春の雪

テレビで大々的に前宣伝していた時点で、この作品にこの主役二人の起用ってあり？と疑問でしたが、やはり思っていたとおり、最後まで居心地の悪さを感ずるにはおけませんでした。
どうみても二人は良家の子女には見えない。
両人には悪いのですが、メイドカフェや執事カフェにいそうな俄仕立てのパフォーマンスをみているようで失笑ものでした。

美しい風景や立派なお屋敷、豪華な衣装、それぞれは実に素敵なものでしたが、何故か安っぽく、それらしく作っているだけの空々しさを感じるのです。
最近日本映画の名作を観続けているせいか、お金をかけりゃあいいってもんじゃない。今人気の、この人とこの人を出しとこう、なんて安易な配役はしないでほしい。
行定監督のもとには現在潤沢に資金が集まるのでしょう。しかしお金を出せば口も出すというもので、大きなスポンサーが付けばこのような結果になるのは目に見えてます。
監督には、今一度立ち止まって作品作りの原点に戻ってほしいものです。

『花様年華』のリー・ピンビンの映像はまさにすばらしいの一言。
日本の美を映し出すとこんななんだな〜〜と感心しました。が、パープルさんと同じく、中盤は見ていて疲れてしまいました。何とも、盛り上がりに欠けた作品に。美しい映像だけでは、１５１分は持ちません。脇のベテラン女優さん達の存在感には感心しつつ、残念ながら、若い二人の演技には物足りなさが・・・もどかしさ、狂おしさ、病むほどまでの恋焦がれる情念が伝わってきませんでした。森光監督で見てみたかったな〜と、思ってしまった。
三島由紀夫の原作、この機会に読み直すのもいいものでしょう。

最初、試写会で観て、誰にも感情移入できなくて2時間30分が辛かった。
今度は深く観れることを期待して、行定監督のインタビュー等の情報を仕入れてからの再観。
でも、やはり辛かった。（涙）
原作がそうだから仕方がないとわかっていても、侯爵家の令息・松枝清顕（妻夫木聡）に、やはりイライラした。自分一人じゃ何一つ行動できない。おぼっちゃま権力で周りの人間に頼るだけ。
さっさと駆け落ちして、親の金で身につけた語学力で、通訳でも翻訳でもして自立して幸せな家庭築けばいいじゃん。と何度思ったことか…。

テーマは２つあったと思う。
1つは、大正時代の「純愛」。ウリの「儚くも美しい悲恋映画」としては感情移入が難しい作品。
この時代、相手に「好き」なんて告白は、とても出来なかった時代。
侯爵家なんていない今の時代、原作通りだと、この清顕は、障壁を乗り切る努力もなくいじけるだけ、甘ったれのひねくれ者で、誰も感情移入できないキャラのままです。『ＧＯ』や『ロックンロールミシン』で見せた若者たちへの細やかな視線や、『セカチュー』で原作に大きく加筆を加えたように、「現代」に通じる設定やキャラの個性を際だたせるエピソードを加えるだけの技量が行定監督にはあったと思うのですが…。

もう一つのテーマ、「蝶」に象徴される輪廻転生。
「夢日記」に書きつづられた幻想から、蝶の戯れ「桜の花咲く滝の下で会おう」のラストは、とても素晴らしかった。伝わりました。

原作ありき作品に関する質問に、行定監督、自ら答えています。
「“『春の雪』について立派な論文を書きましたね”と言われるほど三島研究をしている文学者の方たちにすごく評価が高かった」と…。
純文学の映画化としては「器用さ」が成功したかもしれない。
ドル箱監督だから広告も凄くて客も入ったかもしれない。
でも、大切にしなくてはならない評価を下す人が違うよ。

行定勲が自分に厳しくしていた時代。もう映画を辞めようかと思っていた辛い時代。
助監督時代の東放学園の先輩の言葉を思い出してください。
「俺がおまえをダメだと一度だって評価したか？お前が辞めるっていうのは、自分で自分を評価しているだけだろ？評価というのは他人がするんだ。モノを作るということは、批判され続けることなんだ。」
（↑この言葉、モノを作る私の支えにもなってますよ）

観客を置き去りにして、自分で評価する世界に戻っていませんか？
（方向間違うとお金かけれる分、やっかいですよ）

行定監督は「“○○○監督の作品”と言われる映画はつくりたくない。」とも言う。すなわち「タイトルで評価される作品」。
だから作風も「器用」に次々変わる。
この作品は、行定監督の天才的な器用貧乏を証明する作品だったと思う。

だから、良い所も、もちろんたくさんあった。
『雨月物語』を連想させるような、日本家屋を利用したカメラワーク。
四季も含め、大正の日本美をこれほど美しく撮れた映画は今までにないと思う。
次回作でもリー・ピンビンのようにアジア作家とのコラボは続けて欲しい。
良い所は次回作にもどんどん取り入れて（伸ばして）も、作風のない作家の変化、成長の停滞の心配は、行定監督にはないと思う。


あと、蛇足。この映画のエンディングテーマ。
宇多田ヒカル『Be My Last』。
「かぁさんどうして…あぁぁぁ♪」（母さんって何？？？）
余韻ぶち壊す曲とのタイアップはいいかげんやめてほしい。
（映画と関係なく聴くと良い曲なんだけど…）

やっぱり竹内結子の演技が鼻に付くのです。。。

私は原作、「春の雪」が大好きなんですが、この映画はどうだろう？
映像も、絵もキレイなんですけどね。

着物姿の竹内結子は、首が短いのか、なんか変。
妻夫木くんも微妙。

なんかみんなわがままでつかれる。
唯一、高岡蒼佑演じる、本多はまともだった感じ。

若い二人以外の脇はさすがに素晴らしいです。
特に大楠道代と若尾文子はよかったです。

予告編のほうが断然よい。

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最初から聡子への愛をごまかさなければこんなことになんなかっただろうにー
清様の自業自得でしょー

と思ってしまう。

清様の愛の葛藤をもっと描かれていれば、清様に感情移入して同情することもできただろうに
この悲恋に涙を流せただろうに

映像の美しさ・聡子の美しさは申し分ないです
当時の華族の華やかさも伝わります

ゆえに清様の人物描写だけが残念です。