受取人不明

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アメリカの軍用機の描写が繰り返されているが、今も朝鮮戦争の影響下にあることを暗示させている。

戦争で片足を負傷した父。戦死したと思われていて実は北に亡命していた父。アメリカに帰国したまま音信不通になってしまった父。主人公三人の家庭は朝鮮戦争によって傷つき、そのことが息子、娘に暗い情念を抱かせている。

そうした元凶をアメリカにあるとして非難するのであれば、少女ウノクに近付くアメリカ兵ジェームズをもっと悪く描いていただろう。米軍の中で異端であり続ける彼も戦争によって傷ついているアメリカ社会の象徴である。

　どこにでもある、身近な問題を映像化した作品です。娼婦くずれで精神を病んでいる女性と、米兵の血が入っているということで差別されるその息子、そして幼少の頃に兄の軽率な行動で左目にハンディキャップを持つことになった少女、その少女に性的関心を基盤にした淡い想いを持つ内気な青年、長い間少女を苦しめてきた障害を米軍病院で取り除く便宜を図ることと引き換えに継続的な性的関係を要求する米兵など、特定の誰かが主人公ということではなく、複数の登場人物がそれぞれ個々に作用し合い、そして様々な関係を好む好まざるを問わずに築いていかなければならなくなる、しかもそれはとても心が痛くなるような、出来れば避けて通りたいと誰でもが思ってしまう、そんなエピソードが詰め込まれています。
　貧しいが故に体を売り、そのために受ける差別や、「混血児」や「雑種」として、米兵（特に黒人）との間に生まれたというだけで、本人には何も責任がないことを理由に受ける差別は現在の日本でも非常に「健在」です。
　履歴書には写真を貼らせ、また面接試問では家族構成や親の職業を訊く、仕事には殆ど支障のない身体的障害であっても、理由をこじつけて不採用にする、そうした犯罪行為ともいうべき悪事の数々を多くの企業が行っているにもかかわらず、何の処罰も加えられないで済んでしまう、腐りきった社会の中で自分が今暮らしているということをまた新たに認識させられました。
　決して昔の話ではありません。また、対岸の火事というわけでもありません。沖縄はわかりませんが、少なくとも横須賀には同じようなケースは数え切れないほどあります。また、おそらく米軍が駐留しているほぼすべての場所で、同じような問題は生じているはずです。確かなのは、この作品で描かれていることは、韓国の一部の田舎で起こっているのではなく、あらゆる場所で起こっているのだということだけでしょう。
　この作品は、問題提起をしているという風には全く感じさせません。身近なところに渦巻いている醜悪な存在が、自己防衛が出来ない限界まで充満した時には、取り返しのつかない悲劇しか待っていないという事実を淡々と語っているに過ぎません。誰でもが、ちょっとしたきっかけで、限界を超えてしまう、現実はむしろ映画の中のエピソードよりもきついような気がします。

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ギドク作品の「悪い男」「悪い女」「魚と寝る女」「弓」、そしてこの「受取人不明」と観てきた中で、衝撃力と完成度の高さではこの作品が随一だと思われる。
観ていて久しぶりに胃が縮まるような戦慄を覚えた。
この感覚はミヒャエル・ハネケの「ベニーズ・ビデオ」以来かも。
完璧に絶望的な、これっぽっちも救いのない物語で、3人のメインの若者たちが見事なまでに自滅していくのだが、その描き方が凄い。
3人とも不幸な境遇にあってじゅくじゅくと膿をもった傷を抱えている上に、さらにその膿をナイフでえぐり出してこれでもかというくらい悪化させるみたいな。
キム・ギドクが表現すると「ココロの傷＝カラダの傷」なのだということに今回やっと気がついた。
登場人物が心理的な傷を負うとそこには血が流れるのだ。
だから観てると痛い。
見た目も痛いが心も痛い。
まさにダブルパンチの鬼才。
こりゃ彼の作品がヒットしないわけだよ（笑）。

とりあえず、韓国で犬鍋を食べた人たちにこの映画を見せてあげたい。
犬鍋になるワンコたちがどうゆうふうに店までやってくるかがこの作品を見るとよく分るから。
私的にはこの作品に描かれている人が死ぬシーンより犬への暴力シーンの方がよほど衝撃的であった。
うぅ、夢にワンコがでてきそう。。。

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整理がつかないが、見るべき映画であることは間違いない。

人間の本源なんて、綺麗ごとではない。
「生きぬく」ってのは、まさにチョ・ジェヒョン演ずる犬売りみたい。

大地に突き刺さった混血児の死体、燃え上がるバス。風に吹かれる手紙。

なんとも深い映画です。

何ヶ月かして、もう一度。そして思い出した頃また。
送り返されてくる手紙と同じように、繰り返し見たい一本です。

別に動物愛護なんとかとか、犬がなんとかそんなんどうでもいいと思ってしまうのは私だけでしょうか。犬がかわいいそうと思うならベジタリアンになればいいんですよ。

そうやってアメリカじゃー結構な人が野菜人です。
僕もそうです笑。

所謂、社会派映画と言われるジャンルの映画は腐るほどありますが、キムギドクの中でも社会派と言われているこの作品。

たぶん監督もものすごいエネルギーを使ったんだろうなぁって見てるこっちも力んでしまいます。こういう作品はひとりの監督、人生で一本撮ったら満足してしまうようなある意味怖い作品です。

僕は好きです。

やっぱり思想も攻撃的じゃないと人生つまんない。