トイレット

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新しい年度の最初のレビューはこれ。

荻上直子監督凄い、この一言に尽きる。
「かもめ食堂」、「めがね」ときて迎えた癒し三部作ともよばれる「プール」
「かもめ食堂」のスタッフや主役が顔を揃えたもののそこに広がった似た
世界から漂っていた違和感。
トイレットでは見事に払拭されている。
小林聡美を起用せず、オール英語で、オール海外ロケ、ほとんどの出演者
が日本人ではないという状況の中で健在だった世界観。
これらは一連の作品で感じた世界観は紛れもなく荻上直子監督のもので
あったことの照明に他ならない。

冒頭とエンディングで人が死ぬ。
本作はその間のお話だ。
母に先立たれたバラバラだった兄妹３人と、母が死の前に日本から
呼びよせた祖母の４人の物語。
個性的ではあるけども、決して世界観を壊さないキャラ設定。
そして強烈なインパクトと説得力をみせる「もたいまさこ」の演技。
彼女は非常に露出も多いのだが、発したセリフはわずかふたつ。
「モーリー」と「ク〜〜ル！」だ。
続けた発したセリフなのでシーン的に言えばわずか１シーンだ。
それの与えるインパクトと爽快感そして重み。

インド人が日本のトレイを力説。
冒頭のシーンは何だ？予告編の続きかと思ったよ。
ある？これは全編英語？日本人はでてこないの？
この冴えない男が主人公？

外国人が演じていて、場所も外国ではあるのだけれど、そこには日本の
文化や日本人というものが色濃くでている。
では、日本そのものかといえば、またそうでもない。
私たち日本人が忘れてしまったような日本人らしさとでも言うのだろうか。
これこそが荻上直子ワールドなのだろう。

祖母は兄妹たちに「ばーちゃん」と呼ばれ、彼女の存在がバラバラだった
兄妹をひとつにしていく描き方は間違いなく心を直撃する。

冒頭の三人の言い争いで状況をまとめて説明してしまう妙技。
個性あふれる兄妹を見事にからみあわせているバランスのよさ。
なんとも恐れ入る監督だ。
英語が話せないと理解していても決して日本語ではなしかけようとは
しない孫達。この答えはモーリーのセリフであかされてたりもする。
だけど、このばーちゃん妥当性のある金額を渡してたところをみると
理解できていたような気もするのだがｗ
まぁ、そんなことはどうでもいいこなんだろうけど。

「西の魔女が死んだ」で素晴らしい演技をみせてくれたサチパーカーも
出演しているが、彼女の役どころが不思議だ。
出演は２カットのみだが確かにインパクトがある。
この作品を思い返したときに一番に頭にでてくる画はばーちゃんと２人で
並んでいるあのシーンかもしれない。

トイレットというタイトルはなんとなく明かされているが
ため息の真実があたっていたのかどうかは定かではない。
だけど、レイの気持ちはばーちゃんに届いていたのは間違いようだ。

必見のお勧め、皆さん、是非。

“ばあちゃん”って響きはなんて素敵なんだろう・・・

うちの子供も、祖母に向かって「ばあちゃん」っていう姿はほんとかわいいんだよな〜
ここはやっぱり“じいちゃん”じゃなくて“ばあちゃん”なんです(笑)

もたいまさこさんの、ばあちゃんオーラが素晴らしい！
一言も話さないばあちゃん
でも、ひょっとしたことで、口角がちょっと上がったり、眉間にシワがよったり
細い目が更に細くなって優しい表情したり
背中の丸みだったり、ベンチにちょこんと座る姿、物思いにふける哀愁
顔と体だけで、あれだけのばあちゃんの存在感
大袈裟に演じるよりも、静かに優しく演じる方が遥かに難しいと思うんですが
ほんと、感服の名演技でした☆

そして、そんな、ばあちゃんのギョーザのくだりに私、ボロ泣き・・・

何も言わずに焼いてくれるばあちゃん
あ〜・・・、私のばあちゃんとオーバーラップ
ばあちゃんのお漬物、くたくたピーマン、かぼちゃスープ
ばあちゃんが私に注いでくれた愛情の数々、思い出して泣いちゃいました

いつも思うんですけど、美味しいものを作ることで、愛する家族に愛情表現できるのって
母親やお婆ちゃんの特権だと思うんです♪
ばあちゃんのアレを食べたら元気が出るんだ！わたしもそんな、ばあちゃんになりたい

残された３人の子供たちも色々ドラマがあるんですが
私にはこのばあちゃん、これに尽きます

家中に置かれた、かわいいイスたち
そのフォルムを見てるだけでも楽しかったです♪

食卓を囲めばみんな家族
ギョーザの形がイビツなのを、みんなで笑って食べる
それだけで幸せですよね

お好み焼きをひっくり返す父ちゃんを、固唾を飲んで親子で見守る・・・
そんな瞬間に、私、幸せを感じる今日この頃♪

荻上直子監督作品は、毎回ある種の期待を抱かせて、それがきちんと実行されています。
だから、彼女の映画ファンは毎回満足します。
言語は英語になろうとも、映画の世界観、キャストの雰囲気、なにより映画の中に流れる時間がまったく変わりません。

もたいまさこさんはともかく、３人兄妹弟を演じた俳優さんはまったく知りませんが、よくもまあこんなに映画に合う人をみつけたもんだと感心することしきりです。
彼らは人種も異なり、もたいさんとはまったくにていないけれど、やっぱり「ばーちゃん」かもな・・・雰囲気が似ているし、観ているうちに家族という気になります。

『西の魔女が死んだ』にも出演していて、日本映画ともなじみがあるサチ・パーカーさんは、シャーリー・マクレーンさんの娘さんとして有名な方ですが、
好きな女優さんです。出演してらっしゃるのを観て、うれしかったです。
（小森のおばちゃまが名づけたという彼女のミドルネーム。わたしと一緒なんです。英語では"blessed child"と表現されると聞いて、自分のありきたり名前を見直すきっかけにもなりました）

都会の生活に疲れた、時間に追われる日々にため息、心がすさんで日常の何気ないやさしさを見逃しがちな人にこそ、
観ていていただいて、癒しを探し出せる映画ではないでしょうか。

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ストーリーはぶっとばして

もたいまさこさん！
あなたがスゴイ！
一言しか台詞なし、
（この一言だけっていうのがまた。ポイント高いです）
全編通してほぼ無表情。
（ほぼ、です。微かには笑みを浮かべることもあります）

なのに、沁みる、伝わる。
優しさ、温かさ。
そういう演出だとしても、その要求以上の演戯だったのではないでしょうか。
いえ、演戯ではないのかもしれない、とまで思わされました。
役に入り込むという、才能かもしれないし、
経験を重ねて培った、ひとつの技なのかもしれないと。

ほんとに血が繋がっているのか疑われた、ばーちゃんが
確かに繋げた。そして、静かに去り、
確かに遺した。形はないもの。

けれど、胸に深く。

これって公開されたの日本だけでしょうか？
外国では劇場公開されてない？
そうなら勿体無いですねぇ。
折角「日本語を必要としてない邦画」なのに。
そして、こんなにステキフルな作品なのに。
邦画なのに英語。
外国人ばかりなのに、和のテイスト。
とても気持ちの良くなる鑑賞後でした。

是非、外国人に観てもらいたいなぁ。
日本人のエースと言えば誰でしょう？
映画界なら・・・
渡辺謙さん？
真田広之さん？
それともやっぱり未だにクロサワさん？ミフネさん？
現在最も世界的に活躍してるのは、やはり謙さんってことになるんでしょうか。
しかし、日本のエースにすら成りえる切り札的ワイルドカードがここに。
そうです。
もたいさんです。
最強伝説チラホラ聞こえてくる、もたいさんです。
どうですか、この圧倒的佇まい。
女優として駆使しなければならない、ひとつの武器をほぼ封印してもこの迫力。
いるだけで可笑しく。
いるだけでほっこり。
いるだけで成功。
ステキフル。

家族が家族として機能すること。
手が自由に。
足が自由に。
あっちへ行きたい、動きたくない。
それでは家族が家族として歩んではいけません。
そこで胆力です。
おへそに力が込められた。
背筋伸び。
前を向き。
腕を振り。
足が進む。
ばーちゃんがへそ。
へそは中心。
世界は中心を軸に動いていく。
家族は中心を支え、へそから力をもらって歩んでいく。
それでいいし。
それがいい。

このジャケットの立ち位置がベスト。

せんせーがカワユイ２万回。
ギョウザが食べたい８万パワー。
ウォシュレット最高１００万連打。

にーちゃんも弟も妹もステキフル。
見た目も中身もステキフル。

文化や習慣の価値観って色々。
だけど・・・
左手がケツで、右手がクチっていう発想はアホアホマンパワー強すぎる。
そのダイナミックな発想が、うらやましい・・・
発想だけですよ、うらやましいのは。