クローサー

余韻の残る素敵な作品でした。
戯曲をもとに描かれているからでしょうか？
ロンドンの街、流れてくる音楽、オシャレな住まい。
大人のいる空間を演出したこれら脇役達。素敵でした。
その中で演ぜられる四角関係の恋愛劇。
赤裸々に語られる肉体関係の会話。私には不思議と耳障りなセリフではなかった。大人の恋愛には欠かせないものとどこかでわりきっている自分がいた。それよりも時々出てくる言葉遊びともとれる気の利いた言い回し。言葉の響きが楽しめました。
愛しい人がいるにもかかわらず、別の相手を求めてしまう複雑な心裏。愛の終わりを迎えた後の男と女の違い。これは観ていてある意味納得。
また、「レオン」の少女役、マチルダから大人の女性に成長したナタリー・ポートマン。ストリッパー役の彼女に目が釘付けに。この作品の出演者4人の中で一番輝いていたからなのか。それとも私の好奇心からなのでしょうか。言葉を濁しておくとしましょう。

「卒業」で三角関係の恋愛を描いたマイク・ニコルズ監督。この作品で私にまた新たな恋愛事象を教えてくれました。

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よくできてる。

簡単に「愛」を勘違いし、勝手に大騒ぎしたあげく、未熟で幼稚な男女がそれぞれ本当の愛に気付いていく劇である。

この話のアリスの人物像はおもしろい。
最初から彼女は「自分を愛する」ことしかしていない。真実の愛から逃げ続けている。それは「臆病だから」

彼女は男とを馬鹿にして自分を守っているのがわかる。
恋人のダンにも最後まで名前を偽り続け、真実をさらけだし、自分を裸にすることができない。愛に不可欠な「信頼関係」が彼女には持てない。

ダンが自分を愛し始めたと気付くと彼を愛することを拒む。
彼女は永遠に愛せる男性を求めているが、それは相手から本当の愛を求められた瞬間、自分を守るため逃げる。
ダンが自分を愛していないうちは、彼女はずっと彼女の愛（愛だと勘違いしているが本当は未熟な形）することができるのである。
そしてまた新たな獲物をさがし、繰り返すのだろう。

ストリップという職業も、彼女が男性と愛情関係を持てない要素としてポイントとなる設定である。
男性を馬鹿にすることで自分を防衛する様子がよくわかる。


あと医者の設定も魅力的だ。
社会的に認められたクリーンな存在であるため、欲求不満が強く、性が歪んでいる。
しかし、このラリーは自分の性欲にも自覚があり、自分の汚点にも正直で、真実の愛＝信頼に一番近い愛の形をとっている。
自分の欠点ともいえる性を受け入れたアンナを愛し、許すことをしている。はっきり愛と性欲の違いに自覚があるため、素直にアンナに羽目をはずしたことに許しを請う姿が素直な人物像を伺える。

最初にアリスに出会ったときに、アリスの素直でない未熟な性格を見抜いていたところをさりげなく描いているところもおもしろい。

アンナはずばり、人を見る目が無い。
結局は自分が可愛く、自分を愛する人に自分を鏡にしている。
人を見る目がない人物に、写真家といった職業をあてたのも監督のセンスを感じる。
ダンが自分を愛していないことに気付いたシーンのジュリアの戸惑った表情が巧い。

完璧主義＝ダン
理想的な美しい顔を持つアリス、職業柄も姿も完璧なアンナ、
彼が求めたのは完璧さだ。
「愛し愛されている」と勘違いしている自分に酔いしれる幼稚な男であることが、ラリーの前で子供のように泣くすがたにも象徴されている。マザコンぶりからも示唆されている。

アンナへの愛情もどこか「社会的に成功者であるラリー」への腹いせがつよく描かれており、強い劣等感をもった人物像が伺える。
アンナとの関係に障害がなくなり、晴れて幸せになれると思っていた矢先に、手のひらを返したように彼女との関係を解消しようとしたところも実は彼女を奪うことが目的なのでは、と思わせる。

ラリーに許すこと（完璧を求めない）ことを示唆され、最終的に「完璧でない、たとえ欠点があったとしても許したい気持ち」＝「愛」に気付くが信頼関係が成立していないので破談になる。
ダンが女性を翻弄しているように見えるが実は二人の女性に振り回されている男性のみじめな姿が描かれている。

4人の人物像を魅力的に描いており、細かい部分にもそれぞれの未来や過去の設定を暗示させる要素があり、センスがある。
自己愛から、勝手に大騒ぎしている未熟な男女のダタバタ恋愛劇をキレイに描いた作品である。

設定がストリッパー、作家、写真家、医者。
（アメリカ上流階級が好きそうなこの職業設定…）
会話がおしゃれ？
パトリック・マーバー原作の戯曲の映画化で、自らも脚本に参加。
（Ｇグローブ脚本賞、英国アカ脚色賞ノミネート）
でも脚本がわかりにくい。時間経過も説明不足で、イキナリなんで？って感じ。
↓セリフも（英語わからない自分は）この２つだけで良い。
ダン（ジュード・ロウ）のセリフ
「真実を言わなければ人間はただの動物」
アリス（ナタリー・ポートマン）のセリフ
「嘘をつきたくないし、真実を語ることもできない。…（つづきは改行後のネタバレ）

実力派俳優４人のキャラクターのせめぎあい。豪華キャストの演技は楽しめました。
クライヴ・オーウェンとナタリー・ポートマンはＧグローブ脚本賞、英国アカで、助演受賞。
ジュード・ロウが好きな人は、嫌なヤツの情けない演技が見事なので観ない方が…。
ジュリア・ロバーツも文句無し。
特に、ナタリー・ポートマンは最高。でも、ストリッパーの難役に挑戦したヌード女優魂をカットされたそうです。

賞レースの評価はまあまあなので、繊細な大人の恋愛模様が好きな人には楽しめる映画みたいです。










＜ネタバレ＞
アリスのセリフのつづき。
…だからあなたと別れるしかない」

ラリー（クライヴ・オーウェン）とアリスは寝てませんよ。
ダンにあきれ果てたアリスがダンと別れるためについた「嘘」です。
（と、私は解釈）

「クローサー」は、近いという意味の close の比較級の「もっと近くへ」
野球の「クローサー」は、試合を締めくくる抑えの切り札「閉じる人」

愛を深める嘘。愛を閉じる真実。

それでいて、こなまづるい２人は、仲良くベットインのラスト。
モウ、どーでもいいって感じの後味の悪い映画でした。

以上、ぐちゃぐちゃの男女関係映画が苦手な私の感想でした。

これだけ魅力的な俳優さんたちなのに、なぜかみんな素敵に見えなかった。
どれだけきれいな人でも、吐き出す言葉が表情をつくることがわかる映画でした。

登場人物の誰かに感情移入することで物語に入り込んで作品を味わうのが好き
なのですが、４人のうち誰にも感情移入することができず、さいごまで４人を
冷めた目で見ている自分がいました。

なぜだろう？　考えてみました。
心から愛する人には言ってはいけないひどい言葉、知らせてはいけない真実がある、
と思います。どうしてもそこが引っかかってしまった。

恋愛ドラマだから恋の駆け引きや嘘があっていい、不倫や不実があってもいい。
コミカルで楽しいもの、あるいは深みやせつなさが切々と伝わってくるものなら。
でも、ここまであからさまに、しかもかなりダーティな言葉で相手を追いつめたり
問いつめる・・・その愛情表現・感情表現についていけませんでした。

心のなかで思うのと実際に言葉にして相手にぶつけるのとでは、天と地ほどの差が
あります。言葉は人の心を殺してしまうほどに傷つける凶器でもあるから。
一つ一つの言葉を大切にしない感情の垂れ流しのようなぶつけあいには、
引くものがありました。‘台詞のやりとりの妙’が魅力だとしても。
この作品が描きたかったと言われている‘大人の恋愛の本質’（？）が
わからなくてもわたしはいいや。

一番正直に見えたアリスのどんでん返しにも、スカッとした爽快感はなく、
「なんだ、そういうことだったの」と白々とした気持ちでエンドロールを
見送っていました。

やっぱりわたしは、相手のことを思いやる優しい言葉がちりばめられた映画を
みたい。
　

ちょっと、そんな感じを受けてしまった。英国で大ヒットした戯曲。『オペラ座の怪人』も舞台の映画化で話題になりましたが、映像にすると、かなり雰囲気も違ってくるのでしょうね〜・・・・
まるでカレイドスコープ越しに覗いた様な、二組の男女の織り成す恋模様を見せ付けられました。途中、？？？と幾度感じたことでしょう。やっぱり、おばさまには難しいのかな〜？と。観客のそんな混乱を、まるであざ笑っているかのごとく、いや、楽しんでいるのかも・・・と。そんな恋愛模様により接近（クローサー）していくのが、この作品の醍醐味なのでしょうか？
まるで、別の人生を生きた錯覚を味わう、映画を見る楽しみの一つでもありますが、今回は、二つの人生を味わった様で・・・・
共感する、しないは、これまた、人それぞれでしょうね。