ナイロビの蜂

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いい映画だった。でも、どこが？と問われると返答に困る。これがこの映画に対する私の率直な感想だ。

夫の妻に対する深い愛情を強く感じる事も無ければ、製薬会社と英国政府の癒着を絡ませた後進国の搾取をめぐるサスペンスの要素もあまり響いては来ない。これは登場人物の相関図が入り組んでいてこの紳士は情報局の人なのか、どこに所属するお方なのか、私が映画の終わりまで考えさせられていたからではあるまい。

物語はとにかく静かに進んでいく。原題の「THE CONSTANT GARDENER」の通り、献身的でガーデニング好きな英国人、主人公のジャスティンをそのまま表現しているようだ。赴任先のアフリカの現状を直視せず、外交官用の邸宅にこもり、庭弄りばかりしている。保守的で典型的なお役人と言った人物だ。保守的な人間が身の危険を冒してまでも妻の死の真相を探る欲求にかられ、行動を起こし、真相究明の旅に出る。だが、この行動を阻み、脳裏に焼き尽くされるのはアフリカの自然と大地であり、決してサスペンス調の筋書きではない。魂の解放のごとくアフリカの大自然とアフリカの人々が観る者を魅了してしまう。大自然の中で繰り広げられる出来事はただひたすら私の中では静寂に包まれた。さらに、ジャスティンが亡くなった妻、テッサの生前の姿を回想するシーンが度々挿入されるのだが、（回想シーンに登場する人物は優しく語り掛けるように登場すると相場が決まってはいるが）そこに登場する彼女が詩的で実に美しい。

平凡で善良な英国人ジャスティンの最期は私の中では、それ以上でもそれ以下になる事でもなく、静かで献身的な園芸家のままだ。その一線を越えないところにこの映画の素晴らしさがあるように思う。詩的な映像、静かな音楽、洗練されてはいるが空気のように自然に存在する登場人物。緻密に計算されて製作されてはいるとは思うが、その緻密な計算をアフリカの大地は覆い隠している。

女はこういった、叙情詩的な作品には弱いものだ。★４つ半。

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本作、巨万の富を巡る大企業の悪を暴くエンタメサスペンスか？
はたまたラブストーリー？と思っていたら、
確かにその要素もしっかり絡んでいましたが、
混沌とするアフリカを舞台に様々な人間を深く描いている
ヒューマンドラマです。
素晴らしいと思いました。是非観てください。

妻は深く夫を愛し、理解していた。
夫も妻を愛し、しかし妻を失うまで全ての現実から逃避していました。

几帳面で優しい、植物を愛する紳士は
活動的で掴みどころのない妻に戸惑い
疑いの心を持ちながらも忍耐強く、
激しさを待たない彼は内面に秘めてしまいます。

冒頭で他人の講演を代理でしますが、つまらないこと承知できっちりこなす彼の職務意識や
鉢植えの乾きには敏感なのに　人間の飢えには鈍感であったりする神経の欠落をみせ
多くの人間の社会での生きかた、責任の所在を感じさせます。

どんなに善良で正直で悪を憎む人間でも、目を閉じているならば
目の前に突きつけられる現実を見ることは出来ない。

何故僕に相談してくれなかったのか、、、と嘆きますが
彼女は誰よりも夫の閉じた目やふさいだ耳、感じまいとする心を知っていたし、
彼の美しい理想を守ってあげたかったのです。
そしてそれが彼女自身へのすくいでもありました。


無意識のうちにそこから心を離そうとする人間と
必ずそこに飛び込んでいく人間がいる。
しかし妻の死後、彼は妻と同じものを観、同じものを感じるようになります。

彼の持つ内向的な面持ち、物静かな気品、高いインテリジェンスな雰囲気を存分にかもし出し、とても適役だったと思います。
妻テッサの強さと脆弱さ、危なっかしさ。そして真の優しさをレイチェルワイズがとても良く演じていました。

年末年始からシリアスなものが続き満足度の高いDVD生活送っています。
これもレヴュー広場を覗くようになってからです。皆様どうもありがとう。

ジョン・ルカレってまだ小説書いてるんだ　っていつの作品なのかなあ　７０年代スパイ映画の雰囲気がわかる人わかんない人で多少印象が違ってくるだろうか　シドニー・Ｊ・フューリーが昔撮った杵柄でわっしにやらしてくださいよと　言いそうなジャンル混合のなんか妙な映画　「シティオブゴッド」のセンスにも感じたのだがやはりこのメイトレスって映画作家はこういった　商業娯楽映画をやりたいのじゃないだろうか　ストーリーからして原作もつまらなそうなんだけど　変わらない外交官の無力をラブストーリーでごまかしてるような・・・　原題にも関連してんだから庭いじりをもっと描写してくださいよ

私はこの映画大好き。傑作だと思います。登場人物たちが、いかにも私の周りにも（昔ですが）いたタイプ。ああ、分かるなあ、という気がします。絶望の中、砂漠を彷徨して愛を見つける、というのもロマンチックでいいです。で、砂漠の描き方がナイスでした。同じ砂漠でも映画によってずいぶん違って見えるのが面白いです。例えば、「シェルタリング・スカイ」の砂漠は、きれい、きれいでロマンチックな砂漠。ブルジョワ的な砂漠ともいえます。「イングリッシュ・ペイシェント」の砂漠は官能的な女の体。冒頭のあの砂漠の凸凹を女の体みたいにとらえた場面だけで、この映画はただものでないと思いました。「アラビアのロレンス」は清潔で男性的、ホモっぽい砂漠。ピーター・オトゥールの真っ青な目の色とともに、非常な清潔さがバカな青年の理想が燃え立つ感じとその底に潜むホモっぽいエロ（征服欲）を表現していて、この映画もたんなる歴史大作ではありません。そして「ナイロビの蜂」はもっと生々しくザラザラした、リアルな砂漠。「シェルタリング・スカイ」や「ロレンス」みたいに遠くから見る視線じゃなく、その中に住み、その中をさまよっているような砂漠でした。他の映画であんなに広々と開放感があったのに、この映画では閉塞感さえ感じる砂漠の映像。やっぱりこの映画も凄いなあと思いました。レイチェル・ワイズの役柄は近くにいたら迷惑するような昔風の運動家なのですが、そのキャラをあの生々しい裸体の映像がちゃんとフォローしております。あの性格にあの体が砂漠で迫ってくるからガーデニングやってるヘナチョコ男が圧倒されてしまうのは分かりますね。アフリカの住民たちの描写も、あの撮り方だからこそ、情緒的になってません。それに、変に図式的な世界観を押しつける啓蒙映画にせずにちゃんとエンタティンメントにしているところも偉いと思いました。というわけで、かなり私的には評価の高い映画です。

裕福な白人が楽しむゴルフ場の境を越えた側に赤茶けたトタン屋根のひしめくスラム街。その上空の横切る航空機のなんと不釣合いな事か…。
貧困、疫病、政治不安、アフリカの抱える問題とそれを傘に利権を手にする企業、国家の謀略。
そんな現状が実際にあるのか否か？普段、影響のない世界に身を置く平和ボケの私達こそ「THE CONSTANT GARDENER」なのでしょう。

ドラマティックな盛り上げもなく、淡々とした回想シーン。
敵味方分かれるでもなく、銃撃戦の様なアクションもない。
登場人物が多く、話も複雑で分かりづらい。
しかしこの作品、その様な娯楽作品に仕上げていないところに拘りと誠実さを感じます。
ブラジル人監督の作った、骨太のイギリス映画です。
長いけど、２回観るとかなり理解が深まります。
★★★★