バッド・エデュケーション

『オール・アバウト・マイ・マザー』『トーク・トゥー・ハー』は私にとっては、とても好きな、心揺さぶられた作品でありました。ま、好みもありますが・・・今回は、ゲイである監督の自伝的作品と聞いていましたので、一応は心して、いや、かなりな覚悟を決めて臨みました。（そんなまでして見なくても・・・とも思いつつ）
ゲイの世界の情愛は、男女の愛より、重くて、深くて、しんどいんだな〜〜と、感じましたね。見ていて、しばし目を背けてしまうシーンが、多々ございました。あまりお勧めとはいきませんが。
しかし、ボーイソプラノの歌声や、ドラッグクィーンのステージなど、しばし聞きほれてしまうほど。また、ガルシア君の女装シーンは、かなり驚きと、目の保養になりました。なぜか、J・ロバーツの顔とダブってしまいましたが・・・・ファ〜ンのお方達に、しかられてしまうかな？？
後半の以外な展開に、謎解きミステリー的な驚きをもたらしてくれた、監督の手腕は、さすが！でありました。
しかし、二度は見れませんね。

アルモドバル監督の自伝的映画。エンリケという映画監督が自身の投影なんでしょう。どこまでが事実で、どこからが創作なのかはわかりませんが・・・。
エンリケとイグナシオの少年時代の回想、劇中劇となっているエンリケの映画、そして大人になったエンリケとイグナシオ（と名乗る男）の３つの話が、ひとつにまとまっていくところはさすがアルモドバル監督、ひきつけられますが、内容があまりにスキャンダラスなので、万人向けとはいえないでしょうね。

ガエル・ガルシア・ベルナールファンの私としては、いろんなガエルくんがみられて嬉しい。特にドラッグクイーン姿のガエルくんは、とても色っぽくて素敵。でも、プールでのブリーフ姿のところはちょっと・・・。(背が低くて、あまりスタイルがよくないところが目立ってしまっている。）さらにあんまり見たくない姿もあり、ちょっと複雑な心境でございました。

それにしても、聖職者の少年への性的虐待って、よくある話なんでしょうか？ちょっと前にアメリカでもこの手の話がゾロゾロでてきていたけど。こういう閉鎖的な環境にいると、そんなふうになってしまうのか、それとも元々ホモセクシャルの人が聖職者になることが多いのか？

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なかなか面白かったです。
ミステリアスな仕立てで、現在と過去と映画の世界が交錯して
最後までひきつけられて見ることができました。
最後のオチがちょっとショボ目だったのは否めませんが
それまでの過程を楽しめたので、良かったです。

それにしても、女装しているときのガエル君の色っぽさ・・・
これには驚きました。
梅沢富男の流し目も真っ青な、目つきがセクシーそのもの。

エンリケとイグナシオの少年時代を演じた子役が
成長した二人の雰囲気とすごく合っていたのも良かったです。
そして、この少年イグナシオのボーイソプラノは
人を酔わす力を持っていますね。
神父の少年への性的虐待は許されるものではないけれど
気持ちがわからなくもないような・・・

まだアルモドバル監督作品は「ボルベール」と今作しか見ていませんが
他の作品も見てみたくなる、興味深い作品でした。

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見初めは結構期待感がありました。シナリオの中で演じるガエルガルシアには驚かされましたし、現実との区別も気をつけていかなくてはならないので結構面白いかもしれない。と思ったのですが、早い段階でイグナシオと名乗る若い役者の正体が明かされてしまい、ミステリーの目的は彼が何故あらわれ、どうしようとしているのかを解くことだけになります。が、その彼の目的にインパクトが無いのです。

彼は何のために映画監督に近づき出演や役柄に固執したのか？神父への接触は復讐心、金、犯罪への利用、、、これらの要素がどれも中途半端に思えて説得力がないように思いました。
それは私に彼の本当の性的思考に確信が持てなかったから。そこが一番肝心だと思うのですが、あやふやに見えました。（ラストの字幕で実在者の将来には触れており、ヒントにはなりますが。）また映画内の映画に現れる人物と比べ実在のイグナシオや神父がとても俗っぽくて感情移入を妨げました。納得感が持てない要因がかさなり、結局はなりゆきの行動の上になりゆきの結果があったという、たいして映画的でない話なのかとさえ思ってしまいます。

ガエルクンの女装。神父の性的虐待。児童の同性愛の芽生え。点としては強いものがあるのですが、その繋がりと彼らの心理が上手く読み取れなくて残念でした。
表紙からも分かるように明るい色使いや反射的な光にこだわりが感じられますが、個人的にはゲイバーの照明や安キッチンのような印象であまり好きではありませんでした。

究極の愛の探究。という言葉をこの作品に贈ってみましょうか。

全体的な仕上がりはアルモドバルらしく、切なさと淫らさが入り混じった不思議な余韻を醸し出しています。そういう意味では頭で考えるよりも、五感で味わいたい部類の作品ですね。

作品の構造、見出されるテーマ。これは共に深い。全体をミステリー仕立てにしながらも幾重にも重なる特異の憎愛劇が観る者を魅了します。映画監督、聖職者、ドラッグクイーン。彼らが背負うものはただ１つ。「背徳」。この言葉が全体を包み込んでいるのでやりきれません。そして、背徳を「美」としてしまうアルモドバルはやはり鬼才なのでしょう。

そして、俳優の魅力、色彩豊かな映像、情緒ある音楽、も、この作品に花を添えています。特に音楽は朝露に濡れた花びらのごとく神秘的な世界へ我々を導いてくれます。
ガエル・ガルシア・ベルナルもアルモドバルの期待に応えたいい演技をしています。母想いの息子、兄になりすます弟、ドラッグクイーン、と、場面ごと変わる表情は是非ご覧になっていただきたいですね。女装は軽く流していただいて結構ですが・・・（笑）。

他のレビュアーさんの通り、万人受けは難しい作品だとは思いますが、この不思議な余韻は多くの方に味わっていただきたいと思います。私も視点を変えてもう1度観たいと思っています。