岸辺の旅

何だろう、この訳わからん感じ。死んだ人と生きてる人と、死んだのに気がつかない人
とかが、同じ世界で混在。霊の扱いがまちがってるんじゃ・・・。
死後の世界やよみがえりは描いても、誰も今まで混在はさせなかったんだから、
カンヌで「ある視点部門賞」をもらうのも納得。
しかしながら、出色のつまらなさ・・。退屈。
もう少し、観ている者を楽しませようというサービス精神はないのだろうか。
たとえ考えさせるものは、何もなくとも、おもしろくて時を忘れる1時間だったとか
めっちゃ怖かったーだけどスッキリしたぁとか。

深津絵里は、夫を失って3年の切なさを良く演じていました。さすがに。
ほんの数分の出番でしたが「普通に生きている蒼井優さんの演技」が、普通すぎて
逆に一番、印象に残りました。

夫『俺、富山の海で死んだんだ。体が沈んでいくとき全然苦しくなかったんだ』
妻『ふーん、よかったわね、苦しまなくて』
みたいな、不思議な会話で物語は始まります。
３年間消息不明だった夫は、幽霊となって帰ってきました。
幽霊とは言っても、足はあるし(笑)、ごはんも食べるし、電車にも乗るし、
妻にしか見えないのかと思ったら、世間の皆にも普通に見えているし、会話も成立するし、
生きているときと何も変わらない様子がなんとも不思議な世界です。
夫の生きた証のゆかりの場所を妻が幽霊夫と一緒に旅をして行くお話。
旅先で出会う人たちは、夫と同じように既に幽霊になっている人もいれば
死んでしまった家族を思うあまりに立ち直れていない人たちなど、
そんな人々との出会いを通じて、受け入れることが出来なかった夫の死に
次第に妻は悲しみを乗り越えて、自分を納得させることが出来るようになっていきます。
そんな健気な妻を、深津絵里ちゃんが好演しています。
清楚ながら一本芯の通った気丈な女性です。
この映画の中の世界では、生きている人も死んでいる人もそれほどの大きな差はなく
死はそこまで悲しいことではないのではないか、というような感覚にすらなります。

それにしても、いつの時代じゃぁ？っていうようなモンペスタイルが、あそこまで似合う女優は彼女しかいないですよね(笑)

失踪していた夫優介が3年ぶりに姿を現す、そして自分はもう死んでいるのだと言う。彼は幽霊なのか、でも今までと変わらず食べたり、飲んだり、眠ったりし、体に触ることもできる。
この現実を妻の瑞希がさほど驚きもせずあっさり受け入れてしまうところで、観ているこちら側は少し混乱させられる。
ともかくそういう前提でストーリーは展開される。
旅に出た二人、優介が失踪していた間の軌跡を訪ねる旅なのだ。
最初に訪れたのは小さな新聞店を営む島影、優介は島影も自分と同じ死者なのだが自分が死んだことすら理解していないと説明する。
やがて彼は優介の言葉に納得したように消えてゆく。
つまり成仏して向こう側に逝ってしまったということなのだろうか。
次に訪れた中華料理店を営む夫妻、妻フジエと死んだ妹の間でピアノを巡るわだかまり、瑞希はこの旅の意義を知ったように感じるのだった。
最後に訪れた山村、優介は私塾を開いて村人たちの人気者であったという別の側面を瑞希は知ることになる。
瑞希の父親の霊が現れたり、まだ成仏できずに妻にとりついている男の霊も優介の説得であちら側に戻ってゆく。
優介の過去の浮気相手に瑞希が逢いにゆくところもいい味付けになっている。
死者と生者が違和感なく最後の旅をし、最後には優介と交わる瑞希、周りの誰もがそれを感じないというところが違和感よりも斬新さを感じさせる作品である。
これも他人にはわからない真の夫婦愛というものなのだろう。

原作共々 最低だった「バカ恐竜」から見事に復調

シネマスコープに おおうとびっくり アミューズやら何やらの
キラキラネームで 他の予告編かと思ったよ 地味な心霊映画に
お金はかかってるね

冒頭 画面外から すり足で登場の深津絵里に おおう もうこれ
寄生獣でしょう 感動したよw シネマスコープによるパースペクティブ
の実験は 台所と寝室の映画となっているね ローキーの画面もいいね
ハリウッド的オーケストレーションの音楽にも 異色で驚き続き

まあ すごく良いんだけどね 「クリーピー」では またちょっと
疑問だね 原作ものと大衆化の課題で 黒沢清は「スィートホーム」
の時の悩ましい問題圏に戻ってきているかもね

※このユーザーレビューは作品の内容に関する記述が含まれています。

レビューを表示する

失踪して亡くなった夫がひょっこり戻ってきたのに、実はもう体は滅している
それでも優介(夫)は成仏できずあの世とこの世の境をさまよって、妻を連れて心残りのある人に会いに出かける。

『岸辺の旅』の”岸辺”はどんな岸辺なんだろうって思って観ていたけど、海の岸辺でもなく河の岸辺でもなくて、これは”三途の川”なんだろうなって思えた
行く先々に出てくる優介にとって心残りのある人々は、もう他界している人だったり、逆にそれぞれの故人との別れ切れない想いが残っている人々

優介と瑞季がそれを遂げていけるように時間を作っていっているような感じに取れました

静かな流れの中に、表情から読み取れる心の変化
瑞季の優介に対する勝手に失踪して帰って来なかった事への小さな(でも妻には大きな)恨めしい想い、放っておかれた寂しさ、優介が浮気していた事や全然気にしてない態度への嫉妬や、その相手が全く動じずに別の人と幸せな結婚生活をしていると知った時の敗北感とどこへぶつけていいのか分らない怒り

気が付いたら優介がいなくなっていた時に、瑞季の表情は怒ったことを後悔している様にも思えた

逆に優介が素直に謝れずにいた事への後悔と謝りたい想い、どれもよく表情からくみ取れて、二人の想いがやっと一つになったシーンではその切なさに胸が苦しくなってしまいました

旅の前半では、所々で他界した人が現れたり、優介の姿がなくなっていたり、昨日まで綺麗に飾られていた部屋や仕事場がいつの間にか荒れ果てた廃屋のように変わり果てたシーンが出てくる場面がいくつかあり、少しホラーっぽさもあったけど、後半は二人の心の描写がおだやかな山川の風景の中に変わりながら、心の絆を深めていく様子が描かれていた

最後まで瑞季には切なさが残る感じだけど、始まりの切なさと終わりの切なさには大きな違いが見られた

最後は切ない。けど、想いをお互いしっかり伝えられて受け止められて、優介も悔いなく旅立てる。
そんな心の変化と充実感が「愛してる」「また向こうで逢える」という言葉に込められているような気がした。
おまもりにしていた瑞季が沢山書いた祈願書の紙の束を最後に燃やしているシーンが印象的です