来事から派生して未来が
大きく変わっているのも、まぎれもない事実。

　私も気づかぬまま、大きな歴史の流れのどこかに関わったのかもしれない。その一瞬の為に
自分というちっぽけなピースが必要だったと思えばいい。

…ま、しょうもない結果を生んだ可能性の方が強いけど、それは考えないことにして。



（ ykk1976’s movie club 114 th ）